ビッグデータの活用は善か悪か?ーーリスクよりも利益に目を向けるべき理由

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Bill Franks氏はTeradataの最高分析責任者で、データ分析とビッグデータ分野のトレンドについて見解を述べている。『Taming The Big Data Tidal Wave』や、最近出版された2作目となる『The Analytics Revolution』の著者である。彼は講演も頻繁に行っており、International Institute for Analyticsの教員でもある。彼のURLは、www.bill-franks.com.

via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “Bob Mical“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

データが人をスパイするのではない、人が人をスパイするのだ。そんな単純な事実すら往々にして理解されにくい。米国家安全保障局(NSA)の件しかり、日常的なデータすら侵害され、テレビ番組でプライベートな会話も盗み聞きされてしまう。人々がデータ管理にますます不信感を抱くのも無理はない。アメリカ人の91%は消費者が企業による個人情報収集と利用を制御できないと感じており、61%はオンラインデータの管理を強化したいと思っている。

ソーシャルメディアで意図的に公開されているデータ、ウェブサイトやスマートフォンの履歴から知らずに収集されているデータにかかわらず、プライバシー、情報の自由、そして民主主義すら脅かされているのではないかという恐怖すら感じる。

進行中の訴訟問題やメディアで取り上げられるおぞましい脅威からすると、ビッグデータ分析はそもそも悪であるという結論に容易に達する。しかし本当にそうなのだろうか?

悪よりも善

私は最近、州議員や高官のグループとのミーティングがあり、コスト管理や詐欺行為の制限、ビッグデータの使用による州のサービスの効率的な提供や、さらに洗練されたデータ分析、そして更新データの管理プラットフォームなど、州をどのようにしてより良くしていくかについて議論をした。

プライバシーとデータの悪用についての問題が提起され激しい議論となった。議論の中心になったのは、データの悪用とそれによる権力乱用という点から、州が膨大なデータを収集することは良いことなのか否なのかというものであった。

私は、強力なデータがどれだけ莫大な利益をもたらすかについて例を挙げた。州のソーシャルワーカーが児童虐待の過去がある家族を監視する任務を受けたとしよう。新たなケースワーカーが、この家族と過去に行われたやりとりに関するデータを入手できない場合、子供たちは不必要にケガを負うか、最悪の場合死亡する羽目になるかもしれない。

例えば私の故郷であるジョージア州では、ケースワーカーが児童が直面する既知のリスクに関して必要な情報を持っていなかったことが原因で、児童が死亡する例が注目を集めている

とある州当局は、これらの州職員によって収集される高度でデリケートな情報について妥当な懸念を指摘した。情報を簡単に扱えることは、低賃金で技術のない職員でもプライベートでデリケートな情報をすぐにでも利用できることを意味する。こういった情報は明らかに悪用される可能性がある。

しかしながら、このような情報によって子供が救われるケースは、悪用される場合よりも上回っている。データにアクセスできる者が、データの悪用は解雇につながるだけでなく、与えられた信頼を裏切ったような場合には厳しく起訴されると理解していれば尚更のことだ。

これは自動車の運転に少し似ている。車を運転するときは常に自身の命を危険に晒している。自分が何も悪いことをしていなくても、今にも誰かの車が突っ込んで来て、死んでしまうかもしれない。そのようなことが起きるのは悲劇的であるが、私たちがそれを容認可能なリスクとみなすように、まれにしか起きないことである。

車があればあちこち自由に動き回ることができるという車がもたらしてくれる恩恵は、車を運転することのリスクを十分に補っているだろう。注意すれば十分に避けられたであろう毎年発生している多くの自動車事故死をなくすために、自動車走行を禁止することに真剣になる者はいない。社会全体が、自動車運転のリスクよりもそれがもたらす利益の方が大きいと判断したのだ。

ビッグデータとその分析に関しても同様のアプローチを採用する必要がある。ビッグデータを適切に利用することで得られる利益は膨大だ。どんなに注意しても、データは時に悪用されるだろう。私たちの目標は悪用の発生件数を最小限に抑え、ほとんどの人を思い止まらせるほどの重い刑罰を制定することである。

他の機関と同様に、州政府がビッグデータをほんの少しでもより有用な方法で利用するようになれば、私たちの暮らしは良くなるだろう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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