Asia Leaders Summit 2015: 楽天、gumi、セガ、ヤフーが考える、東南アジアのスタートアップ投資戦略

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これは先週、シンガポールで開催された、Asia Leaders Summit 2015 の取材の一部だ。

イベント中3つのセッションについては、会場からリアルタイムでレポートしたが、残る3つのセッションについては、執筆が間に合わなかった。週が変わったが(そして、月も変わってしまったが)イベントの振り返りを兼ねて、まとめてみたい。

まず、日本の Executive Talk と題したセッションからだ。このセッションでは、日本のインターネット大企業のエグゼクティブたちが、東南アジアにおける投資戦略や地元スタートアップとの提携の可能性などについて議論した。このセッションに登壇したのは、

  • ヤフー 執行役員 ショッピングカンパニー長 小澤隆生氏
  • セガ 代表取締役副社長 里見治紀氏
  • gumi 代表取締役 國光宏尚氏
  • 楽天ベンチャーズ マネージング・パートナー Saemin Ahn(안세민)氏

モデレータは、インキュベイトファンド代表パートナーの本間真彦氏が務めた。

(以下、発言の内容は、会場で提供された同時通訳とは表現が異なる場合があります。)

セッションの冒頭、ヤフーの小澤氏はスタートアップに投資する資金として50億ドルを預かる立場にあり、そのお金をカンファレンスに集まった人たちに投資したい、と述べ、会場を沸かせた。また、gumi の國光氏は前回の Asia Leaders Summit で IPO と結婚について語っていたが、その発言通り IPO と結婚を果たし、自身について「大きなビジョンを語って、それを実現していくタイプの人物」と分析してみせた。

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左から:ヤフー 小澤隆生氏、gumi 國光宏尚氏

楽天、Gumi、セガ、ヤフーの投資戦略

成功の定義は、企業によっても人によっても異なる。楽天ベンチャーズの Saemin Ahn が強調したのは、楽天が投資したり買収したりするときにこだわるのは、相手のスタートアップのキャッシュアウト(売上が上げられているかどうか)ということだった。

売上の大小にかかわらず、時価総額などの市場評価に重きを置く一部ファンドがある中で、キャッシュアウトにフォーカスするのは、実業を持つ会社ならではの視点と言えるだろう。先ごろ投資したアドテクスタートアップ PocketMath などは非常にうまく言っていて、毎月数百万ドル以上を売り上げているとのこと。

また、楽天ベンチャーズとしては、テクノロジー系のアーリーステージのスタートアップに対しては、楽天のビジネスとリンクするかどうかにかかわらず投資するケースはあるものの、楽天との協業の可能性を模索する場合は、何よりも投資先のスタートアップが楽天と協業したいと考えているかどうかを重視している、と述べた。

一方、gumi は2,500万ドルのファンドを立ち上げている。ゲームは市場が限られたものではないが、市場によって成長戦略は異なる。ゲーム以外の分野についても投資を進める背景について、國光氏は次のように考察を語った。

新しい技術は、新しいエンターテイメントを作り、新しいメディアを作る。20世紀初頭、映画業界の人は、テレビ業界の誕生によってつぶされると恐れた。テレビが出る前は、映画がコンテンツの王様だったからだ。

テレビ会社を映画をテレビに持ち込んだ上、ニュース、スポーツなど映画にはできないコンテンツも作り出した。その結果として、テレビ業界が映画業界に買った。

インターネットの世界では、キュレーション・メディアなどが立ち上がり始めた。コンテンツ会社やテレビ会社というのは、基本的にはインターネット・メディアが嫌い。広告収入モデルが崩れるからだ。

gumi は今のところモバイルゲームだけをやっていて、1つのゲームセッションは3分間とかで終わる、従来のコンソールゲームとは異なる新しい世界。しかし、SmartNews、Gunosy、(この日の午前中ピッチした)Iemo などにも見られるように、メディアビジネスやゲームビジネスは変化していくだろう。

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左から:gumi 國光宏尚氏、楽天ベンチャーズ Saemin Ahn 氏

セガはこれまでに多くのコンソール・ゲームを手がけてきたが、モバイルゲームに事業特化する会社としてセガネットワークスを設立した。里見氏はこれからのモバイルゲーム業界について、興味深い展望を共有してくれた。

