メンバーズが旧・アトコレを数億円で買収、4年の時を経て学生起業家たちは次の道へ進む

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数人の学生たちが集まって作ったスタートアップが、4年の時を経て、新しいステージに向かうことになった。

デジタルマーケティングを手がけるメンバーズ【証券コード:2130】は9月29日、「The New Classic」「Banq」などのメディアを運営するマイナースタジオ(旧社名:アトコレ)の株式を取得し、連結子会社化することを発表した。株式譲渡の日程は10月1日を予定しており、取得にかかる費用は非公開。なお、いくつかの関係者への取材から、買収金額は数億円規模となるようだ。

これに伴い、マイナースタジオとメンバーズは共同でインバウンド(訪日外国人旅行者)向けのデジタルマーケティング支援事業を強化し、新たなメディアを立ち上げる予定としている。

学生起業家たちの挑戦

さて、アトコレの名前を知らない人でも、THE BRIDGEの読者ならクラウドワークスやMeryといったサービス名は聞いたことがあるだろう。クラウドワークスは昨年にマザーズへ上場を果たし、Meryを運営するペロリはディー・エヌ・エーに高い評価を得て子会社化の道を選択した。

成田修造、中川綾太郎、石田健。

4年前、学生だったこの3人が中心となってスタートアップしたサービス、それがアトコレだった。2011年9月のことだ。

当時、私はまだサービスが始まっているかいないかぐらいのタイミングで話を聞いた覚えがあるのだが、いわゆるアート作品の解説メディア、といったらいいのだろうか。私自身、美術大学で学んだということもあり、このサービスにはある種の引っ掛かりを感じていた。ただ、当然ながらメディア事業というのはそう簡単に立ち上がるものではない。

結果、彼らの思い描いた夢はすぐに散ってしまうことになる。

バラバラになったメンバーはそれぞれの道を歩み、成田氏はクラウドワークス吉田(浩一郎)氏の導きにより同社執行役から取締役、現在は副社長として活躍中だ。一方の綾太郎氏はその後自身でペロリを創業し、瞬く間に巨大キュレーションメディアを立ち上げ、現在、ディー・エヌ・エーグループの一員として、新たなメディア事業の可能性を模索している。

そして今日、最後に残ったメンバーの一人、石田氏が次のステージに向かうことになった。

THE_NEW_CLASSIC__ニュークラシック____一歩深く読むニュース解説メディア

石田氏はメンバーたちが去ってしまった後のアトコレを代表として支え、ニュース解説のThe New Classicを2013年8月に開始。その後、企業からコンテンツマーケティングなどの事業を請け負いながら、ノウハウを貯めていった。今回、同社が買収された直接の評価もそこにあるそうだ。石田氏はこう話す。

「現在取り組んでいる事業は企業のオウンドメディア支援やBanqなどのメディア事業になります。コンテンツをとにかく作るというよりは、MAUなどの達成による成果報酬的なスタイルが他社との違いですね。メンバーズ社とは今後協力して、彼らがクライアントとしている大手企業に対して私たちのサービスを提案していくことになります」。

Banq__バンク____みんなの行きたい!を集めたお出かけガイド

オウンドメディア関連の事業については、他社案件として数千万円、場合によっては億単位のものも聞いているので、成果さえしっかりと出せば効率のよいビジネスになる可能性が高い。しかも、彼らは「独自の方法」(石田氏)でコンテンツマーケティングのノウハウを貯めてきたそうで、これを5人ほどの少数メンバーで回しているのも特徴かもしれない。

また、石田氏は華やかに活躍する創業期メンバーの姿に対し、こんな話をしてくれた。

「(現メンバーが)アトコレに就職するっていう話をしたら、ああ、あの会社でしょ、やめときなって言われたそうなんですね。成田も中川もそれぞれの道で成長したので、自分も上手くいくんだって思いと、関わってくれた人たちに少しでも恩返ししたいって(気持ちがあって)。去年の4月に本腰入れて事業を再開したんです」。

この若い力を支援したのがサムライインキュベートの榊原健太郎氏だ。アトコレは創業期の支援をサムライインキュベートから受けている。

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「学生企業で代表が抜けたわけです。あそこないよねって。そこから這い上がってきてくれた。トラフィックが伸びたということを聞いたので、丁度、メンバーズさんがオウンドメディアの事業をやりたいという話に合わせて紹介しました。メンバーズさんにとっても初めてのM&Aの試みになるんじゃないでしょうか」。

石田氏は1989年生まれの25歳。当時、彼は早稲田大学在学中で大学院に進学を予定していた。榊原氏は迷う彼に「好きにやりなよ」と声をかけたそうだ。しかし、彼もまた、学生起業だからダメだったと思わせたくない、そういう気持ちから、これまでずっと石田氏やアトコレのチームを陰ながら支援してきた。今回の結果も彼のその応援する気持ちがなければ生まれなかっただろう。

「結果出すまでは黙ってよう」。

石田氏が辛抱強くチームと一緒に踏ん張ったこの結果が、さらに次の夢につながることを願う。

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