ハイキングに出かけると、すごい山道を自転車を降りることなく黙々と登って行くサイクリストを見かけます。自分だったら永遠に感じてしまうだろうな。どんなことを考えて登ってるんだろうなど観察しているわけですが。さて、そんなサイクリストの心強いパートナーになってくれるのが、AR(拡張現実)を搭載したサイクリング用グラス「SENTH IN1」です。
中国北京の開発チームINSENTHが手掛けるこの製品は、アクティビティ・トラッキング、HDビデオ、ナビゲーションなどに対応し、利用者のサイクリング体験をよりスムーズにしてくれるもの。現在、クラウドファンディングサイト「Indiegogo」でプロジェクトを展開しています。既に、目標到達額40万ドルの96%に当たる約38万ドルを調達しています(8月19日時点)。
リング状のメニューを親指一本で操作
サイクリストは、SENTH IN1を着用し、親指で操作するようにできた「Thumb Controller」という小さなデバイスを自転車のハンドルに装着。走り始めると、サイクリングの状況をリアルタイムに教えてくれます。例えば、走行距離、走行時間、平均スピード、消費カロリーなどが、ARグラスに映し出されます。また、以下の写真のように分岐点に差し掛かると道案内も。
Thumb Controllerを押下すると、目の前にリング状のメニューが登場します。好きな音楽をかけたり、「Please call XXX」と話しかけることで電話をかけることも。時計周りで電話を切り、反時計回りで電話を受けられます。また、中央のボタンで、写真や動画を撮ることもできるそう。
目的地までの最適なルートも提示してくれますが、独自にルートを用意したり、それを周囲の人に共有することも可能。自分と友人のルートを同じ地図上に表示してくれるため、電話で確認したりすることなくスムーズに相手の現在地に向かうことができます。
4年間のAR研究を活かしたプロダクトを
2012年9月にSENTH IN1のアイディアを着想し、最初のプロトタイプができたのは2014年1月のこと。4つのプロトタイプを経て、今に至ります。
開発当初、親指コントローラーは存在せず、ARグラスに触れてメニューを選ぶような設計でした。実際に試してみた結果、自転車走行中にその操作は危険であると判断。自転車のハンドルに指を置く感覚のThumb Controllerを開発し、リング状のUIを採用することでその課題を解決しました。
今回取材したのは、アルゴリズムエンジニアで同社ファウンダーのJiwenさん。ARを研究する中で、ARを使ったアウトドアゲームなどを開発してきました。そんな彼の趣味は、サイクリング。月に2回ほど、北京ダウンタウンから郊外まで足を運びます。
「僕たちのスタートアップは、ARアルゴリズムとARグラスにフォーカスし、プロ向けのARグラスも開発していました。ここまでブートストラップで来ましたが資金が足りなくなり、研究を活かす形で新しいプロダクトを開発しようとたどり着いたのがSENTH IN1です。自分を含むチームメンバーがサイクリストであることが開発に役立っています」(Jiwenさん)
Indiegogoは96%の達成率
既に、大量生産に対応できる工場は見つかっており、あとは資金を集めるだけ。まだまだこれから市場が形成されていく段階にあるスマートグラスですが、スポーツと組み合わせることで実用性が増し、チャンスがあると見込んでいます。
個人的には、ちょっと機能が盛られ過ぎで使いこなせそうですが、今までにないサイクリング体験を実現してくれるのはきっとその通り。残すところ17日で、Indiegogoのプロジェクト達成率が96%であることからもサイクリストからの高い期待値が見て取れます。SENTH IN1は、199ドル〜事前予約できます。
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