
昨年9月末にクックパッドからベータ版としてリリースされた「Holiday」。2015年3月現在、ユーザーから投稿された休日お出かけプランには、全国津々浦々の観光地から、地元の人しか知らないような穴場スポットまで1万スポットが紹介されています。スポット数が増えたことを受けて3月2日には、iPhoneアプリをリリース。Holidayのプロジェクトマネージャーである友巻憲史郎さんにお話を伺いました。
プラン投稿はユーザーにとって創作活動
ウェブサイトとほぼ同様の機能を提供するHolidayのiPhoneアプリ。休日のお出かけプランを探す人は、新着順またキーワードを使って、さらには「お気に入り」をするなどして楽しむことができます。プランの投稿はまだウェブサイトのみ対応ですが、iPhoneアプリでは、自分の投稿プランについたお気に入りやコメントをスマホへのプッシュ通知で受けることができます。投稿機能の追加は来月くらいに予定しているとのこと。
以前、ベータ版リリース時に行った友巻さんのインタビューにもあるように、サービス開始当初からHolidayが注力してきたのは、プランを投稿してくれる人に向けたサービス作り。人が集まるのは、そこに素敵なプランがあるから。プランを投稿してくれる人が、より楽しくそれをできることを目指してきました。
この半年間、投稿者と向き合ってきたことで、ユーザーがなぜプランを投稿してくれるのかが少しずつ見えてきたと言います。それは、お気に入りやコメントなど自分が投稿したプランに対する反響が嬉しいこと以上に、Holidayでプランを作るという行為自体を楽しんでくれているから。もくもくと作ることを楽しむ、一種の創作活動として没頭しています。
「ということは、きっとプランを投稿する人はわりと限られたタイプの人なんだろうなと。投稿のハードルを下げてみんなに投稿を促すより、創作物をアウトプットしたいと願う人は誰なんだろうと考えるアプローチに変わりました」
日本全国の自治体などと組むワークショップ
Holidayを訪問する人、プランを見に来る人を増やしてその中の一定数を投稿者にしていくアプローチはしっくり来ない。投稿のハードルを下げることが質のいいプランを増やすことには繋がらないのでは?と考えて新たに始めたのが、ワークショップの開催です。
ワークショップとは、地域のコミュニティに根ざした団体、商店街、自治体、学生などと一緒に地元住民を巻き込んで行うもの。その地域の魅力を再発見し、プランとして投稿してもらいます。これまでに鳥取県江府町、鹿児島県鹿児島市、岡山県笠岡市、新潟県新潟市などで開催。
「地元の魅力を発信することで、人を呼び込みたいと願う人たちは沢山いるはず。でも、それが中々できていないんじゃないかと思いました。実際にワークショップを開催してみたら、自治体や参加者の皆さんもすごく喜んでくれて手応えを感じています」
その地域に一番詳しい地元の人たちを巻き込むことで、観光地ではない地元住民ならではのスポットなども加わり、全国に隠れている魅力を掘り起こすHolidayならではのプランが増えています。ワークショップの存在もあって、今では10代から70代までの幅広いユーザーがプランを投稿しています。
スポット単体でも楽しめるデザインに


これまでウェブサイトで展開してきたHolidayをiPhoneアプリに落とし込む上では、プランの見せ方が最大の論点でした。どうすれば、プランを素敵だと感じ、行ってみたいと感じてもらえるか。Holidayのデザイン担当者でもあるiOSの開発リーダーが、プロトタイプを作っては壊すことを繰り返して今の形にたどり着きました。
アプリの見せ方で意識したのは、雑誌っぽさ。とはいえ、Holidayに投稿されるプランは文章ではないし、仮に文字がズラッと並んでいてもユーザーは全部は見てくれないだろう。パッと開いた時に何となく楽しそう、ワクワクするという感情を引き出すことを目指しました。
「一つのプランを縦にどんどんスクロールして読み物として読み進めるより、プランはスポットの固まりでできているので、一つ一つのスポット単体でも楽しめるような作りにしています」
プランのトップページではスポット一覧が見られて、一つをタップして全画面表示すると、スポットを左右にスライドしても見ることができる。つまみ食いならぬ、「つまみ見」もできるためプランを色々な形で楽しむことができます。
投稿のハードルが高いことは決して悪いことではない
昨年末から不定期で実施している「おでかけプランコンテスト」。期間を区切って、特定のテーマのおでかけプランをエントリーしてもらうもので、初回のテーマは「新年」でした。コンテスト開催で新規投稿が増えるのかと思いきや、むしろ既存コミュニティを活性化する効果が。一定のペースで投稿している投稿者が、あまり見られていなかった過去のプランを掘り起こしてくるなど、マンネリを防ぐ働きがありました。
新規ユーザーが思ったように増えなかったことからわかるのは、投稿のハードルが思っている以上に高いということ。Holidayのチームでは、投稿のハードルが高いことは決して悪いことではないと考えます。
「投稿への心理的ハ−ドルを下げるべきか否かという議論は半年間ずっと続けています。ハードルを下げた時に、本来投稿する属性じゃない人が投稿するようになって、今Holidayに集まっているプランの質に外れたものが増えるかもしれない。サービスを長期的に運営していく上で、それは健全ではないと思っています」
もちろん、ユーザーエクスペリエンスやユーザーインタフェースという意味での投稿のしやすさは大事。ワークショップなどが加わったこともあって、ITリテラシーが決して高くないユーザーによるプラン投稿も増えていますが、「自分に、こんなに素敵なプランが作れるとは思っていなかった」「実際やってみたらすごく簡単だった」というフィードバックが集まっていると言います。
100万ダウンロードされて当然の価値とは?

半年間を経てベータ版から正式版に、またiPhoneアプリをリリースしたHoliday。今もそのゴールは変わらず、質の高いプランを投稿してくれるユーザーを増やすことです。そのため、KPIには投稿者の月間UU数を掲げ、ダウンロード数では100万ダウンロードを目指しています。
「とはいえ、投稿者のUU数だけでは、投稿の質までは測れません。ここまでの価値提供ができれば100万人が使ってくれて当然だよね、と自ら言えるようなサービスを作ることを目指しています」
Holidayのアプリを開いてみて発見したのが、神奈川県の「家系ラーメン!本場横浜5天王ツアー」。カーシェアで車を借りて一晩でラーメン店を回り、複数のラーメン店を一つのプランにまとめたもの。投稿者のとある1日が切り取られたようになっていて、まるでストーリー。文章や写真、まとめ方の切り口などに投稿者の個性が表れていて他にも色々見たくなります。
この質を担保できるかが、今後サービスを拡大していく上で鍵になるのは間違いなさそう。いいコンテンツを集めることができればサービスに存在意義が生まれ、負けないと話す友巻さん。素晴らしいコンテンツをどう増やし、また近い将来、プランを探す人への価値をどう提供していくのか。乞うご期待。
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