音楽コミュニティアプリ「nana」の文原氏、100万DL目前にしてこれまでの苦難を語る

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ユーザー同士が投稿した歌声や楽器の音色を重ね合わせてコラボレーションを実現してくれる、音楽コミュニティの「nana」が今年に入ってまた大きく成長しているらしい。運営するnana musicの代表取締役、文原明臣氏が本誌に教えてくれた情報によると、同アプリのダウンロード数はもうすぐ100万件に到達する状況だという。

音楽に関するサービスと言えば、SpotifyやApple Musicなどのストリーミング(国内ではサイバーエージェトとエイベックスのAWAやLINE MUSIC)などのような「聞かせる」ものが主であり、コミュニティについてはMySpaceの栄枯盛衰とかApple Musicに新たに加えられるソーシャルネットワーキングサービス(以前にはPingというのもあった)が話題に上がる程度で、nanaのようにユーザー同士で楽曲を作成できるようなものは見当たらない。

実際、このnanaは2012年8月に公開されるも、サービスが立ち上がるまでに非常に困難な道のりを歩んでおり、THE BRIDGEでも度々その成長を取り上げるようになったのは2014年に入ってからになる。

100万件ダウンロードが近いということで、文原氏にこれまでの数年を振り返ってもらった。ニッチサービスの成長が如何に困難かよく分かるはずだ。(太字の質問は全て筆者。回答は文原氏)

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nana music代表 文原明臣氏

改めてnanaを立ち上げた時の経緯を教えてください。

nanaの構想を思いついたのは2011年5月ごろです。「We are the world」のような世界観が大好きで、世界中の人たちと歌いたい、もっと簡単に歌うことでつながりたい、と思ったのがキッカケでした。とはいえ自分にはコードを書ける能力もデザインできる能力もなかったので、出来る人を集めようと思い、神戸から東京に出てきました。

私と出会ったのもその頃ですね。シードアクセラレーターのMOVIDA JAPANに参加されていました。

とにかく色んな人に会ってはこういうことをやりたいんだ、ということを伝え、一人、またひとりと協力してくださる人たちが増えていき、デザイナー、サーバーサイドエンジニア、iOSエンジニア、自分含めて4名が揃ったタイミングでMOVIDA JAPANからの投資も決まりました。その後に法人化して、僕自身も神戸から東京に出てきて本格的に作れる体制が整いました。それが2011年12月です。

元々文原さんはレーサーという経歴ですから、ウェブ、アプリの開発は戸惑ったんじゃないでしょうか。

2012年にはいって本格的に開発を進めていったのですが、当初のリリース予定タイミングには間に合わず、また少しでも完成を早めるために外注さんにお任せしたところ2,3ヶ月立って1行もコードが書かれてなかった、なんてこともありましたね。こういったマネジメント経験ははじめてだったので、失敗ばかりでした。

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リリース当時のアプリ

で、2012年8月にリリースをすると。

リリース初日は色々なテック系メディアさんに載せて頂いてAppStoreのランキング上位に来たりもしたのですが、すぐに失速して毎日数十DL、DAUもせいぜい数百人前半みたいな状態になって、そこから大きく伸びる兆しは正直見えてはいませんでした。その後2012年11月に英語対応し海外でもリリースしたのですが、特に伸びることはありませんでした。

2013年の2月ごろに楽器小売事業会社との事業提携リリースがはじめて音楽系のメディアに載って、そこで少し伸びました。が、そこからも低空飛行でした。

私もこの頃、色々な話を聞きました。やはりニッチすぎるんじゃないかとか、ビジネスどうするんだとか、厳しい意見が多かったです。

苦しい時期でした。サービスは大きく成長する兆しは見えず、シードマネーも尽き、人も辞めていきました。エンジニアも辞め、修正すべき点は多々あるのに開発はまったく進まず、来月どうやってサーバー代を払うか、メンバーへの支払いをするか、外注への支払いをするか、とお金に追われる日々がはじまりました。

確かにいったん諦めたほうがいい、休止したほうがいい、そんな意見も頂きましたね。

どうして止めなかったんですか?

