IBM BlueHubが第1期インキュベーション・プログラムのデモデイを開催、参加チーム5社が3ヶ月間の成長ぶりを披露

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13日、東京の朝日新聞メディアラボで、日本IBM とサムライインキュベートによるインキュベーション・プログラム「IBM BlueHub」第1期のデモデイが開催された。第1期は昨年12月から3ヶ月にわたって開催され、デモデイでは参加した5つのスタートアップが期間中の成長ぶりを披露した。

IBM BlueHub を率いる IBM で Performance Marketing のディレクターを務める Catherine Solazzo 氏によれば、今回のデモデイを経て、5月19日〜20日に東京で開催されるカンファレンス「IBM XCITE Spring 2015」での投票により、第1期の最優秀チームが決定される。

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IBM BlueHub の Catherine Solazzo 氏

第1期の開始時にも書いたように、日本IBM では中長期的なビジョンとして、東京オリンピック開催される2020年までに、これらのスタートアップが提供するサービスを日本を代表するサービスに育て上げたいとしており、IBM BlueHub を卒業後も参加スタートアップを手厚く支援していくことを、Solazzo 氏と共にプログラムを率いる 日本IBM ビッグデータ&アナリティクス アーキテクトの中林紀彦氏が確認した。

デモデイの冒頭、経済産業省で新規産業室新規事業調整官を務める石井芳明氏が挨拶し、世界的大企業である IBM がインキュベーションを実施していることに対し、日本政府としても積極的に応援しきたい旨を表明した。

では、この3ヶ月間で見違えるようにブラッシュアップされた5つのチームのサービスを見てみることにしよう。

Gene Quest

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左から:Gene Quest の高橋祥子氏と、メンターを務めた IBM BlueHub の中林紀彦氏。

Gene Quest はインターネットを活用した、消費者向けの大規模ゲノム解析サービスを提供する。同社のパーソナルゲノムのサービスは、がんに代表される疾病罹患可能性の解析項目の数で日本最大規模。遺伝的リスクを知ることにより、疾病予防、オーダーメイド医療、副作用のある薬の処方防止などに応用が可能だ。

遺伝子検査キットでゲノムサンプルの分析を依頼したユーザにはマイページが用意され、一度の登録のみで、新しく判明した医薬情報などをもとに、マイページ上に注意すべき事柄など新しい情報が適宜アップデートされる。Gene Quest は収集されたデータを解析し、匿名化した情報を製薬会社や研究組織に提供することで、創薬や医学の発展に寄与したいとしている。サービスを他社にOEM提供できることが特徴で、すでに2014年10月からは Yahoo Japan の Health Data Lab と既に協業している。

Gene Quest を率いる高橋祥子氏は東京大学大学院で分子生物学を専攻。高橋氏は、彼女を含むメンバーが、利益の追求よりも医薬研究へのフィードバックにより社会に貢献したい、と事業への熱意を語った。

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BrandPit

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左から:BrandPit の T. T. Chu 氏と、メンターを務めたサムライインキュベートの矢澤麻里子氏。

ソーシャルメディアでは毎日18億枚の写真が投稿されているが、その8割にはハッシュタグなどのテキスト情報が付与されていない。これらの画像情報を解析することにより、ブランドマネージャーが消費者行動を把握したり、市場拡大時の市場調査に利用したりできるサービスとして開発されたのが BrandPit だ。CEO の T. T. Chu は、ビールのハイネケンをキーに参考取得したデータを聴衆に見せてくれた(下図)。

BrandPit は既にヘルスケア商品を販売する Unilever や世界的なマーケティング会社である Ogilvy & Mather らと契約を締結。年間契約の月額制でカスタムレポートやオンラインダッシュボードをブランドマネージャーに提供し、今後12ヶ月間で新たに12社と契約を締結することを目標にしている。静止画だけでなく、動画の画像解析についても視野に入れていきたいとのことだ。

