急成長中の「Zenefits」がマーケティングにおいて犯した5つの過ち

SHARE:

Matt Epstein氏はZenefitsの従業員第1号で、現在はマーケティングVPの役職を務めている。Zenefitsに勤める前は、デジタルマーケティング代理店のDefinition 6においてシニアアカウントマネージャーとして、フォーチュン1000の企業クライアントのオンラインマーケティング戦略の立案と実行を支援した。過去、同氏はYouTubeでも著名だった – www.googlepleasehire.me.

via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “Heisenberg Media“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

数週間前、Lyftサービスを利用した。そこであるおしゃべりなドライバーにたまたま出会った。普段Lyftを利用する際はあまり会話をしないのだが、この時は自然に会話が始まり、私がある会議に行く途中であること、そこで私の大きなマーケティングの失敗についてプレゼンすることを告げた。するとドライバーはくすりと笑って、私にこう言った。「頭の良い者は自分の失敗から学び、賢い者は他人の失敗から学ぶ。」数分後目的地に到着し、ドライバーにプレゼンの冒頭メッセージをいただけたことを感謝して、車を降りた。

Zenefitsに関連する報道の多くは当社の驚くべき成長ぶりに注目するものだが、当社もあらゆる企業と同様、それなりに失敗もしてきた。Lyftドライバー氏からの受け売りだが、失敗から学ぶことができれば賢明だろう。

なので今回は、Zenefits設立初期にマーケティングでしでかした失敗トップ5を紹介しよう。

失敗その1:スケールしなかったことを止めてしまった

インキュベータ、当社の場合はY Combinatorだが、たいてい彼らは(初めは)スケールしないような製品を作ることによって、どこよりも早く市場に出ることをスタートアップに奨励する。マーケティングの観点から現実的に同じことを勧める人はいないが、なんとこれは有効な方法なのだ。

設立当初、私は動的なコンテンツとデータを融合させたマーケティングキャンペーンを進めていた。これは大成功を収め、初年度の収益に相当貢献した。それからある日、Parker Conrad氏(Zenefitsの設立者兼CEO)がやって来て、こう言った。「すばらしい!販売員を3人から10人に増やそう。早速このキャンペーンをスケールしなければ。全業界、全市場でやろう。」

私はすぐに、このキャンペーンをスケールすることは不可能だと話した。というのもそれには膨大な量のデータとカスタマイズが必要だからだ。そこで代わりに楽な道を選び、全業界に通用するような、あらかじめできあがった非動的コンテンツを使って「スケールする」キャンペーンを作り上げた。

数週間後、そのキャンペーンの成績が最悪だったことが判明した。なぜか?それはもはや、最初のキャンペーンを素晴らしいものにさせた要素を何も持っていなかったからだ。Parker氏がそれを知った時、大して奮起した様子もなく、1つの業界できっちりとスケールするまで今夜は残業するようにと私に命じた。私はその通りにし、それは非常に上手くいった。

2年半後、当社は100人以上から業界データを得て、社内製のカスタムアプリにそのデータを投入した。全てはこのキャンペーンを大規模に成功させるためだった。

レッスン1:まずはやってみる。規模を大きくするのは後で悩めば良い。

事業につながる可能性のある最もクリエイティブなことを行うべきである。事業がもしカップケーキを手書きの手紙と一緒に送ることなのであれば、それをすれば良い。大規模でそれをするにはどうしたら良いかということは、それから考えれば良い。経験を通じ、時間とお金とクリエイティビティがあれば、何事もスケールできると強く思うようになった。

目標というのは常に、上手くいく方法を見つけることであるべきで、心配事は後回しにすれば良い。そうでなければ、ビジネスを全く違うものに変え得るアイデアを逃してしまうことになるだろう。私もそうなりかけたことがある。

失敗その2: お互いの意見を聞きすぎてしまった

決して同僚の言うことを聞いてはいけない。それは大きな間違いである。以下にそれを説明しよう。

ある日、インバンドSDR(内勤営業)の数名をアウトバンドSDRに配置換えすることにして、アウトバンド営業開発が当社にとって有益な販売経路となるか見ることにした。

SDRもSDRのマネージャーも、私の上司も、皆その試みが上手くいったことを喜び、創出されたリード(見込み案件)の数を喧伝した。全員がハイタッチするように喜び、その成功に基づいて人材採用を始めたのは自然な成り行きだった。

しかしながら、何ヶ月もたった後データを調べた結果、それらによって創出された潜在顧客の30%が望まないセグメントに属する企業であることが判明した。これは雇用モデルを大きく失敗させた。2年間に渡り全く間違った成果数値に基づいて雇用を計画していたのである。これは全て社内の報告を信用したためであった。今では私が信じるのはただ一つ、データである。

レッスン2:D.R.E.A.M.(Data Rules Everything Around Me)- データこそが全てである。

チームとの会話は全てデータに始まりデータに終わるべきである。定性的データも常に参考になるが、定量的データこそが全てである、D.R.E.A.M.を念頭に運営しないということは、事実に基づいてではなく、どう感じるかということに基づいて意思決定するリスクを負うことになるのだ。(時に、感覚的な意思決定は非常に説得力を持つことがあるけれども。)

