メールやメッセージのやりとりを効率化する「Swingmail」が母国に凱旋、UX/UIを大幅改善し日本のAppStoreに登場

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東京のスタートアップ BHI が提供する Swingmail は、モバイル端末上でのメールやメッセージのやりとりを効率化するアプリだ。2013年末に初版がリリース、2014年10月には姉妹アプリの Swingbook(連絡先帳)や Swingcal(カレンダー)と共に英語圏・北欧市場でリリースされた。

日本のスタートアップには珍しく、BHI は日本国内よりも世界でのマーケティングを優先した。スウェーデン出身の Emelie Fågelstedt をマーケティング責任者に起用、海外の業務効率化に特化したカンファレンスなどでの積極的な露出が功を奏し、AppStore でフィーチャーされたり、VentureBeat でも取り上げられたりするなど反響を呼んだ。

Swingmail は素晴らしいアプリなのだが、残念ながら日本の AppStore からは入手できなかったので、筆者はこれまでアメリカの AppStore から Swingmail をダウンロードしていたが、今日からその必要も無くなる。Swingmail が〝凱旋帰国〟するからだ。BHI は Swingmail を〝日本の〟AppStore 上でローンチした。

改めて説明すると、Swingmail は、情報オーバーロードとメッセージの散在の抑制を目的とした、機能最小限の受信メールボックスであり、メールの返信のみが可能なアプリだ。Gmail、Facebook、Twitterからのメッセージ、電話や FaceTime の呼び出しを収集するので、すべての連絡が一つの受信箱に集約される。ジャンク、スパム、喫緊の注意を必要としないメッセージを除外するので、重要な人からのメッセージのみを受信し、ユーザはそれらに集中することができる。

2013年末の初版のリリースから母国・日本での今回の改版リリースに至るまで、一年以上を要したのには理由がある。一度出したアプリを引っ込めて、あたかもステルス・スタートアップのようにユーザ・エクスペリエンス(UX)の改善に没頭していたのだ。

メールや複数のソーシャル・ネットワーク・サービスから、単にメッセージをアグリゲートするだけなら楽でした。しかし、そこから、受け取ったすべてのメッセージの内容を解析し、優先順位をつけ、ユーザにとって見やすい形で表示するまでに、以前はサーバ側の解析処理に1時間かかっていたんです。しかし、この解析処理のアルゴリズムを大幅に見直すことで、過去30日分のすべてのメッセージを、送受信完了後5分で完了できるようになりました。(BHI CEO 日昔靖裕氏)

言語解析処理が効率化できた背景には、BHI のエンジニアやデザイナーの奮闘に加え、最近、同社の技術顧問に就任した、東京大学情報理工学系研究科でコンピュータ科学を専攻する中村晃一氏の貢献が挙げられるだろう。中村氏は大学でコンパイラの研究や、機械学習を応用したプログラム解析手法を開発。自身もハードウェア・スタートアップを立ち上げ、コンピュータビジョンに関するスマートデバイスの開発を行っている。

ユーザ・インターフェイス(UI)面でも改善が進んだ。LINE や Facebook をはじめメッセンジャー全盛のこの時代、人々はメールよりも、メッセンジャーでのやりとりに慣れている。そこで、Swingmail ではメールのやりとりを、擬似的にメッセンジャーでのチャットのように見せる手法を取り入れた。これは、メッセージをもらう相手の、各種メーラーが自動的に付与してくる返信時の引用部を解析することで実現している。ウェブビューやファイル添付には未対応とのことだが、今後のアップデイトで改善が期待できるだろう。

インターフェイスの改善にもかなり力を入れました。極力、画面上にはボタンを出さないようにデザインしました。(日昔氏)

モバイルで移動中に返事をサクッと返すというコンセプトから、マーケティングで先行した欧米よりも、移動が公共交通機関中心の日本やアジアの都市部に Swingmail のターゲット・オーディエンスが多いのではないか、と筆者は考えていた。しかし、日昔氏によれば、インターフェースの優れたアプリやこの種の新しいコンセプトについては、欧米の方がユーザの反応を得やすかったという。メールのやりとりをメッセンジャーのチャットに見せるインターフェイスを実装したのには、ビジネスパーソンのみならず、メッセンジャーに慣れた若い女性をユーザに取り込みたい同社の意図が隠れている。

BHI は今後、姉妹アプリの Swingbook や Swingcal についても UX や UI を改善し、順次、日本の AppStore でも公開しくとのことだ。同社は昨年4月、大和企業投資からシリーズAラウンドで資金を調達しており、調達金額については開示していない。

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左から:日昔靖裕氏(CEO)、井上準之介氏(CMO)、Emelie Fågelstedt(広報担当)

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