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TERRACE MILE

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TERRACE MILE 生駒祐一氏

農家をやると年々所得が減っていると言われる一方、農業は8兆円、食産業までを含めれば100兆円と市場規模は大きい。TERRACE MILE の生駒祐一氏は、データドリブンな農業を実現することで、農家が儲かるビジネスを展開しやすくするしくみを提供できると考えた。彼は、これまでに農作物100品目を育てる200人以上の生産者と対話を繰り返し、農家が主体となり、経営を見える化し、将来の売り上げを予測し、サプライチェーンを把握できるソリューションの開発に邁進してきた。

その結果、今回の IBM BlueHub への参加を機に生まれたのが iOS アプリ「TeraScope」だ(4月末リリース予定)。生産者が TeraScope に出荷量または収穫量を入力するだけで、データの見える化を実現。TeraScope を使った場合の一農家あたりの所得を140%向上させることを KPI に設定した。

この TeraScope のモバイルアプリとクラウドで構成されるサービスを向こう3年間にわたり無料で提供、分析サービスの「TeraReport」を JA、全農、生産法人、行政などに対して、従来の同様サービスの3倍に上る綿密な情報を、3分の1のコストとスピードで提供する。2015年4月からは、経済産業省が主宰する「新事業創出のための目利き・支援人材育成等事業(通称:目利き事業)」に参加し、サービスにさらなる磨きをかける。

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Link Sports

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左から:Link Sports の小泉真也氏と、メンターを務めたサムライインキュベートの矢澤麻里子氏。

スポーツをライトに楽しむユーザには、共通の悩みがある。彼らがチームを集めて試合を行おうとするとき、次のような問題が生じる。

  • 連絡調整が面倒。チームメンバーの半数以上がガラケーであり、チーム内や対戦相手との連絡が調整が大変。
  • スコア管理が面倒。95% の人たちは紙で記録しており、それを Excel に入力してから他のメンバーと共有したりしている。
  • 集金が面倒。試合会場のレンタル費用、イベント後の飲み会などの費用の割り勘処理が大変。

そこでこれらの問題を解決すべく、Link Sports は簡素な入力で対応が可能なモバイルアプリを開発した(下図)。4月末にリリースの予定だ。幹事が試合予定などをフィード投稿すると、アプリからのプッシュ通知、アプリ内アラートに加え、メールでも告知を配信することができるので、ガラケーユーザにも柔軟に対応できる。

トレーニング動画などのクラウド課金、機能開放による課金、大会試合に参加してくれる助っ人の募集代行、スポーツ用品やユニフォーム、スポーツ保険の販売などによりマネタイズ。全国のあらゆるスポーツチームの 5% が使ってもらうことを念頭に、月1.5億円の売上を目標に置いている。

これまでに、日本大学、早稲田大学、鹿屋体育大学、Bluetag.jp、ミズノ、YKK、Jognote などと提携。

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YAMAP (by SEFURI)


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左から:SEFURI の春山慶彦氏と、メンターを務めたサムライインキュベートの玉木諒氏。

YAMAP は、携帯の電波が届かない場所・状態でもスマホで現在位置が確認できる地図アプリ。山、釣り、アウトドアに出かける人が道に迷わないようにすべく開発した。

2013年3月のリリースから、アプリのダウンロード数は10万件、全国の4,000箇所以上を網羅する地図のダウンロード数は43万件を超えた。2015年には、アプリのダウンロード数は30万件、地図のダウンロード数は100万件、ソーシャルネットワーク機能における写真投稿の枚数は100万枚を超える見込み。

今後、YAMAP のプレミアム会員の会費から年間1億円、ローンチ準備中の登山・アウトドア用品の価格比較サービス「YAMAP Gears」(下図)から年間6億円の売上を目指す。先週開催された B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka のピッチアリーナで、YAMAP が優勝の栄誉に輝いたのは記憶に新しい。

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デモデイの最後、サムライインキュベートの代表を務める榊原健太郎氏が登壇。榊原氏は現在イスラエルを拠点に活動しているが、IBM がインキュベーションをイスラエルに続き、世界で2番目に開始したのが日本であることを強調。

グローバルで成功している IBM という大企業の力を活用することで、スタートアップが世界で成功できる可能性が高くなると考え、サムライインキュベートが IBM と共同して IBM BlueHub を運営することになった経緯を説明し、第1期の卒業チームらにエールを贈った。

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サムライインキュベートの榊原健太郎氏(左)

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