導入実績は既に50社、一気通貫のデジマケツール「B⇒Dash」運営会社が3億円の資金調達

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電通が今年2月に発表したネット広告費1兆円越えの調査報告のことを覚えている方も多いだろう。総広告費約6兆円に対して約16%で1兆円台に乗ったのは初めてのことになる。

インターネットからの送客導線がどんどん拡大する一方、デバイスの多様化、コンテンツマーケティングやネイティブ広告、動画広告、リスティングなどの「入り口」の増加、DSP、SSP、DMPにみられるアドテクやデータ活用など、デジタルマーケティングを支える現場は極度に複雑化の様相を呈している。

こういった課題に取り組むのがマーケティングオートメーションといわれる分野で、リードとなる広告やソーシャルメディア管理からキャンペーン管理、顧客管理(CRM)、レポーティングなど、ワンパッケージでデジタルマーケティングに関するPDCAをサポートするソリューションが生まれてきた。

例えば昨年の2月にVentureBeatで発表されている人気のプレーヤーにはこのような企業たちが並んでいる。

そして今日、ここにまた新しい「概念」持ち込もうと意欲的なプレーヤーが現れた。

総合デジタルマーケティングのフロムスクラッチは5月15日、Draper Nexus Venture Partners(以下、Draper Nexus)、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(以下、ITV)および既存株主(計4社)を引受先とする第三者割当増資の実施を発表した。調達した資金は総額約3億円で、リード・インベスターはDraper Nexus。出資比率や払込日などの詳細は非公開となっている。

今回の調達で同社が提供するプライベートマーケティングプラットフォーム「B⇒Dash」の開発促進および経営基盤の強化に務めるとしている。

さてこの「B⇒Dash」をご紹介する前に運営会社のフロムスクラッチについて説明をしておいた方がいいだろう。ちょっと他のスタートアップとは毛色が違うからだ。

リンクアンドモチベーション出身の安部泰洋氏が代表取締役として同社を創業したのは2010年4月のこと。創業当時は企業コンサルやデジタルマーケティング支援などを請け負い、現在50名(営業やコンサルタントより開発の方が多め)ほどの陣容で事業を運営する中堅企業に成長している。

この運用実績と課題の中から生まれたのが「B⇒Dash」だ。

「あるクライアントの依頼でSEOから顧客管理からLTVから何まで一気通貫で請け負う案件があったんです。で、何かツールがあるだろうと調べてみたら、結果的にないことがわかって。だから最初は社内向けのツールとして開発を始めたというのがきっかけです」(安部氏)。

こうして2014年11月に約半年間の開発期間を経てこのサービスが生まれることになった。出自がこういった経緯からかもしれないが、あまり汎用的な側面はなく、顧客も毎月300万円から500万円といった規模のデジタルマーケティング予算を組める大型案件が対象になっているという。

運用実績もあり、最低月額料金は50万円(12カ月契約でその他PV等の従量課金が加算)からという価格にも関わらず、既に50社ほどが導入をしているという。

では「B⇒Dash」は何が顧客を惹き付けるのだろうか。それをぱっと理解できる一枚のスクリーンショットがこちらだ。

彼らがエグゼクティブサマリーと呼ぶこの画面は、その事業者、確認するレイヤー(経営層や管理職層)に応じてフルカスタマイズされるもので、施策の結果指数がリアルタイムに映し出される。

安部氏の話では、過去このようなサマリを指示されて出力するのに人手で1カ月かかった事例もあるということで、このツールの効率の良さがよく表現されているのではないだろうか。

その他にもこの「B⇒Dash」には多種多様な機能が実装されており、彼らの説明では「接続性(アトリビューションからLTVまでの統合管理)」「網羅性(ツールの統合)」「利便性(役職別の表示サマリ)」という特徴があるということだった。

特にCPA(獲得)ではなくLTV(顧客生涯価値)を強く意識して「収益結果としてのデジタルマーケティング」にこだわっている姿勢はコンサルティングを積み上げた結果なのかもしれない。気になる方は彼らの考え方をチェックしてみるといいだろう。

理想的なツールと思える反面、もちろん懸念点が無いわけではない。当然ここまで手の込んだツールなので導入支援は相当な労力になる。実際、安部氏も納品までに2カ月を要すると説明しており、「70%のパッケージと30%のカスタマイズ」(阿部氏)という半請負的なスタイルなので馬鹿みたいな事業拡大をすぐに望むのは難しいだろう。

ただ、先に書いたエグゼクティブサマリーなどもフルカスタマイズといいつつ、実際は業種によってテンプレートに近いものを作成可能だそうで、彼らの事業がどこまで躍進できるかはここの効率化次第かなとも感じた。

事業が既に回っているだけに、今後はどのような速度で次のステップに進むのかに注視したいと思う。

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