編集部注:姉妹で世界のスタートアップを巡る旅に出た現役東大生の松井友里氏。旅の出発についてクラウドファンディングで資金を調達しながら、2015年4月から取材を開始。50社のスタートアップを3カ月かけて取材しブログで取材の様子を記事にしている。本稿は、同氏が取材した世界のスタートアップの活動の様子を寄稿していただいた。
シンガポールを拠点とするテック・スタートアップ・メディアのe27が開催するピッチ・イベントのEchelon 2015。このイベントは、世界各地で予選が開催され、その予選を通過したスタートアップたちが、ファイナリストとして6月23日〜24日に開催されるEchelon Asia Summit 2015でグランプリを競うものだ。4月には東京予選も開催され、THE BRIDGEではその様子を記事にしている。
世界一周をしながら各地のスタートアップを取材する私は、先日の4月29日に開催されたマレーシア予選に参加してきたので、その様子を寄稿したい。

良質なメンターを通じた質の高い入学支援プラットフォーム

今回のEchelon 2015マレーシア予選のスタートアップのピッチで審査員賞に選ばれたのは、留学生向けの大学入学支援サービスChaseFuture、聴衆賞にはサービス業界向けの口コミサイトRecomnだ。

ChaseFutureは各大学の受験プロセスに詳しい専門家と海外大学・大学院への入学を志望する学生をつなげる入学支援プラットフォームだ。上海を拠点とするChaseFutureの主なユーザは米国・英国大学志望の中国出身者で、今後は中東や東南アジアなど海外大への留学生が多い地域を開拓していく予定だという。
CEOのGreg Nance氏は学生時代から教育に関心があり、MoneyThinkというNPOを立ち上げ米国の10の州にて9,000人の高校生に財務知識を提供してきた経験もある。その後ケンブリッジ大学院で東アジア研究を行ったときに、中国の教育にまつわる課題に対してアクションを起こしたいと考え始めたそうだ。
中国で数多くの受験専用機関が有名大留学生を輩出しようと奮闘する中、ChaseFutureは信頼性を売りにしている。メンターへの厳しい採用基準と、受験大学数に合わせて選べる効率的なパッケージを設けることでサービスの質を担保し、ユーザから高い満足度を得ている。
実際、新規ユーザの49%が口コミからの利用が多く、使用後のユーザアンケートでは98.7%が満足していると答えている。また、学生との相談セッションをスカイプで行うことでメンターがどこからでも働ける環境を提供していることも、良質なメンターを集めるのにつながっている。
良質な口コミだけを集めたサイト

Recomnは良質なサービス提供者を知り合いの口コミから見つけることのできる検索サイト。創業者のJes Min Lua氏が以前インターネットで見つけたアマチュア写真家に結婚式の写真を任せたところ、データを失くされてしまったという苦い経験から思いついたアイディアだ。
Recomnからは、写真家だけでなくケータリングや引越しなどあらゆるサービスを検索することができる。
検索サイトなら既に世の中にたくさん存在するが、多くの場合検索結果が多すぎてユーザにとって選びづらいという問題がある。Recomnはユーザの代わりに検索結果をあらかじめ絞り、知り合いやコミュニティの近い人から高い評価を得た数個のサービスのみを表示することでこの課題を解決する。

今後ChaseFutureのようにアジアと欧米の橋渡しを行うようなサービスは、英語話者の多いマレーシアを東南アジアでの拠点とするものが増えるかもしれない。また、本イベントでは拡張現実技術を使ったアドテク・スタートアップのPlayme ARや、顔認識テクノロジーを使ったセキュリティ・ソフトのBorderPassなどのハイテク・スタートアップも目立っていた。欧米で既に確立済みのビジネス・モデルではなく、世界的に新しい最先端技術を使ったビジネスがマレーシアから生まれる日もそう遠くないかもしれない。
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