そんな中でも着実にユーザーは増えてたんです。開発ができない中でなにかユーザーのためにできることはないかと考え、はじめて公式のオフ会などを開いたりもしました。この時に来て頂いたユーザーとのつながりは今も強いです。

決して大きな数ではないですが、一歩一歩サービスとして成長ができているし、まだやるべきことをやれてないだけ、このサービスは絶対に大きく羽ばたける、そう信じて日々を耐えました。

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2周年イベントに集うユーザー。nana存続のキーとなった。

小さくてもコミュニティが出来てて、その人たちが満足している、という状況を信じた。

そんな状態の中でも個人投資家の方が手を差し伸べて下さり、辞めずに付いてきてくれるメンバーが居たり、支払いを待ってくれる外注さんが居たり、そして着実にユーザーも増えたりと、ギリギリの状態ながらも前には進めていたのだと思います。

この状態が1年近く続きました。この間もなんとか事業を成長させるための資金調達を試みていました。ですがほとんどは「面白いんだけど、ねぇ・・・」という反応でした。

外部からの資金調達は非常に現実的な売上成長や見込みが必要ですからね。期待値だけで投資してくれるのは本当に初期の方々だけです。ちなみに改めて考えているビジネスモデルは?

ビジネスモデルですが、ユーザーが自主的に開催していた企画からヒントを得たなどの広告モデルを現在マーケティングや収益化も兼ねてトライアル中です。

無条件にどことでもなんでも、というわけでは当然ありませんが、これまで事業会社といくつかコラボ企画を行ってて、お題の楽曲がすぐに1000曲以上投稿された、なんて現象を生める事も確認されています。

なるほど。

このユーザーの拡散力を活かしたモデルを構築できると考えています。また、いわゆる審査的なものに大変苦しめられている部分もありますが(笑。もちろん広告以外の安定収益も検討と実装を進めており、ユーザー課金などもこれに含まれます。

それでギリギリの状況下で次の調達が決まったわけです。

本当に資金調達に関しては希望が出ては立ち消え、の連続でした。

そんな中、ほんとにひょんなキッカケなのですが、たまたまご紹介頂いた個人投資家の方から音楽事業会社をご紹介頂きました。そしてこの事業会社からの資金調達がトントン拍子に決まったのが2013年末です。正直思ってもみませんでした。

まあ、この辺りがスタートアップは奇跡だって言われる所以なんですよね。こればっかりは理屈で説明できない。生き残った結果、ダウンロード数が2014年に入って急に伸び始めるんですが、これはどういう理由ですか?

具体的に言うと2013年末から新規獲得がぐぐっと増えました。施策自体は単純でAppStore上の単語やスクショの最適化、言語のローカライズを行っただけで、6倍程度新規獲得数が増えました。今度はサービス側の開発が追いつかなくなりました。

なるほど、コアのユーザーはついていたので、開発資金が入ったおかげで改善が進み、それで伸びた、と。

2014年初期は成長スピードは高まりはじめたものの、まだエンジニアも充分には揃っていないため開発スピードが追いつかず、アクセスが集中すると落ちたりまともに使えないぐらい重くなったりしました。が、そこもひとり、またひとりとメンバーが増えてリソースが充当される中でどんどん解決していきましたね。

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nanaの開催するイベントに集うユーザーたち

2014年10月にAndroid版、12月にiOS版も改良版を出されました。

後の目標としては、まず今期中に500万DLを目指しています。それも国内のみではなく、海外でのユーザーをきちんと増やすことを考えています。「世界と歌おう」を実現するためにまずはアジア展開をメインで考えています。

結構急カーブを狙ってますね。

これ自体ストレッチな目標だとは自覚しています、が、目標は目線は高く持ちたい。もっと大きく成長させます。あともうひとつ、今年の8月に「nanaフェス」というリアルイベントを品川ステラボールで開催します。2013年の時の公式オフ会から始まって、2014年頭にnanaフェスvol.1という小さなライブイベントも開催したりと、リアルイベントをこれまでも行ってきました。

みなさん楽しそうに参加されてますよね。うちの共同編集のジュンヤも取材しって楽しそうだったと言ってました。

今後はこのリアルイベントも大きく成長させていきたいと思ってます。このイベントに来ればnanaの楽しさが体現されていて、一緒に歌うこと、一緒に音楽を演ること、そんな音楽の楽しさが全部詰まったイベントにしたいと思っています。

目標は武道館です。

そこで10000人で、歌って、演奏して、音楽を楽しむ。そんなリアルな場所も作りたいと考えています。初めてのライブが武道館でした、って面白くないですかね?(笑)

ネットはリアルあってのものですし、nanaが進んでる方向が間違っていないから支援者の方もついてくれてるんでしょう。非常に厳しい時期を乗り越えたからこそ、次の成長もぜひ乗り切ってください。今日はありがとうございました。

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