グランプリは医療、福祉業界のものづくり、足漕ぎ車いすのTESS:全国Startup Dayファイナル

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全国各地の起業を促進するため、トーマツベンチャーサポートとサムライインキュベートが企画している「全国Startup Day」。今年1年間、大阪、札幌、中部、関東、九州、中四国、東北と、全国各地の会場でイベントを開催してきた。ここに、各地のイベントの様子のレポートをアーカイブしている。

3月26日に開催された「全国Startup Day 2014ファイナル」では、各地のプレゼンでグランプリを受賞したスタートアップたちによるプレゼンや、これまで全国各地をまわりながらイベントを開催してきたベンチャーキャピタルらによるパネルセッションが行われた。

全国Startup Day、ファイナルグランプリは、東北発足漕ぎ車いすのTESS

まずはじめに、全国7地域でグランプリを受賞したスタートアップたちによるプレゼンを実施。プレゼン審査の結果、グランプリに選ばれたのは、東北地区代表の、ペダル付き車いす「Profhand」を開発したTESSだ。

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以下、各地のプレゼンでグランプリを獲得したスタートアップを紹介する。

アロマジョイン:Aroma Shooter(関西地区グランプリ)

AromaShooter

商品や投影されている映像をより立体的に表現する手段として用いられる香りシューター。しかし、従来の霧状の香りは、デバイスに香りが付着し、さらに映像が切り替わっても前の香りが残るなどの課題があった。そこで、これまでの拡散方式ではなく、組み合わせたカートリッジをコントロールし、気体噴射方式で指向性のある香りを0.1秒で切り替えて届けることができるサービスを開発した。

2022年には、世界初の香りを届けるテレビを開発するという。他にも、さまざまなデバイスやメディアと組み合わせる、嗅覚メディア事業をもとに成長させていく。そのためにも、小型化やPCやデバイスなどにビルドインできる開発を進めていきたいと語った。

ファームノート:酪農・畜産クラウドFarmnote(北海道地区グランプリ)

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牛の個体管理を行うアプリサービス。従来の紙やメモではなく、牛の発情や種付けなどをデジタル上に記録し、一日の活動記録のログを蓄積させていく、データに基づく牧場経営を推し進めていきたいという。個々の牛の生産性などもデータで管理することができ、将来的にはビックデータ解析による経営の見える化と予測を図る。

今後は、牛だけではなく鶏や豚などさまざまな経済動物(注:飼育が畜主の経済行為として行われる動物、家畜や家禽など)に適応し、グローバルに展開していく予定だ。

ユニファ:るくみー(中部地区グランプリ)

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写真を保育士が撮影し、全自動でサーバーに送り、画像認識によって自動で整理される写真サービスの「るくみー」。園児の成長の記録をもれなく撮影していく。現在は、保育園内にロボットを小型のロボットを置き、自動で撮影したものをもとに自然な園内の様子を撮影し、保護者へ写真を提供することも考えている。

将来的には、写真をきっかけとした家族が楽しむための家族ポータルメディアを目指す。

テコ:電動バイクTeco(関東地区グランプリ)

teco

オリジナル開発の専用リチウムバッテリーをもとに、電動式の業務用バイクの販売を行っているTECO。EVASIONとガソリンのハイブリッド者で、さらに企業の使用用途に応じて車両設計を行うサービスを行っている。導入のランニングコストが低く、日本国内だけでなく、海外、とくにアジア圏を中心として展開を行っている。

プリンシプル:SMART ROOM SECURITY(九州地区グランプリ)

SMARTROOMSECURITY

月額500円から980円で、家庭のホームセキュリティサービスを提供するSMART ROOM SECURITY。センサーとデバイスを家庭内に設置し、センサーに反応したらスマートフォンなどにアラートが鳴る仕組みだ。ホームセキュリティの普及は3%程度と低く、導入のハードルの多くがコスト面であることから、月額の導入コストを低くし、警備員が駆けつける毎に都度課金を行う。同社では警備員は配置せず、提携している警備会社の遊休警備員を活用することで、低価格を実現している。今後は、月額導入をよりゼロ円にまで近づけながら、普及率を高めていく。

将来的には、屋内だけでなく屋外にも対応し、緊急時にスマートフォンアプリなどでアラートを鳴らすことで、屋外でも警備員を駆けつけることができる、SMART CITY SECURITYを目指す。

エス:Laxus(中四国地区グランプリ)

Laxus

月額6800円で、1000以上ものブランドバックを無制限で使えるファッションシェアリングサービスLaxus。先日サービスをローンチし、平均MAU66%以上というアクティブ率を誇る。物流管理も、これまでECで培ってきた技術とノウハウ、ネットワークをもとに低価格の配送料や自社開発のICタグなどで商品管理を行う。仕入先との提携も広げており、抱えている在庫数も増加しているという。

ユーザからは、レンタルしたバックを購入したいという要望も多いことから、今後はレンタルしたバックを購入できるための仕組みづくりも確立していくという。あわせて、海外へのレンタルも構築し、ファッションシェアリング市場をつくりあげていく。

