Todai to Texas:日本のハードウェアスタートアップ、SXSWで喝采を浴びる(パート2)

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Hinomaru_SXSW

前編パート1からの続き)

日本のハードウェアスタートアップが今年のSXSW Interactiveで勢いある活躍をした。実際、SXSW の日本セクションはオースティンに向かった海外組の中で一番大きいものであった。

将来有望なハードウェアスタートアップ10社によるブースが設けられた Todai to Texas(Todai=東京大学)エリアは、日本セクションの大部分を占めており、イベントのハイライトでもあった。

前置きはこれくらいにして、以下に残り5チームを紹介しよう。

AgIC と MESH Project の提携

AgiCMesh

AgIC は、プリント基板の回路印刷を手掛け、日本で最も急速に伸びている大注目のテック系スタートアップだ。昨年、同社は btrax 主催の SF Japan Night VII 東京予選TechCrunch Tokyo の2つのピッチコンテストで優勝している。今年1月には、エンジェル投資家から83万米ドルの資金を調達している。しかも同社の2014年の年間売上高は、12万5,000米ドルを記録している。

SXSWでは、ソニーが支援する MESH Project がAgICに加わり、日本の禅の庭園を未来的に解釈したような展示を行った。AgICのプリント回路基板を備えた透明なチューブが庭園に置かれ、それぞれが音を鳴らしたり光を放ったりする。この機能は MESH Project のビジュアルプログラミングソフトウェアであるCanvasをベースにしている。MESH Project はシンプルなドラッグ&ドロップのインターフェースを備え、ユーザに Internet of Things の力を活用させるものだ。今月、Indiegogoでの資金調達にも成功している。

私たちはクリエイティブな人々のための制作ツールを作りたかったのです。(このコラボレーションは)エンジニアのためだけではなく、回路基板やプログラミングの知識のないデザイナーや一般の人々に使ってもらうためでもあります。私たちは、ユーザが洗練された発明を簡単に生みだせることを望んでいます。(MESH Project 代表の萩原丈博氏)

SenSprout

SenSprout

将来、きれいな水が、金やプラチナよりも価値のあるものになるかもしれない。地球上の水の1%未満が飲用であり、80%以上は農業に使用される。いまだ人口は増え続けており、水を必要としている人々のために農業用水を転用する方法を見つける必要があることは明らかだ。

SenSproutは、農家が降雨量と土壌水分レベルを遠隔測定することができる葉形のセンサーだ。もちろんこのようなセンサーはすでに存在しているが、農地全体に配置するには数万ドルの費用がかかってしまう。 そこでSenSproutは、(AgICの導電性インクで)プリントされた回路基板を使うことで大幅なコストカットを実現している。

従来の水センサーでは、監視やデータ記録装置なしでも100米ドル以上のコストがかかります。私たちのセンサーではユーザのスマートフォン経由でクラウドにアクセスするため、監視およびデータ記録システムを含めても50米ドル以下になります。(SenSprout 共同設立者の西岡一洋氏)

西岡氏によると、将来的には土壌の養分をチェックするセンサーも追加する予定だという。彼はこのセンサーをカリフォルニアのワイン業界に売り込みたいと考えており、10月に開かれるSXSW Ecoにも出展する予定だ。なお、SenSprout は Todai to Texas のピッチコンテストの優勝者だ。

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exiii

EXIII

まる2日間 SXSW を歩き回った今だからこそ、exiii がこの会場のどのブースよりも多くの注目を集めていたと自信を持って言うことができる。それは驚くことではない。このスタートアップは、手足を失った人や生まれつき手足の全てまたは一部がない人のために、3Dプリンターで手頃な価格のロボットアームを作っているからだ。欧米人が日本に期待するような未来的な技術と、実際に人を助けるというミッションを組み合わせることで、exiiiの「handiii」は、このショーで素晴らしいヒットとなった。

Handiiiはカスタム結合装置を備えており、モーター1つで3節からなる指を動かし、物体を握ることができる。さらなるコスト削減のため、信号処理にはアーム専用コンピュータではなくユーザのスマートフォンが使われる。

私たちが SXSW にやってきたのは、単純に来場者からの反応を見たかったからです。もちろん新しい可能性を探しています。しかし、ただ世界が(handiiiに)どう反応するのか見たかったというのが本当のところです。(exiii CEOの近藤玄大氏)

近藤氏は機器の開発に1年半もの期間を要したと語った。彼は東京大学で人工頭脳学を学んでおり、過去にはソニーやパナソニックで働いた経験も持つ。

この種の人工装具を実用的にするためには、価格とデザインはとても重要なんです。今や3Dプリンターやスマートフォンという技術がありますが、私はこれまでに目にしてきたものよりさらに良いものを作れると実感しています。私たちのチームが3人だけであってもです。(近藤氏)

森川章氏(写真上)は exiii のエバンジェリストであり、初めて試験的に使用した人物だ。SXSW 出席者は彼の義手と握手するために行列に並んだ。

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Phenox2

Phenox

好むと好まざるとに関わらず、最近のガジェットブームの1つはドローンだ。Phenox2は、昨年成功したバージョン1.0のKickstarterに続き、自立性ミニドローンの最新イテレーションである。

カスタマイズされた自己制御知能システム(ISCS)を搭載するPhenox2は、特定の色やパターンといった視覚的な特徴にもとづいて操縦することができる(例えば、白い床にある黒い正方形の上を飛ぶ、など)。2つのカメラとマイクを使って、ユーザが口頭の指示を出して手のひらの上に着地させることができる。リモコンすら必要ないのだ。また、Linuxベースとなっているので、ユーザが独自の飛行プログラムを書いてPhenox2の内臓コンピュータに直接インストールすることができる。

ドローン製作者の此村領氏は、最新バージョンをKickstarter クラウドファンディング開始を発表すべく SXSW に参加した。Phenox初期版は手作業で製作されたため30台に限られていた。しかし今回のKickstarter クラウドファンディング(10万米ドルを目標)で、日本での量産化を目指している。

RE: SOUND BOTTLE

ReSoundBottle

RE: SOUND BOTTLE は、ユーザがとらえた音を何でも自動的にミックスしてしまう、実験的な音楽製作装置である。ボトルの口を開けるとレコーディングが始まり、キャップを戻すと記憶する。6つの音までをとらえ、内臓されたソフトウェアで同時にミックスが行われる。まるでパーソナルDJがボトルの中に入っているようだ。

シンプルなLEDインターフェースにより、ユーザは音量とBPMを操作することができる。また、SDスロットがあるので音楽を保存したり、もともと録音した音声をミックスに加えたりすることも可能だ。広報担当者によると、RE: SOUND BOTTLE は夏までにはKickstarterに参加するとのことだ。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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