米国の近年のEdTech企業の資金調達の流れについて、解説します【ウェビナー】

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Image by Per Gosche on Flickr
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前回Ednityの佐藤さんになぜ米国でこれだけ教育系スタートアップが生まれるのか、社会的背景などをもとに解説をいただきました。今回は、その続きとして実際の米国のEdTech市場における資金調達の動きなどについて解説いただきます。

聞き手の江口
こんにちは。ということで、前回に引き続き佐藤さんよろしくお願いいたします。
Ednityの佐藤さん
よろしくお願いいたします。
聞き手の江口
前回は、アメリカで教育系のサービスが生まれる社会的な背景について伺いました。所得格差と教育格差を埋めるためにテクノロジーへの理解や浸透がある、というお話でしたね。
Ednityの佐藤さん
そうですね。良くも悪くもアメリカという国を体現しているものだと思います。
聞き手の江口
今回は、それらも踏まえながら、アメリカでの昨今のEdTech市場全体の動きについて解説をお願いします。
Ednityの佐藤さん
はい。学力格差の大きさとコモン・コアの発足によって、アメリカでは教育分野のスタートアップが多数生まれてくるようになりました。それらを踏まえて、特に公教育向けのサービスを4つに分類してみました。

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Ednityの佐藤さん
今回は詳細は省きますが、上図の「Curricula」にあたるデジタル教材分野が市場全体の3分の1を占めています。アメリカでは、こうした教材ベンチャーが多いのですが、その背景にコモン・コアができた背景と似ています。
聞き手の江口
どういうことですか?
Ednityの佐藤さん
アメリカでは、日本のような教科書検定がなく州や学区毎に教科書が選定できます。また、地方分権のため教育現場が予算に対して強い権限を持っています。ということは、スタートアップのような新興企業が作ったサービスであっても、教育現場の人たちが気に入れば導入がスムーズにいくため、スタートアップであっても売上が見込みやすく、ビジネスモデルの確度が高い。
聞き手の江口
なるほど。前回では、地方分権でローカルの権限が強いがゆえに学力格差が起きると指摘していましたが、同時に新しいサービスを受け入れやすい土壌があるってことなんですね。

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Ednityの佐藤さん
そうしたさまざまな環境から、アメリカにおけるEdTech市場は盛り上がっており、(グラフはアメリカのみではなくグローバルでのデータですが)2014年のEdTech企業の資金調達額は前年比で70%増、2015年も増加傾向にあります。
聞き手の江口
グラフを見ても、年々増えていますね!
Ednityの佐藤さん
また、資金調達だけでなく、M&A件数や規模も増加しています。2012年〜2014年の3年間のM&Aの内容を調べたところ、2014年のM&Aの規模は前年比で25%増加しています。

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Ednityの佐藤さん
シリコンバレーのEdTechに特化したシードアクセラレーターのImagine K12がスタートしたのが2011年の夏です。EdTechの資金調達額が増加していることは、この頃に生まれたスタートアップが順調に成長しているからだと思います。事実、Imagine K12の1期生であるremindは合計で5950万ドル、ClassDojoは合計で1001万ドルを調達しています。
聞き手の江口
アメリカにおけるここ近年のEdTechの盛り上がりを通じて、大きな市場をつくりあげていることが実感できますね。
Ednityの佐藤さん
教育分野のスタートアップが生まれているだけでなく、多額の資金がスタートアップに流れ込んで成長を支えています。
聞き手の江口
ということは、さまざまなVCがこの領域に参入している、ということですか?
Ednityの佐藤さん
はい。Imagine K12だけではなく、NewSchools Venture Fund、Learn Capital、Rethink Educationといった、EdTechに特化したVCの存在も大きいです。同時に、アメリカで教育系スタートアップが生態系を作るためには公教育に切り込む必要があり、市場の3分の1を占めるデジタル教材系スタートアップがその鍵を握っていると思います。その背景には、先にもお伝えしたように教育格差を埋めるために生徒の基礎学力向上が課題だからです。
聞き手の江口
お話を伺っていると、アメリカにおいてはいかに教育格差は是正するかが問われていますね。同時に、スタンフォード大学とかハーバード大学など、トップレベルの大学があるのもアメリカです。
Ednityの佐藤さん
そうですね。アメリカはやはり教育格差が激しく、全米の基礎学力を底上げしていくという課題を解決するためにデジタル教材ベンチャーが多く誕生しています。 対して、日本の場合は基礎学力については課題とされていないかもしれません。
聞き手の江口
日本は、よくも悪くも全体としての平均は高い印象があります。

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Ednityの佐藤さん
OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に3年ごとに実施されるPISA(15歳児の学習到達度調査)のデータを見てみると、「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」のそれぞれで日本はOECD加盟国の中で数学的リテラシーが2位、読解力が1位、科学的リテラシーが1位と総合で1位という成績でした。
聞き手の江口
反対に、アメリカは意外と下のほうなんですね。
Ednityの佐藤さん
アメリカの場合、OECD加盟国の中で読解力はぎりぎり平均を上回りましたが、数学的リテラシーと科学的リテラシーに関しては平均以下という結果です。アメリカのGDPの大きさなどを考慮すると、感覚的にもアメリカの学力格差が大きいことが理解できるかと思います。
聞き手の江口
たしかに、格差があることによって平均が下がりますしね。
Ednityの佐藤さん
つまり、アメリカではPISAでも測定されるような基礎学力の成績を引き上げることが、最重要課題だということがここでもみてとれます。 逆に、トップ層の引き上げはハーバード大などの世界的にも評価の高い大学があったり、MOOCsの充実、シリコンバレーなどの起業の生態系環境など十分に揃っています。こうした多様な姿があるのがまさにアメリカの形といえます。
聞き手の江口
自治体や学校単位で独自の教育プログラムが作れるということが、よくも悪くも教育レベルの差を作るってことですね。
Ednityの佐藤さん
日本の場合は、学習指導要領の改訂や「アクティブ・ラーニング」という言葉の登場にも表れていますが、課題とされているのは単なる教科・科目の基礎学力の向上ではなく知識を用いていかに主体的に課題を解決していけるか、実社会で活躍していくために必要な普遍的なスキルの獲得といった、高次元の課題に直面しているといえます。それらのスキルは非常に抽象的で、効果測定も数値評価も極めて困難です。ですが、現在行われている日本の教育改革は、この難易度の高い課題の解決に取り組もうとしています。
聞き手の江口
自立した思考と行動を持って、主体的に行動する人を育てることが日本に求められている、ということですね。
Ednityの佐藤さん
他にも、日本の公教育の課題は、教員の労働環境や校務に関する課題もあります。なので、アメリカと日本とでは教育における背景や課題が違うので、「アメリカでイケてる教育ベンチャーのビジネスモデルを日本に持っていきたい」とコピーキャットしても難しい、ということを理解しなければいけません。他の分野と比べて、教育分野はそれぞれの国によって事情が大きく異なる分野なので、それぞれの国ごとに応じた展開がより求められると思います。
聞き手の江口
なるほど。日本が抱えている課題をきちんと向き合うことで、日本独自のEdTechが生まれる、ということですね。アメリカのEdTechの市場だけでなく日本とアメリカが抱える課題の違いについても触れていただきました。本日はありがとうございました。
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