ベンチャーキャピタルから資金調達すること、そして成長にフォーカスしすぎることの代償とは?

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Michael OrtnerはCapterraのCEOである。彼は1999年にCapterraを共同設立した。当時資金を投資してくれるVCを探していたが、見つけることができなかった。そのため顧客からの収入(と少しのクレジットカードローン)という古臭い方法で設立せざるを得なかった。しかし今ではそれが会社を設立して以来ベストな選択であったと設立者チームは感じている。

via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “Pictures of Money“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

最高のベンチャーキャピタルは、ソフトウェアスタートアップに対して資金以上のものを提供する。ビジネスの専門家は、経験、業界リーダーの人脈、会議の進め方を提供し、スタートアップを支援する。そういった非金銭的な助けなしにFacebookやJuno Therapeuticsのような企業が今日のような成功者になるのを目の当たりにすることはなかっただろう。

残念なことに、多くのベンチャーキャピタルはこうした利益と、多くのスタートアップの利益となっていた経営面における厳しさに注意を払っていない。その結果、テックスタートアップの長期的な生存能力を弱めてしまっている。明確に言えば、これはベンチャーキャピタルバブルとは別の問題である。バブルが懸念するのは、企業の真の価値と正確な企業評価を行うためのベンチャーキャピタルモデルの実行可能性についてである。

ここで話しているテーマは、企業が資金を獲得した後の経営方法に関するシステム上の問題だ。

決してこの1つの企業だけではないのだが、Boxは、皆が会社全体ではなく損益計算書に伸びる一本の成長ラインだけに目を光らせた結果、いかにして物事が悪い方向に行ってしまうのかを示した完璧な例である。2014年、Boxは1億米ドルを調達し企業価値がおよそ20億米ドルになった後、IPOを計画していた。

Boxが書類をまとめて申請すると、投資家たちは効果なく費やされたマーケティング費が膨大であったことに気づいた。それだけでなく、広告費は2年間で373%上昇し、同社収益の138%を占めていた。また、同時期に研究開発費は220%増加しているにもかかわらず、収益の37%しか占めていなかった。

Boxは最終的に市場に直面しIPOするまでのほぼ1年間、なんとか持ちこたえた。同社の株価は直ちに急上昇した。同社は初日の取引を終えた時点で27億米ドルで評価された。その後2週間にわたり、株価は昨年の評価額であった20億米ドルまで押し戻された。

私は証券コンサルタントではないし、同社の収益が10億や20億を超えた時にはおそらく経営手腕のある人材を見つけたのだと思うが、毎週何百万米ドルもの金額が流出するにつれて株価が下がり続けるのを見て誰も特には驚かなかっただろう。

私はBoxのあら探しをしたいわけではない。これは一見して、最近のあらゆるB2Bソフトウェア企業が直面している問題なのだ。Salesforceすらも今になって、年間収益が60億米ドルを突破した現在、ようやく辿り着いた黒字だ。

現金の投入によって、こうした企業の価値は中間圏まで押し上げることはできた。だが、顧客の獲得に効果を示したほどには、製品向上や収益化を進めることができていない。問題は、VCの目標と事業の目標との間に根本的なミスマッチが存在する点にある。VCはできるだけ早くビジネスをゼロから60まで引き上げようとする。

たとえば、ロケットを買って一番にシートベルトを締めたとしよう。それはそれでいい。だが、テックビジネスが目指すのは、急に曲がったり止まったりするような長い道路を走れるようになることであり、長距離走行ができる会社を築くことだ。このような障害をくぐり抜けて進める力を与えてくれるロケットに頼っても、そのロケットがなくなってしまったらどうしようもない。

VCがマーケティングと販売にいかに力を入れ過ぎているかを考えてみよう。VCがバックにいる企業が、起業後早い段階で製品向上に注力せず、収益の80~120%を販売とマーケティングに充てさせられたとしよう。

当然ながら、この仕組みでは企業は資金援助がなくなった途端、ビジネスの成熟を持続できなくなり、深刻なレイオフに向かっていくことになる。

SaaS企業がIPOに至り、年間収益が1億米ドル突破、5億米ドル突破、10億米ドルにまで到達してもなお黒字化に苦戦しているとしたら、何かがおかしいに違いない。ソフトウェア産業は利益率が高いはずだ。年間収益が9桁あれば、たとえ成長率が50%だとしても、収益の80~100%を販売とマーケティングに充てることはない。製品向上と既存顧客へのサービスへの注力が欠けていれば、結果的に崩壊の一途を辿ることになる。

なぜか。それは、自社の製品に一点注力しているソフトウェアスタートアップは必死すぎるからだ。

ソフトウェア起業家にとって、この問題には2つの解決法がある。1つ目は、VCの誘いを断ることだ。すると、ソフトウェア企業は以前より安く軌道に乗ることができる。長時間かけて製品ローンチに乗り出したい起業家にとっては、これがベストな選択だろう。すばらしい製品を開発して、良い顧客の前で披露できたら、良い口コミに頼ることができ、ビジネスをすばやく成長させることができる。

もしあなたの考える製品がシンプルに莫大な資金が必要でVCに頼るのであれば、VCが重大なリーダーシップや強力なコネクションネットワーク、経験をもたらしてくれるかを確認しておこう。あらゆるベストなVC・テック関係はこうした無形資産から成り立っている。Facebookが完璧な例だ。VCの助言がなければ、Zuckerberg氏は自前で役員を配置し、ビジネスを酷使し尽くしてしまっていただろう。ほとんどの大学生起業家も同様だろう。

だからと言って、貴重な資金を18ヶ月で使い切ってしまう必要はない。スタートアップなのだから、慎重になることが重要だ。会社が軌道に乗るのに何年も、ひょっとすると10年かそれ以上かかることもあるかもしれない。研究を怠らず、物事が予想よりも時間がかかったとしても柔軟に対応できるVCを見つけるようにしよう。

ほとんどの場合は、予想よりも長い時間がかかるものなのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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