加速する大手テック企業と科学者の連携——Googleがゲノム研究所との提携を発表

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via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “John Goode“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

Googleのクラウドベースのプラットフォームで科学者のコミュニティに大量のゲノム情報の保存、処理、管理サービスを提供しているGoogle Genemicsは、生物医学およびゲノム研究を行うBroad Institute(本拠:米国、マサチューセッツ)との提携を発表した。

この提携により、個人の遺伝子情報に基づいて、疾患の治療法をカスタマイズするための遺伝子分析を加速することが可能となる。しかし、これには膨大なデータを分析して様々な治療法が特定の遺伝子情報にどのように影響するかを調査する必要があり、クラウドコンピューティングの利用が不可欠となっている。

他にもAmazonやMicrosoftなどいくつかの大手テクノロジー企業が、この収益の見込まれるビジネスに参入しようとしているが、データの生成・保存はヘルスケア向上ソリューションの一環にすぎない。さらに、感覚でさえもデータとなる必要がある。Broad Instituteは、マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学と密に提携しており、言わばコンピュータの腕力を助ける科学の知力といったところだ。

大規模ゲノム情報は、癌、糖尿病、精神障害および他多くの疾患における科学の進歩を加速させています」とBroad Instituteの理事長兼ディレクターEric Lander氏は説明する。 「これらのデータを保存、分析し管理することが生物医学研究者にとって重要な課題となってきています。

本日発表されたブログ記事によると、GoogleとBroad Instituteは「生物医学の専門知識、優れた分析力、および大規模なコンピューティングインフラストラクチャを使用して生物医学研究を推進する」ツールを協力開発するという(編集部注:原文掲載6月24日)。

初の Google と Broad Institute の共同開発製品は、Broad Institute のGenome Analysis Toolkit(ゲノム分析ツールキット、GATK)を Google Cloud Platform に組み込み、サービスとして提供される予定だ。初心者に向けて、GATKソフトウェアは「高性能ゲノム配列解読データ」を分析し、既に一定期間中、無料で学校や他の非営利ユーザが利用できるようになっている。これまでに2万人以上のユーザがこのソフトウェアを通じてゲノムデータを処理している。

このサービスのGoogle Cloudベース版は初めは限定的に利用可能であるが、長期的にはどんな遺伝子研究者でもクラウドでデータを追加、保存、分析できるようにするのが狙いだ。

今日のニュースは、クラウドコンピューティング大企業が、トップ医療企業や研究所との協力を求めて結んできたパートナーシップの発表の最新のものだ。今年3月に、VentureBeat は Google が薬の発見のためにいかにビッグデータと機械学習を活用しているかをレポートした。Googleは異なる情報源から得たデータの活用が、いかに「多種多様な病気に有効な薬物治療」として機能を果たす化合物を見つけるのに役立つかということに関する論文を、米国スタンフォード大学と協力して発表した。

2週間前、Microsoftは医療プロジェクト「Project Premonition」を発表した。将来の病気の発生を防ぐために、巧妙な罠やドローンを使って蚊を採取し輸送するというものだ。Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health(ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院)などに所属する研究者たちと連携し、病気の特定などに取り組む。また、分子生物学や遺伝子の解読に関する最新の研究成果を利用して、科学者は自らの研究に関するクラウドベースのデータベースを作成できるようになる。

簡単に言えば、クラウドコンピューティング企業はインフラを提供し、研究者は分析手法を提供しているのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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