失敗その3:「現実的すぎる」目標を設定した

2013年の初めはZenefitsの初年度だったが、CEOのParker氏は200万米ドルのARR(年次経常収益)に目標設定した。結果は達成には少し届かなかった。2014年度の最初の営業日に、彼は会社に来て「素晴らしい!今年度のARRは1000万米ドルを目指そう」と言い、私も達成できるだろうと思ってそれに同意した。おそらく、これはかなり弱気な数字を会話していたと言える。

翌日、彼と非常に優秀な営業VPのSam Blond氏と私で会話した際、「やっぱり考え直したのだが、2000万米ドルを目指すことにしよう」と言った。私はその場でカッとなり、スーパーで泣きわめいている赤ん坊のようになった。私は無茶だと声を大にして拒絶した。物を投げさえした。そんなことができた企業を一社たりとも考えられなかったし、どうやったらそんな目標を達成できるのか戸惑っている20人の寄せ集めの社員を見渡した。

すると、面白いことが起こった。Parker氏が私をなだめるように、「もし仮に2000万ドルの成功を収められるとしたらどうだ? 理論的には何をする必要がある?」(私は不機嫌そうに)私がやるであろう全てのことをリストにした。すると彼は「じゃあ、それをやればいいじゃないか」と言ったのだ。15分ほどで、私はどのようにそれを成し遂げるかという激しい苦難の思いから解き放たれたのだ。

2014年、私たちは2000万ドルの成功を収めた。ただ目標に達しただけでなく、目標を超えることができたのだ。

レッスン3:目標を大きく設定する=現実の目標になる(「どうすればできる?」と自分自身に問うてみる)

目標の大きさに関わらず、たいていの場合その目標にほんの少し届かなかったり、あるいはほんの少し超える程度で終わってしまう。大きな目標を掲げ、その「大きな」という言葉を考えないでいると、より低く設定した「現実的な」目標よりも大きな成果が得られることが多い。1000万米ドルを少々超えるより、2000万米ドルに少々満たない方がましだ。

プレッシャーに押しつぶされそうな時、しかも後戻りできない状況で、人は普段できないことをやってのけてしまう。目標が実現不可能なように思えても、自身に問いかけるのだ。「もしこの目標が達成できるとすれば?」と。自分にはできそうにないことやプレッシャーのない状態ではやってみようと思わないことまでもが可能になるのだ。

失敗その4:人材が必要になってから雇用した

以前、当社はターゲットマーケティングという大きなキャンペーンを展開していた。いずれはいくらかの人手が必要になるだろうことはわかっていた。その時点では、私一人でなんとかやれていたので、そのままの状態を続け、「本当に」手助けが必要になったら人を雇えばいいと考えていた。

しかし本当に人が必要になった時には手遅れだった。適任の候補を探すのに数ヶ月かかり、雇った人たちが仕事を始められるようになるまで数週間かかり、自分一人でまともに仕事ができるようになるまでさらに数ヶ月かかった。その頃には、控えめに言っても私たちはかなりまずい状況にあった。キャンペーンはまるまる1四半期遅れ、それに伴う利益もすべて先延ばしとなった。

レッスン4:必要になる3~6ヶ月前には雇用する。

相応しい候補を探すのにだいたい2~3か月、交渉にも時間を要し、前雇用主に2週間前通告も必要になる。ようやくその椅子に座ってスタート地点にたってからも、準備をし、業務をこなせるようになるには時間がかかる。

スタートアップを設立したばかりでトラクションを示したい際には、早い段階での雇用が会社の運命を左右するだろう。実際に必要になった時、誰もその椅子にいないというのは非常にまずい事態ということだ。

失敗その5:成功事例にこだわる

以前、チームの誰もが夢中になったマーケティングキャンペーンを立ち上げた。すべてのSaaSシステムメトリックスは完璧で、Xを実行するとXのサンプルが返ってきた。シンプルな計算だ。回数を重ねれば、さらに多くの潜在顧客のサンプルを得られた。

この一つのキャンペーンに私自身とチームの力を注ぎ始めた。結果的に、そのキャンペーンは非常に成長し成功を収め、実際に私の持てる時間の90%を費やすことになった。しかしながら、全く気にならなかった。ゴールは目前だったのだから!

しかし、Parker氏に新たな10倍型の目標値を設定されると、すぐに行き詰まってしまった。10倍に設定された目標を達成できず、また、この目標値を達成できそうな別の案件もなかった。Parker氏が10倍型の目標値を設定してから4ヶ月後にその方法が見つかったが、期限から3ヶ月経っていた。

私は既存の方策が機能していたので、そればかりに目を向け、新しいものを全く探そうとはしていなかったのだ。

レッスン5:マーケティングとは転がる石

デマンドジェネレーションマーケティングという仕事は、上手くいく方法を探すことに他ならない。1つ、2つ、3つ、あるいは1ダース分の手段を。実現の可能性が見える手段を探し当てたら、すぐさまその方法に責任者を据え、次の方法を探し始めるのだ。たとえCMOであれ、マーケティングVPであれ、成長戦略VPであれ、新しい方法に関しては常に石を転がして苔がつかないか試す必要があるのだ。

現在、Zenefitsマーケティングチームは成長を続け、一度に20の異なる方法を使うこともできる。良質なマーケティングとは、1つの巨大なボールではなく、20個のボールを常に空中で維持していることなのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録