一言で言うと、セガネットワークスは、スマートデバイスにフォーカスしている。スマートデバイスといっても、それぞれ UI が違うので、タブレットやスマートフォンなど、機種にあわせて最適化し開発を進めているのが現状だ。

しかし、将来は、ゲームの処理はクラウド側でやって、スマートデバイス側でやる処理としては、スクリーン表示の処理だけになるだろう。デバイス間のUIの差分をクラウドが吸収して最適化できるようになるだろう。

テンポのよいレスポンスが求められるモバイルゲームにおいて、現在はネイティブアプリで開発されるのが主流であるが、クラウドで実現できることが増えれば、ゲームデベロッパのコスト構造も変化してくるだろう。場合によっては、HTML5 をうまく活用した BoosterMedia のようなデベロッパにも勝運が向くかもしれない(ちなみに、BoosterMedia はヤフーと協業している)。

ビズシークやクロコスなど、日本のインターネット業界で、先駆的に自身のビジネスを有名インターネット企業に売却してきた小澤氏は、ヤフーが投資で目指す方向について、次のように語った。

(どういったビジネスに投資するかと聞かれて)Eコマースもそうだし、アドテクもそうだし、エンターテイメントも………うーん、モバイルサービス全般だね。(会場爆笑)

とにかく50億ドルあるんだ。皆さんと共に、次の新しいビジネスをやりたいんだ。(中略)逆に、やらないと決めている分野も特にない。

小澤氏がモバイルに言及したことに気が留まったのか、國光氏がヤフーのこれまでの動向についても分析をしてみせた。

(C2C の分野では)ヤフーはオークション(ヤフオク)が最強だった。しかし、モバイル戦略が無かったので、メルカリのようなサービスがすごく成長した。モバイルにシフトするのに、時間がかかり過ぎたと思う。

親会社にソフトバンクという最大手モバイルキャリアを抱えながら、モバイルシフトが遅れたことについてはヤフー社内においても、何度となく反省の機会が持たれたのだろう。小澤氏が〝投資の対象は、モバイル全般〟と言い放つ背景には、そんなリベンジに賭ける思いがあるのかもしれない。

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左から:セガ 里見治紀氏、ヤフー小澤隆生氏

日本企業がアジアでプレゼンスを高めるには?

日本を代表するインターネット企業4社が、今後どの分野に資金を投じていくのかは、日本の起業家のみならず、東南アジアの起業家にも関心の高いテーマだ。

まずは、楽天ベンチャーズの Saemin Ahn からだ。

やはり、キャッシュアウトの可能性の高い分野、モバイルゲームのスタートアップもそうだろう。それから、ビデオも注目している。ゲームとビデオに必要とされる技術として CDN (content delivery network) が存在するが、この分野の大手である Akamai の次にくるような技術にも注目している。

セガの里見氏は、ゲームとさまざまな IoT との連携の可能性についても含みを持たせた。

バーチャルヘッドギアとか、ゲームとの組み合わせが考えられる。しかし、普及するには、少し時間がかかるだろう。音楽ライブ、フェス、ナイトクラブのコンテンツなど、さまざまなライブ・エンターテイメント・シーンも疑似体験できるようになるだろう。

一方、大手企業に限らず、あらゆるサイズの日本企業が、アジアやグローバルでプレゼンスを高めることには多くの課題がある。セガの里見氏は、代表的な理由として2つのケースを挙げた。

まず、基本的に日本国外で事業することを考えていないケース。彼らは日本語でサービスを始め、日本人向けに提供する。

そして、日本市場にはある程度の大きさがあるということ。しかし、日本の市場は縮小している。海外でリスクを取らなければならない。シンガポールなどは国内市場が小さいから、最初から国外に視点が向く。インドや中国など、市場可能性は大きい地域に。

Saemin Ahn は、楽天のような大きな企業では、アジアのような多様なエコシステムの中で企業活動をしていく上で、投資などを通じて各地のスタートアップと付き合ったり、各地の人材を雇用したりすることは極めて重要であり、國光氏は、同じような観点からも、最初からグローバルな視点を持つ東南アジアのスタートアップは、日本企業にとって、よきパートナーであると述べ、このセッションを締めくくった。

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