Jeffrey Paine氏とWillson Cuaca氏、アジアを代表する2人のベンチャーキャピタリストが語る起業家の心得【ゲスト寄稿】

cycircl-150x150本稿は、Choon Yan (CY) Tan 氏による寄稿である。なお、英語のオリジナル記事は Startup Blueprint Bulletin で発表された。

Choon Yan (CY) Tan 氏は、PayPal および Braintree のアジア太平洋におけるスタートアップ・アクセラレータ、インキュベータ活動を牽引している。銀行テクノロジーの経験を持つほか、Google では、Android および Chrome 製品のデータ分析の専門知識をもとに、カリフォルニアで Google のサプライチェーン・インテグレーション・チームを牽引していた。

日本の Open Network Lab、マレーシアの MaGIC、シンガポールの Startup Bootcamp などの主要アクセラレータで決済最適化のメンター、Echelon や TechCrunch などのアジアのスタートアップ・カンファレンスでスピーカーを務めている。


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Golden Gate Ventures (GGV)East Ventures (EV) は共にシンガポールを拠点とするVCであり、起業家らがメンターシップ、人材獲得、世界ネットワークを通じて買収される機会を模索する点で、頼りにしている存在だ。GGV と EV の両者とは、1年前にアジア太平洋地域で Startup BluePrint プログラムがローンチされて以来、協力関係にある。

私は GGV の創業パートナー Jeffrey Paine 氏と、EV の共同創業マネージングパートナー Willson Cuaca 氏と、スタートアップ・コミュニティの支援方法について、それぞれ話をする機会を持った。

Golden Gate Ventures

Jeffrey はシンガポールで Founder Institute (FI) がローンチした2010年のことを振り返り、当時はスタートアップ・シーンにメンターがほとんどいなかったと語った。東南アジアの FI に参画するスタートアップ向けにメンターとして Vinnie Lauria の支援が得られるようになってからは、アメリカで資金調達する方法を教えてもらおうと、多くの起業家が Jeffrey や Vinnie に連絡してくるようになった。

East Ventures

EV は Willson Cuaca 氏、衛藤バタラ氏、松山太河氏、Chandra Tjan 氏の4人によって2010年に共同設立された。衛藤氏は Willson の高校時代の同級生であり、松山氏は衛藤氏が共同設立したミクシィに投資家として参加したのを機につながった。

5年前、2,200万人ものアクティブなインターネット・ユーザがいながら、電子サービスの普及率の低いインドネシアに、手のつけられていない分野の可能性が非常に大きなものであることに気づいた。同社は迅速に投資ファンドを組成し、あらゆる分野に50万ドル未満を投資、後続ラウンドにも参加する。主には、Eコマースやその周辺サービスに投資してきた。

起業家への命題

Jeffrey や Willson にとって、毎年数千件にもおよぶ投資の打診や推薦を受けるのは、ごく当然なことだ。未踏の Next Big Thing を求めて、彼らは実に多くの起業家と対話している。荒削りの素材からより高い位置へとビジネスを築き上げる起業家の特性について、Jeffrey と Willson はそれぞれ命題を持っている。

1. 自分らしくあるべき

起業家にとっても、ベンチャーキャピタリストにとっても、最初のミーティングは、次の対話につながるような雰囲気で行うべきだ。Willson は、起業家と投資家のミーティングについて、次のような期待を述べている。

起業家は起業家らしくあってほしい。起業に至った話、ユーザの獲得について話してほしい。プロダクトはあまり重要ではないし、多くの場合、初期段階は、スタートアップはプロダクトを持っていない。最も重要なのは、正直さ、粘り強さ、ビジョンを持っているかなど、起業家の特徴だ。騙したり、嘘をついたり、デタラメを言ったりしてはいけない。簡単にバレてしまうのだから。

2. 形のあるものに着目

Willson とは対照的に、Jeffrey は最初のミーティングで、形のあるものにフォーカスすると語っている。

プライベート・ベータ版であれ、一般公開されているものであれ、最初の関門となるのはプロトタイプだ。それを見れば、起業チームがエグゼキュートしようとしているものがわかる。私のファンドの調査では、東南アジアのスタートアップのトップ35社の97%は、既に存在するサービスのクローンだ。したがって、プレゼン資料やナプキンに描かれたアイデアよりも、エグゼキューションこそが重要、ということになる。

3. リソースが豊かであることを見せるべき

Jeffrey も Willson も、リソースが豊かな起業家に関心を持っていると述べた。

起業家には、やろうとする事業分野の知識において、他の人が知らないくらいのアドバンテージが必要だ。その事業分野の出身であるか、調査を深めて、その分野のプレーヤー、困難さ、現在の状況、変化させられるものを知っている必要がある。リソースが豊かな起業家は、自らの仮説を実証しようと、一般人が尋ねもしないような変わった質問を投げかけてくるものだ。(Jeffrey)

偉大な起業家は、大きな問題を解決できるスキルに転じるような、極めて高いリソースを持っている。彼らは遠慮したりせず、知識が得られればすぐに前へ進んで行く。(Willson)

4. 失敗を恐れるな

成功していない起業家はそのことを隠したがる。失敗を失敗だと認識していないから、隠そうとするんだ。これでは起業家を支援するのは難しいし、起業家が正直ではないという点で、私が最初に言った話にもつながる。問題を置き去りにしてビジネスの決断が優柔不断になり、成果が出せていない起業家は実に多い。(Willson)

Jeffrey は、一つのことに集中しないことが致命的な間違いだと指摘する。

起業家は新しいことを始めるときにはコミットするべきで、100%それに集中するべきだ。リスクを回避しようと、主ではないことを複数同時に手掛けようとする人がほとんとだ。(Jeffrey)

5. 小さく考え、大きく目指す

Willson は、十分に大きな市場に集中すべきこと、また、起業家のビジネスをスケールさせる能力が重要だと語った。

地域拡大よりも前に、まず寡占できる単一の大きな市場をターゲットにするべきだ。Rocket Internet のように、初期段階で複数市場にローンチするのは得策ではない。非常に大きな資金が必要になるからだ。そして第二に、知識を急速に増やすことは、起業家にとって、過去の経験よりも重要だ。(Willson)

起業家やチームは、プロダクトの数値、マーケティング、ディストリビューションについて、知識が豊富で抜きん出ているべきだ。分析ツールも理解している必要がある。(Jeffrey)

Jeffrey や Willson、彼らのチームにビジネスアイデアをピッチしたいなら、次のことに注意してほしい。

  • 投資家があなたのプランにさらなる努力を求めても、自信を失わないでほしい。定期的な投資家との連絡を通じて、ベンチャーキャピタリストとの関係継続を求めよう。
  • 自分の発した言葉には正直かつ忠実であれ。
  • Jeffrey や GGV のチームにとって、ウイスキーは大好きな飲み物である。

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