長年の通説を覆した、日経のFinancial Times買収【ゲスト寄稿】

本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。フランスのスタートアップ・ブログ Rude Baguette への寄稿を、同ブログおよび著者 Mark Bivens からの許諾を得て、翻訳転載した。(過去の寄稿

The Bridge has reproduced this from its original post on Rude Baguette under the approval from the blog and the story’s author Mark Bivens.


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先週木曜日、FT では何度にもわたって報道されているように、日本最大のメディア企業である日経は、Financial Times Group を Pearson から8.4億ポンド(約1,610億円)で買収する。ロンドンの世界的なニュース会社に対する、ギリギリのタイミングでのオファーはライバルらを驚かせ、 いくつかの通説を覆したと私は考えている。

通説その1: 「日本の企業は、ヨーロッパでの買収に興味がない」

ヨーロッパの人々が今でも、この通説に固執しているとは驚きだ。すでに数年前、NTTドコモ、ソフトバンク、楽天、リクルートによって、テック業界ではこれが事実ではないことが明らかになっている。だからこそ、私は、世界第3位の経済大国を見過ごさないよう、ヨーロッパのスタートアップに説明を続けているわけだ

通説その2: 「日経は外国企業を買収しない」

ヨーロッパのデジタルメディア企業の投資家の立場から、私は日経がイギリス拠点の世界情報誌 Monocle の株を取得したときから、日経に注目をし始めた。私がよく知る日本人らは、そのことをおかしいと指摘した。日経が海外を見続け、成長を伸ばしているのは大変うれしいことだ。

通説その3: 「オリジナルで良質のコンテンツは、もはやプレミアム感を生み出さない」

コンピュータによる自動広告買付がメディア分配の将来の形になるとの意見には一般的に賛同が得られているが、この場合、自動広告買付のプログラムは、広告の掲出先がオリジナルコンテンツなのか、アグリゲーション、キュレーション、コンテンツの再利用で生成されたサイトなのかは区別しない。日経は、より良質のニュースを、より高い広告料とマッチングさせる点で成功するだろう。

通説その4: 「日本の企業が買収に動くスピードは遅い」

日経は買収に触手を動かしていた競合、特にドイツの Axel Springer を出し抜き、最終的に最後の賭けに勝った。

通説その5: 「日本の報道機関は、(報道対象の)企業の力に対して気を遣い過ぎる」

この点については、今回の買収で間違いなくメリットを享受できる。FT が持つ無鉄砲な調査報道の文化に期待しよう。多くのメディアを賑わせたオリンパスの粉飾決算問題を明らかにしたのも FT だった。日本で次なる企業スキャンダルが起きたときに日経がより警戒されるメディアへとなる、分岐点になるのかもしれない。

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