kickstarterの一方的な処分ーー6万4000ドル(約765万円)を停止されたListnr、自力での製品化を目指す

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kickstarterでサスペンド処分を受けたListnrのページ

ものづくり系のスタートアップにとって注意すべき問題が発生した。クラウドファンディングによるファンディングに成功したある国内プロジェクトがサスペンド(停止)の処分を受けたのだ。

対象のプロジェクトはListnr。パナソニックとCerevo、そしてアーティストという異色のコラボレーションによって生み出されたアイデアについては、私たちもインタビュー含め、なんどか紹介をしてきた。(情報開示:私もバッカーの一人としてこのプロジェクトに105ドルを投じている)

参考記事:大企業とスタートアップの挑戦ーーListnrは「環境音操作」という市場を創造できるのか?

Kickstarterで336人から集めた6万3808ドル(3月16日時点の120円換算で約765万円)はサスペンドとなり、私も支援した金額はクレジットカードから引き落とされていない。Listnrプロジェクトを推進するInterphenomが発表した内容によると、この件が発覚したのが日本時間3月7日の午前8時頃。

Listnr_-_interphenom
Interphenomに掲載されている説明文

サイトに掲載されている通り、原因については全くの不明ということで、当プロジェクトのファウンダーの一人、江原理恵さんにメッセージで状況を確認したが、やはり理由には全く心当たりがないという。

「経緯などはサイトに掲載している通りで、理由に心当たりもありません。こちらもサスペンド処分を受けていろいろ調べてみたのですが、他にもサスペンドを受けた事例はいくつか見つかっています。ただ、我々は技術的にも問題がないし、サスペンド前に目標額も達成しているので、他の処分とは一概には比べられず原因を特定できないでいます」(江原氏)。

具体的なサスペンド(失格処分)条項を求めてKickstarterの規約を眺めてみると、13条の権利条項にこのような記述が見つかる。該当箇所をそのまま引用する。

13. Our Rights
To operate, we need to be able to maintain control over what happens on our website. So in this section, we reserve the right to make decisions to protect the health and integrity of our system. We don’t take these powers lightly, and we only use them when we absolutely have to.

Kickstarter reserves these rights:

  • We can make changes to the Kickstarter Site and Services without notice or liability.
  • We have the right to decide who’s eligible to use Kickstarter. We can cancel accounts or decline to offer our Services. (Especially if you’re abusing them.) We can change our eligibility criteria at any time. If these things are prohibited by law where you live, then we revoke your right to use Kickstarter in that jurisdiction.
  • We have the right to cancel any pledge to any project, at any time and for any reason.(我々はすべての投資予約やプロジェクトについて、いつでもいかなる理由であってもキャンセルする権利を有する)
  • We have the right to reject, cancel, interrupt, remove, or suspend any project at any time and for any reason.(我々はいかなるプロジェクトについても、いつでもいかなる理由であってもそれを排除、キャンセル、中止、取り消し、停止する権利を有する)
  • Kickstarter is not liable for any damages as a result of any of these actions, and it is our policy not to comment on the reasons for any such action.

ようはkickstarter側の都合でどのようにでもできる、というものだけが記載されており、具体的な項目は見つけられなかった。ちなみに国内クラウドファンディングではどうかといくつかサービスの利用規約をチェックしてみたのだが、サイバーエージェント・クラウドファンディングが提供するMakuakeに、より具体的な項目があったので参考までにこちらも引用させていただく。

第3条(プロジェクトの発表やプロジェクト実行者に関する条件)

当社は、以下に定めるもののプロジェクトの発表を禁止するものとし、これらが確認できた場合には当社の裁量により、削除または退会を求める場合があります。また当該出品により当社に損害が生じた場合、 プロジェクト責任者はこれらの損害について賠償しなければならないことがあります。必ず出品する前に、次の各項をお読みいただき、ご了承の上ご利用ください。

  • 1 )法令で禁止されているもの
  • 2 )主として武器として使用されるまたはその恐れのある作成や収取を目的とするもの
  • 3 )アダルト・風俗関連のプロジェクト
  • 4 )商品の販売につき法律上の許認可が必要なプロジェクト(プロジェクトの実行者が許認可を受けている場合は除きます。)
  • 5 )他人の権利を侵害するまたはその恐れのあるプロジェクト
  • 6 )食品・飲料・薬などで人体・健康に対し、明らかに悪い影響を及ぼす恐れのあるものを作るプロジェクト
  • 7 )人体、臓器、細胞、血液またはそれらを利用・加工したものの作成や、医療関連のプロジェクト
  • 8 )当社が別途定める「禁止プロジェクト一覧」に定めるもの
  • 9 )その他、当社が運営上不適切と判断する一切のプロジェクト

基本的にプロジェクトは発表前にクラウドファンディングのプラットフォーム側がチェックをして公開するので、停止する場合があるとしたらファンディング中に上記のような出来事が露見した場合だろう。

では、Listnrのサスペンドにはどういう原因は何が考えられるのだろうか?

私は実際に実機もみているし、Cerevoの開発能力や生産能力については疑問を持っていない。ただ、ひとつ気になったのが、Listnrがファンディングに成功したのが最終日で、まだ達成していない状況から最後の1、2日でいわゆる「ラストスパート」がかかったのでは、という話だ。同じくこのプロジェクトのバッカーのひとりとそういう会話になった時、もしかして、そういう急激な動きをプラットフォーム側が不審と判断したのではないかと想像を巡らせてみた。

いずれにせよ、kickstarter側が回答しない限り、この真相はわからないままだ。

Listnrの今後について江原さんはこう続けている。

「今後は既に達成していたこと、たくさんの応援のお言葉をいただいていたことから、独自に製品化することは決定しました。年内に出荷の方向性ですが、まだ詳細は検討中です。また別のクラウドファンディングを使うかとか方法や手段はまだ決まっていません」(江原氏)。

現在、Interphenomでは国内外のバッカーに対して、最新の情報を提供するフォームを用意している

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