TESS:足漕ぎ車いす「Profhand」(東北地区グランプリ)

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人間本来の反射の作用である原始歩行をもとに、これまで動かなかった足がペダルをまわして車いすを操作することができる。歩行が困難になることで、運動量が低下し、その後寝たきりになる課題があるなかで、Profhandによって足を動かすことで身体機能を向上させ、それまで足が動かなかった患者が走られるようになった事例もある。

医療機関やスポーツ、福祉などさまざまな分野に足漕ぎ車いすを普及させていく。反射という人が本来持っている機能を活かし、健康に暮らせるためのものづくりをしていくという。

2014年度の一年間かけて、各地をまわりながらスタートアップを発掘してきた全国Startup Day。2015年度は、より一層投資家と事業家との接点や機会を増やし、同時に各地にスタートアップコミュニティを醸成するための取り組みを行う。また、トーマツベンチャーサポートやサムライインキュベートだけでなく、活動に賛同する企業やVCなどの協力を積極的に募るという。

2015年、地方からの起業がより加速するために必要なこと

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同イベントでは、「地方発ベンチャーの過去・現在・未来」と題したパネルディスカッションが行われた。ゲストにさくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏、大和企業投資取締役の平野清久氏、一般社団法人MAKOTO代表理事の竹井智宏氏、モデレーターにDraper Nexus Venture Partners, LLC Managing Directorの中垣徹二郎氏が登壇した。

パネルでは、かつてのネットバブルと、2010年代のIT業界の盛り上がりの違いについて話された。IT業界が盛り上がれば盛りあがるほど、優秀な人材が集中し、短期間で成長するためにも都市部が活性化し、地方との差が大きくなる傾向があるのでは、と議論。

「都市部と地方とで盛り上がりが違うが、今回の全国Startup Dayを通じて、地方の面白い起業家を見つけることができた。地方にいてグローバルに展開することで、都市部だけでないチャンスが広がるのではないか。2010年代のIT業界の盛り上がりは、裾のの広がりを感じる」(平野氏)

地方をまわってきた竹井氏や田中氏から、地方の起業の様子について話された。

「地方それぞれに、面白い発見があった。特に、市場規模はトレンドをいい意味で気にしない人が多く、自分がつくりたいものを顧客に提供し、そこからブレイクするような人が多い印象だった」(竹井氏)

「地方では、東京からIターンやUターンなど、都市部での働き方を経験している人が多い印象。都市部でスマートさを経験し、そこから自分の意思ややりたいことを行うためにあえて東京から離れたところで個性を発揮してものづくりをする人もいる。そうした働き方は、周りに振り回されずに愚直に前に進むことができるかもしれない」(田中氏)

自身のつくりたいものをつくるだけでなく、事業として成長していき、さらにもっている可能性をより広げるためにも、グローバル思考を地方だからこそ持つべきと語る平野氏。

「現在、日本でグローバルに活躍している大企業の多くは地方発だった。最初から世界へ挑戦する気持ちをもってものづくりをしてほしい」(平野氏)

目線を高くするためにも、やはりその地域だけでなく、都市部や海外の地域などさまざまな場所の経験をすることが大事だという。外の経験をしてきた起業家だからこそ、世界へ広げるチャンスがある、と田中氏は語る。

「ベンチャーが成功するためには、欲望が必要。地元だと、なにかやればすぐに目立って満足しがち。けれども、外を見ればもっと頑張っている人と出会い、刺激をもらう。刺激をもらうためのコミュニティにいることが重要」(竹井氏)

外からの刺激を与える意味でも、地方におけるアクセラレーターの重要性を指摘する竹井氏。「起業家と同じ目線で考えつつ、外のさまざまな情報を伝えるハブになる存在があることで、より地方は盛りあがる」とコメントした。

大阪のイノベーションハブなどのように、公的な動きが起業を後押しする動きも今回のイベントを通して発見できた。補助金だけでなく、場所をつくり投資を促し、産官学が連携することでさまざまな起業を促進する大きな要因になるのでは、と地方として今後起業を推し進めていくためのヒントも見えてきた。

「市の職員の中にも、熱意をもって活動している人も多い。想いをもった人と人とがつながり、人を巻き込んでいくことで大きな流れをつくることもできる」(田中氏)

2015年は地方創生の大きな年と言われているなかで、従来の企業の地方誘致ではなく地方発の起業にシフトしていると語る竹井氏。事実、東北では個々数年での起業開業率が急激に伸びているという。起業家支援を全国各地がこれまで以上に行っていくことに対して、各地から独自の技術や研究開発を片手に新しいイノベーションを起こす起業家たちが、多く輩出することを期待したい。

2015年も、パワーアップして全国Startup Dayが開催されることも決定した。これまで以上に、地方からの起業が生まれるよう、THE BRIDGEも引き続き地方都市を周りながら、起業家を応援していく。ぜひ、何かあればいつでもTHE BRIDGEに連絡してほしい。

 

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