自分の困りごとを解決するために女子大生が共同創業ーー試着室で友達の正直な意見が聞けるアプリ「Wauw」

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幼なじみと試着室用チャットアプリ「Wauw」を開発するMelanie Shaulさん
幼なじみと試着室用チャットアプリ「Wauw」を開発するMelanie Shaulさん

先週お届けした、南カリフォルニアの女性起業家を中心としたイベントのレポート。イベントに参加しても感じましたが、従来一般的だった就職という道ではなく、自ら起業する道を選ぶ女性が少しずつ増えつつあります。

今回お話を伺ったのはそんな女性の一人で、南カリフォルニア大学に通うMelanie Shaulさん。彼女は、現在はシカゴで大学に通う幼なじみのAli Sipherさんと共に、今秋リリース予定のアプリ「Wauw」を手掛けています。サービス名称の「Wauw」は、“What are you wearing”の頭文字をとってつけられました。

試着室でセルフィーを送って友達の本音の意見が聞ける

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Wauwは、ショップで洋服を試着していて迷った際に、試着姿をセルフィーに撮って友人にメッセージとして送れるアプリです。メッセージには、「今度のデートに着ていくワンピース、これどう思う?」といった具合にコメントを添えることが可能。返信タイマーつきのメッセージを受け取った友人は、アイテムが買いかそうでないかを赤・緑・黄色などの色でも簡単に返せて、もちろんコメントも送れます。グループチャットでは他の意見に影響されて正直な意見が聞けないことが懸念されるため、メッセージは一斉操作で複数の友人に送れるものの、あくまでそれぞれが個別のチャットとして機能します。

またWauwは店舗を巻き込み、iBeaconのようなトラッキング技術を使用。フィッティングルームでアプリを開くと、持ち込んだ洋服の数やどの洋服かを自動的に表示し、友人は送られて来たセルフィーに加えて詳細な商品情報なども参考にしてフィードバックすることができます。

親友同士のメラニーとアリが普段から感じていた困りごとへのソリューションとして生まれたこのアプリ。お店で試着中に友達の意見が欲しいのはどの年代の女性も変わりませんが、Wauwのターゲット層は18歳から24歳の女性と比較的若い女性。それには理由があります。

「まだ完全に自立していなくて、買い物はお母さんと一緒にしている若い女の子たちを対象にしています。一緒に買い物をしているのはお母さんだけれど、必ずしもお母さんに洋服に関する意見を聞きたくないから。私とアリーは、これまで試着室からSMSを送り合って買い物時のフィードバックをもらっていたから、ある意味、最大の競合はSMSかもしれない」

全く知らない女子高生に使ってもらうことで得た発見

2人が共に起業することを決めたのは2013年の冬。同年の夏、周囲の学生と同じようにインターンシップを探していたメラニーですが、残念ながら挑戦したいと思える職場が見つかりませんでした。一方のアリーはお父さんが起業家だったこともあって、起業という道をずっと身近に感じて育ってきました。普段、自分たちが繰り返し行う試着室でのメッセージングに着目して、Wauwを立ち上げることを決意しました。

昨年夏には、メラニーが通う南カリフォルニア大学の「Startup Garage」と呼ばれるスタートアップのインキュベーターに参加。10倍を超える倍率の中選ばれました。素晴らしいアドバイスをもらいながらサービスを改善し、背中を押してくれる人に囲まれることで起業への自信がついたと言います。

「プロダクト作りの全てのステージにおいて、常にユーザーと話しながら作り続けることが大切だということを学びました。作り手の私たちがまさにターゲットでもあるけれど、思い込みで勝手に作ってしまわないこと。また、数々のメンターに素晴らしいアドバイスをもらったけれど、全てを鵜呑みにしないこと。あくまでそうした意見を踏まえて、自分で決断することが大切だと思う」

とあるユーザーヒヤリングでは、知り合いではない女子高生のグループにWauwをしばらく使ってもらったそう。すると、女子高生はお店の試着室だけでなく、朝学校に行く前に服を決める際にWauwを使い始めました。初めて着る服をセルフィーで撮って送ったり、またお店に一緒に買い物をしている際も、隣の試着室にいながらWauwでメッセージをやり取りしたり。全く知らない女子高生をテストグループに使うことで、正直なフィードバックを得ることができました。

今はまだ遠距離恋愛中のチーム

Wauwの共同ファウンダーのMelanie(右)とAli(左)
Wauwの共同ファウンダーのMelanie(右)とAli(左)

今年6月に大学を卒業する予定の2人。大学でコンピューター・サイエンスを専攻するメラニーが開発を行い、アリーがビジネス面とデザインを担当しています。現在はロサンゼルスとカリフォルニアと遠隔で動く2人ですが、卒業したら実家があるサンフランシスコに戻って本格的に稼働するとのこと。家族やインキュベーターから得た資金はあるものの、しばらくは実家に住みながら取り組み、本当に必要になるまで資金には手をつけないととても堅実です。

離れた土地にいながら、1週間に1回の進捗MTGを設けてプロダクト作りに励む毎日。よく、友情を壊すことになるから友人と起業するのは避けた方がいいといった意見を耳にしますが、2人に関しては超順調だそう。2人とも科学の授業が好きで、小学校から学校のグループプロジェクトや課題などにも一緒に取り組んできました。

「ただ仲がいい感情的な親友であるだけじゃなく、学業の中で色々プロジェクトを一緒にやってきたから、楽しいことも一緒にやるけれど物事をあまりパーソナルにとらない関係があると思う。それにお互いに相手をすごく尊敬しているし。むしろ、ここに新たなメンバーを迎え入れる時がチャレンジになるかもしれない」

女性であることはアドバンテージでしかない

昔からコンピューター・サイエンスが大好きだったメラニーは、大学で化学工学を専攻する中でプログラミングの楽しさに目覚めました。エンジニアであること、学生起業していることを人に伝えると必ず驚かれますが、みんなが応援してくれて、それはいい意味でのサプライズなのだと言います。起業する上で女性であることはアドバンテージでしかないと。

メラニーが起業したことにインスピレーションを受けて、大学の友人などからアプリの企画案を相談されるようなことも増えてきました。自分では開発ができないため、みんなエンジニアを探そうとしますが、メラニーは自分でプログラミングにチャレンジする道をすすめます。今はCode Academyなどプログラミング初心者にとって良い教材もいくつもあり、敬遠しないで挑戦すれば楽しさがわかるはず。

「プログラミングに挑戦してみれば、自分の力に驚かされると思う。大学在学中に起業して本当に良かった。大学ならではのネットワーク、また教授や同級生もサポートしてくれるから。家族もいないんだしリスクもとることができる。一回卒業してしまったら、もう二度と大学生には戻れないから絶好の機会だと思うわ」

Wauwは、まずは今年の秋を目指して消費者向けの部分をリリースする予定です。店舗や試着室で活用するトラッキング技術などを実装する小売店のパートナー探しはその後。消費者向けアプリでまずはデータを集め、ニーズを確かにしてから、それを小売店への説得材料に活かして行くとのこと。またリリース以降に取材したいと思います。

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