失敗した人にこそ起業のチャンスを−−MAKOTOと福島銀行が再チャレンジに特化した投資ファンドを設立

by Eguchi Shintaro Eguchi Shintaro on 2015.8.21

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この数年で、起業を支援する環境が整ってきた。サポートする態勢だけでなく、独立系VCがいくつも誕生し、CVCも積極的に動き出すなど、出資の環境も充実してきた。

起業を後押しする活動は活発だが、起業したすべての人が成功するとは限らない。多くの出資を集めたスタートアップでさえも、本当に成功するのはほんの僅かだ。起業を勧める一方、起業に失敗し倒産した人がその後どういった展開をするのかということは日本ではあまり話を聞かない。気がついたら、そっとサービスを閉じ、静かに会社を畳むなど幕を閉じることがしばしある。

日本では、失敗したものに対して厳しい目を向け、一度でも会社経営に失敗すると再チャレンジがしにくい社会だとも言われている。事実、再チャレンジを果たせる率は13%(2002年中小企業白書)と言われている。しかし、海外では失敗した人にこそ新たなチャンスを与えるべき、という考えがある。起業家として世界的にも大きな成功を果たした人物が、実はいくつもの挫折を味わったことによってその地位を獲得したという逸話もある。

「日本に失敗という経験を積んだ人に対する再チャレンジを支援する環境をつくり、経営を担える人材を活かす社会にしたい」−−そんな思いで本日設立したのが「福活ファンド」(正式名称:福活ファンド投資事業有限責任組合)だ。東北で活動する起業家へのサポートや投資を行う一般社団法人MAKOTOをGPに、LPに福島銀行によって作られた運用期間10年のファンドで、出資総額は10億円、1件あたり最大1億円の投資を想定している。福活ファンドの応募の条件は、倒産等の経験があり、これから再起を計画中、もしくはすでに最起業した経営者、まだ倒産等をしていないが企業が実質的に倒産状態であり、再起を計画中の経営者が応募対象だ。

「アメリカは、いくつもの失敗や挫折を経験し、そこから這い上がった人たちがチャンスを掴んでいる。いわば百戦錬磨の人たちです。対して、日本は再起の機会が少ないために、多くの起業は初心者だらけ。失敗した人が再チャレンジできないために、人材が育たない。それではいつまでも世界に通用する起業家も生まれません。貴重な人材を見捨てず、一回失敗した人を新たに育てる場が必要だと、2010年頃からこの再チャレンジファンドの構想をしていました」

そう話すのは、一般社団法人MAKOTO代表理事の竹井智宏氏だ。地元VCに在籍した竹井氏は、震災をきっかけにMAKOTOとして独立。独自の起業家支援活動を展開してきた。独立後、震災以前から構想した再チャレンジファンドの設立に向けて動き出していたが、企画に賛同する出資者は少なく、設立は難航したという。

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一般社団法人MAKOTO代表理事の竹井智宏氏

しかし、2014年12月に福島銀行と出会い物事は進み始めた。福島銀行は、震災を経た福島のこれからの産業振興に対する危機意識を強く持っていた。多くの起業家を生み出し、社会全体の活力にしたいという竹井氏の考えに共通点を見出し、再チャレンジ支援に賛同。今回の福活ファンド設立となった。

「福活ファンドでは、応募条件をみたした企業が、福島県内に設立、又は移転する法人に対して投資を行うことを条件としています。福島に多様な人材を呼び込み、全国で再チャレンジの人たちを集め、地域を、そして日本を活性化できる場にしたいと考えています」(竹井氏)

福島銀行のサポートによって生まれた今回の福活ファンド。すでに、福島では震災を機にエネルギーやロボット開発、高齢化に向けた医療や介護の課題を解決する起業支援もある。それらと連動しながら社会全体の課題解決に取り組んでいくこともできる。新たな社会課題解決に向けた起業家を期待するという。

また、竹井氏は福島だけにとどまらず、日本に再チャレンジの仕組みをつくることそのものに意義があると考えているという。

「福島では、東日本大震災を経て這い上がる精神をもっています。ぜひ、福島で再チャレンジをしてほしい。同時に、何度でもチャンスの機会が日本にあると伝えていきたいです。起業しようとする人に対して再チャレンジの道が残されているということは、勇気づけられるはず。まずは福島のような課題先進地に起業家を集め、日本、そして世界に通じる起業家を輩出していきたいです。まずは日本でも珍しいこのファンドを成功させ、次に第二、第三の再チャレンジを支援する環境をつくっていきたいと考えています」(竹井氏)

科学者のウィリアム・ヒューウェル氏は「すべての失敗は成功への一歩である。」と話し、アリアナ・ハフィントン氏も、「失敗は成功の反対ではなく、その一部だ。唯一ほんとうの失敗とはチャレンジしなかった時だ。」という言葉を残している。起業というチャンスは、若くて新しい人たちだけのものではない。いくつもの失敗を経験した人だからこそ分かる起業の苦労や物事に対する深い洞察や考えがある。

再チャレンジに興味がある人は、ぜひ福活ファンドに問い合わせをしてみてほしい。日本でも、失敗したら終わりではなく、失敗こそ次の成功への道であり、失敗した人にもいくつものチャンスが巡ってくる文化が生まれる社会になってほしいと筆者も考えている。

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