嫌われ者のEメール、それでも存続し続けるのはなぜだろう?

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Image Credit: Kevin Fitz
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Eメールは嫌われている。無駄な時間を使うし、スパムメールは多すぎる。知らない人が書き込める「やるべきことリスト」のようなものだ。見苦しいし、遅いし、当てにならない。スパムメールも多い…これは言及済みか。

Eメールについて最悪な点は、おそらくEメールのせいで嫌な人間になってしまうということだ。私はほどほどにいい人間だ。直接私に会った人なら誰でもそう言ってくれるだろう。しかしその私がEメールを送り始めると、要注意だ。私が思うに、完全に普通で冷静なメールでも、他の人に渡ったときには厳しく無神経なものになってしまうことが多いのだ。(私の自動返信も同様だ。それを受け取ると私の同僚たちはカンカンになる。)

これは私だけではない。一見当たり障りのないオフィス間のEメールスレッドがいきなり国境紛争かのごとくエスカレートし、お互いに激高している人たちを見たことがある。しかし、その人たちもお互い顔を合わせれば怒りと緊張はすぐに消えるのである。こういったシチュエーションでの問題は明らかだ。それは、Eメールが持つ正式な感じとニュアンスだ。この組み合わせは有毒になり得る。

人が WhatsApp、Facebook Messenger、Snapchat、Kik 等々のメッセージングアプリに逃げていっているのは無理もないことである。企業ユーザー間でも Slack が成長著しいのも当然のことである。社内コミュニケーションにEメールを使うのをやめ、楽しいプラットフォームで生産性があがり、情報共有しやすくなり、検索性が上がるのであれば、そしてGIFファイルと絵文字がサポートされるのであれば、誰にとっても良いことだからである。

これは疑いようのないことである。Eメールはひどいツールであり、壊れて散らかっているも同然であり、大きくなり続けるゴミの島であり、海の忘れられた場所でぐるぐる回る死んだ魚のようなものである。Eメールはなくなるべきだし、それは早ければ早いほど良い。

とは言いながらも次のようなことが起こる。

Eメールのない未来を想像してみよう。ほんの数年先には、メッセージングアプリが十分に浸透し、堂々と「Eメールのアカウントを削除しました」と言って、それがおかしいとも実験的とも思われないようになっているかもしれない。そしてさらに重要なことは、それができるようになっている暁には、Twitter の DM にせよ Facebook や Slack にせよ、あなたにとって必要な人々があなたに連絡を取れると確信しているということなのだ。

まず第一に、 Radicati Group によれば、メッセージングアプリの市場浸透度はユーザ数が25億人に到達したEメールとは比べものにならないほど少ないということである。従って、おそらくメッセージングアプリをいくつか持つ必要があるだろう。Facebook Messenger を使っている人もいれば、Snapchat を使っている人もいるだろうし、職場では Slack といった具合である。

次に、これらのメッセージングアプリにはそれぞれの流儀があって、それぞれのルールや独自のインターフェースがあるということだ。問題を過小評価しないよう、プライベートなダイレクトメッセージが全Twitterのフォロワーに間違って送られることがいかに頻繁に起きているか見てみよう。Twitter のCFOでさえその間違いを犯しており、そして誰が彼を責めることができようか。あまりに簡単に起こってしまうのである。ということで、Twitter、WhatsApp、Snapchat、そしてあなたがどんなアプリを使っていようとも、それぞれを正しい使い方で使っているか、そしてひどく恥ずかしい(またはビジネスに脅威を呼ぶような)間違いを犯さないよう、よくよく注意を払わなければならない。

第三に、これらのアプリはインターオペラビリティ(相互運用性)がないということである。それぞれのメッセージングアプリは独自のプラットフォームを持っており、モバイルデバイス上でも独自の通知があり、友達リストも独自のリストになっている。メッセージを Messenger から Kakao Talk 上の友達に送ることはできないし、決してできるようにならないだろう。これらのアプリの会社にとってメッセージプラットフォームを全面的に開放するインセンティブがないのである。

四つ目に、これらのプラットフォームは非常に使い勝手の良い基本的な機能を持っていないことが良くあるということだ。たとえば Slack を例にとると、いまだにスレッド別でメッセージを整理できない。誰かのポストに瞬時に返信できないのであれば、そのポストは忘れた方が良い。なぜなら他の誰かが別の会話を始めてしまい、皆、あなたが何に対して返信しているのかがわからなくなってしまうからである。(ワークアラウンドがあるのを知っているが、その場しのぎでしかない)フィルタやフォルダはどうだろうか。特定人物(たとえば上司)からのメッセージをフィルタし、高優先度の特別フォルダに分類しておくことは非常に役に立つことが多い。特に注意しておくことができるし、その人物からの他のメッセージ全てと一緒にセーブしておくことなどができる。

五つ目はスパムである。気付いていないかもしれないが、Gmail のユーザであれば、あからさまなスパムが受信箱に届くことはどんどん少なくなっているだろう。これは非常に洗練されたスパムフィルタリングのおかげである。Google は10年以上をかけてスパムのアルゴリズムを磨き上げてきており、非常に良く機能している。正反対なのが Twitter である。昔のX10カメラスパムやグリーンカード(訳者注:米国永住権)弁護士スパムを知らないのであれば、フォローしていないアカウントを含め誰でもあなたにダイレクトメッセージを送れるように設定してみるといい。Google のスパムのメカニズムが博士号レベルとすれば、Twitter のメカニズムはまだ幼稚園レベルである。

最後に、もう一つ別の角度から考慮することがある。マーケターの視点ではEメールは実際機能しており、ある推定(pdf)によればROIは38対1ということである。TwitterやSlackは自分自身がメッセージングプラットフォームであるにも関わらず、いまだに人々に毎日Eメールを送っているのには訳があるのだ。インターネットユーザの多くはいまだにEメールを企業からコンタクトされる手段として好んでおり、他のメディアに比べてエンゲージメントが断然高いため、企業も喜んで対応している。

そして、Eメールマーケティング企業は好調である。一例として Campaign Monitor を見てみると、昨年2億5,000万米ドルを調達している。

さて、次の点こそ真の問題だと議論することができるだろう。溢れかえるEメールマーケティングはEメールをマーケティングにしか役に立たないものにしているという点だ。しかし、私が考えるにEメールマーケティングが非常に効果的なのは、結局のところ人々がいまだにEメールの受信箱をとても気にしているからである。

Eメールについて文句を言うことはできる。ちゃちなEメールクライアントソフトや終わることのない会社のEメールスレッドに悩まされてもいる。決してEメールの受信箱の未読メール数がゼロに近づくこともない。

しかし、もし流行のメッセージングアプリが本当にEメールを葬り去ることができたとしても、皆あっという間にEメールが恋しくなるのではないかと思う。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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