テクノロジー×不動産領域の進化を目指してーーツクルバと慶應義塾大学熊坂研がデータマイニングの共同研究を開始

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左から:ツクルバ CCO 中村真広氏、慶應義塾大学環境情報学部 熊坂賢次教授、ツクルバCEO 村上浩輝氏
左から:ツクルバ CCO 中村真広氏、慶應義塾大学環境情報学部 熊坂賢次教授、ツクルバCEO 村上浩輝氏

今週、東京の中古住宅を扱うオンラインマーケット「cowcamo(カウカモ)」を運営するツクルバと、慶應義塾大学熊坂賢次研究室が、ライフスタイル領域におけるデータマイニングのビジネス活用について共同研究を開始すると発表した。

熊坂賢次氏は、慶應義塾大学環境情報学部教授を務める社会学者。慶應義塾大学熊坂賢次研究室は、ネットワーク社会論 、ライフスタイル論 、ネットワーク調査法を専門とする研究室だ。

熊坂研はインターネットの登場により大きくライフスタイルが変化し、収集できる情報量が膨大になったことで社会調査の手法が大きく変わることを予見し、これまでにも先進的な取り組みを行ってきた。2000年には、社会調査サイト「iMap.gr.jp」を開発。これは従来の社会調査手法では、調査項目は多くても50から100だったものを、1,000件以上の回答をしてもらうようにした。

「iMap.gr.jp」により、収集可能なデータは増えたものの、膨大なデータを集めただけでは何もわからない。自然と、熊坂研ではビッグデータを解析するためのツールの開発を行うようになった。

熊坂教授「データは膨大に転がっているけれども、集まるデータは抽象度や数もバラバラで、機械では単純に答えを出すことが難しい領域です。データをクリーニングして、構造化していく必要がある。そのためには、人間の解釈が重要になります。人間の解釈と機械の合理性を合わせていく、マンマシンシステムが社会調査においても大切です。」

熊坂教授が例を出したのは、Twitterのアイコンから人の分析をする際にはどう考えるかということだ。たとえば、「マイルドヤンキー」について分析したい場合、まず「イオンモール」について投稿しているアカウントを収集する。これではかなり様々な投稿が含まれてしまうため、ユーザの特徴で絞込をかける。こうした解釈を加えていくのが人間の役割だ。

ツクルバと熊坂研のつながりは、同研究室の卒業生がツクルバのチーフエンジニアを務めていたことで生まれた。cowcamoをリリースし、本格的にテクノロジーに注力していこうと考えていたツクルバと、不動産や住まいといった激しい変化が予測されるライフスタイル領域の研究に関心を持っていた熊坂研はすぐに意気投合し、今回の共同研究へと至った。

cowcamo

中村氏「アウトドア好き、ファッション好き、など人々はそれぞれキャラクターがあります。キャラクターを持った人たちがどういう街に住みたいと考えているのか。人とライフスタイルの関係、そして物件や街との関係をどういったツールを用いて紡ぎ出していくかに挑戦していきたいと思います。人々の行動をデータ化していく流れがさらに進んでいくと考えられるので、行動を全部モニタリングしたときに、行動パターンからおすすめのエリアや物件がレコメンドできるようになるかもしれません。」

村上氏「不動産を探す際に、ユーザが探したいと考え、さあどうしよう、という状況になっている時点で、テクノロジーからすると古いのだと思います。ユーザが物件情報がほしいと思ったときに、マッチした物件情報が来る。ユーザが意識して検索しなくても、常に情報の検索は行われている、そんな状態。時代はこういった方向に向かうでしょうし、自分たちでもこうしたサービスが提供できれば面白いと考えています。」

ニュースやコマース等では起こり始めている流れが、今後は生活における様々な場面でも見られるようになるのではないか、そう考えているという。ただ、不動産に関連するものとなると、ユーザにとってもかなり重要な情報となる。それをしっかりとレコメンドしていくためには、テクノロジーの力を高めていく必要がある。

ツクルバは今年の3月に佐藤裕介氏がアドバイザーとして就任している他、エンジニアの採用を強化するなど、テクノロジー領域の強化を進めている。

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今回の共同研究も、テクノロジーの会社へとシフトするためには大切なアクションだ。共同研究の一環としては、すでにインターネット上に存在している不動産関連情報のクローリングを行い、データの収集を始めている。

今年の11月に慶應義塾大学SFC研究所が主催する「SFC Open Research Forum 2015」に熊坂研が出展するブース内にて、ツクルバとの共同研究の経過も発表される予定だ。

この共同研究から、どんなことが判明し、どういったツールが生まれてくるのだろうか。

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