朝日新聞社とオハコが立ち上げた動画・生放送キュレーション・サービス「eeny(イーニー)」が目指すもの

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2015年のスタートアップ・トレンドは、動画とメディアだと言われたのも束の間、もうすぐ上半期が終わろうとしている。この仮説を何より裏付けたのは、4月に前LINE代表取締役の森川亮氏がローンチした C Channel だろう。森川氏のようなメディア人の他にも、従来から事業を営むメディア企業が動画コンテンツのサービスを参入する事例は増えるに違いない。

去る5月11日、朝日新聞社は動画キュレーション・サービスの「eeny(イーニー)」をローンチした。eeny は、DeNA の SHOWROOM、ニコニコ動画、ニコニコ生放送、Ustream、YouTube が動画コンテンツをキュレーションし、独自のアルゴリズムを用いて「今、一番盛り上がっている動画・生放送」を横断的に紹介するサービスだ。デスクトップに加え、スマートフォンやタブレットなどでも利用できる。

一般的に新聞社と言えば、当然ではあるが自前のコンテンツにこだわる傾向があり、社員の多くを占める記者達は独自ネタを求めて夜討ち朝駆け、という世界だと思っていたので、新聞社が第三者のコンテンツを集めるキュレーション・サービスを開始というニュースを耳にしたときには、いささか違和感を覚えた。朝日新聞社が eeny を作ろうと考えた理由は何だろうか。

eeny のプロジェクト・リーダーを務める、朝日新聞社デジタル営業センターの安達慧氏が答えてくれた。

新聞にはラジオやテレビの番組表ページ、いわゆる「ラテ欄」というのがありますが、我々は動画コンテンツのラテ欄を目指そうと考え、ライブ配信される動画のみを扱うことにしました。動画コンテンツへの注目が集まっており、それを横断的にザッピングできるようにすることは価値があると考えたからです。ターゲットは10代〜20代の男女です。

現在は、生放送されている動画や人気のある動画のおすすめなどしか表示がありませんが、いずれ、動画に付されたキーワードから類推し、番組のカテゴリ毎に自動的に振り分けるような機能も実装したい。横断的に多くの動画を閲覧できることで価値が増すので、現在の5サイト以外にも連携先を増やし、20サイトくらいは横断でキュレーションできるようにしたいと考えています。

eeny は朝日新聞社内で約2年前に構想に着手、その後、開発会社やスタートアップ約10社からコンペでアイデアを募ったところ、オハコの提案が一番飛び抜けていた、と安達氏は振り返る。

甲斐さん、山中さん(後出)はじめ、オハコのチームがみんな若い人たちだったのは印象深い。eeny のターゲットは若い人たちなので、作り手が若い人たちであることは好都合でした。

通常、システム開発を発注する場合、事前に RFP (Request for Proposal) を出す必要がありますが、オハコさんには仕様策定の段階から入ってもらいました。おかげで、最初想定していた画面の動きが実装できました。デザイン、インタラクション、実装などを並行してやってもらっています。

eeny の開発にあたっては、オハコのエンジニアである甲斐啓真氏がサイトの UI/UX 設計を担当、2011年に史上最年少のスーパークリエイターに選ばれたことで知られる山中勇成氏が、コンテンツの取得などの技術実装を担当している。トップ画面では、右から左へとライブ動画のサムネイルが流れていくが、このデザインにも UI/UX 的にかなりのこだわりと、エンジニアリングのテクニックが投入されているのだそうだ。

安達氏によれば、現時点で eeny のマネタイズ手段については未定とのことだったが、動画の閲覧選択履歴が蓄積されることでユーザの趣味嗜好が把握できることから、データドリブンで広告を差し込むようなビジネスモデルも、可能性の一つとして考えられるだろう。朝日新聞社では2016年3月までに、eeny を月間500万ページビューにまで成長させたいとしている。

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左から:朝日新聞社 デジタル営業センター 安達慧氏、フリーランス・エンジニアの山中勇成氏、オハコ UI/UX エンジニア 甲斐啓真氏、オハコ代表取締役社長 菊地涼太氏

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