
モバイル広告エコシステムの進化においては、新たなタイプのなりすましが始まっている。
私は最近、複数の専門家とモバイル広告の方向性について話した。
「顧客のモバイル広告経験は完全に崩壊しています」と広告テック企業Rubicon Projectのモバイル部門ヘッドであるJoe Prusz氏はウェブとアプリ内広告について語った。
彼は、人が読み取ることもできないような小さなバナー広告、広告主や出版社にとって面倒で多種多様なAndroidのシステムバージョン、さらにデータ基準がユーザの「ターゲティングとリターゲティングを支援していない」点などを指摘した。
こうした状況のもと、さらにiPhone広告ブロッカーの利用者が増えることが予測される中で、MassiveImpactのCEOであるSephi Shapira氏は「ネイティブ広告が大きなトレンド」との見解を示した。同社はパフォーマンスベースのモバイル広告プラットフォームを提供している。
ネイティブ広告は周りのコンテンツと一体化した見え方をし、コンテンツやアプリと共に配信されて、ユーザが自ら選んで体験しているウェブコンテンツやアプリ上に展開される。
しかし、Shapira氏のネイティブ広告に関する構想は現在のニュースなどのフィードやページに組み込まれ、周りのスタイルに溶け込んでいるものをはるかに超える。
従来のネイティブ広告が広告とわかるようにできているのに対し、広告ブロッカーによって広告の方向性が変化しているとShapira氏は考える。
同氏はモバイルにおいて「明らかに広告だとわかる広告が終焉に向かう」と予想した。その進化はまるで、度付きメガネがコンタクトレンズに、そしてレーシック手術へと進化したようなものだとたとえる。
ユーザターゲティング機能付きであっても、モバイル広告(特にウェブ広告)は、サーチクエリ入力後やサイト閲覧後、迷い犬のごとく何日も付きまとうような鈍器にしかならない。
「実用的な補助機能」としての広告
ネイティブ広告のクリックスルー率は、ディスプレイ広告の2~5倍も高いため、広告主にとっては魅力的だとPrusz氏は述べている。ネイティブ広告は、Googleサーチの広告のように本編内容を補足する形のコンテンツを提供するので、ユーザの興味の方向性に合っている。
また、ネイティブ広告は本編のフィードとして提供されるので、モバイルウェブ用の広告ブロッカーではブロックされ難いと期待されている。しかし、テストによってはネイティブ広告もブロックされてしまうことがわかり、近いうちにコンテンツ内の広告をよりコンテンツらしくするための熾烈な開発競争が発行元や広告主によって繰り広げられることになるだろう。
Shapira氏は、「煩わしいもの」というモバイル広告に対する見方を取り除くために、モバイル広告は次の役割へと進化してほしいと考えている。つまり、実用的なアシスタント機能、特定の質問に対する答えを提供するものだ。
「5~7年以内に広告は非常に効率的で効果的なものになり、広告であるということに気付かなくなるでしょう」と彼は語った。広告は、理にかなった提案のような形で作用するか、あるいは、基本的にいくつかのリコメンデーションエンジンが選択した広告のキュレーターのように作用することで、信用性が下がるというリスクもあるものの実用性が増すかもしれないという。
Shapira氏は、配車を依頼すると自分の条件に合った車が迎えにくるUberの配車アプリの例を挙げ、「いつもGoogleの‘I feel lucky’ボタンみたいだと思っています」と語る。
おそらく、これがモバイル広告の未来である。広告は個々の興味に合わせて特別に表示され、Google検索の広告と同じようにハイレベルの実用性を持つようになる。まるで探していた情報そのものであるかのように歓迎することになるだろう。広告ブロッカーがその広告をブロックできるとしても、そうしたいと思わなくなる。なぜならまさに自分に合ったUberの車と同様に、パーソナライズされた広告が配信されるようになるからだ。
「これぞまさに、手に負えないプロダクトプレイスメントです」とShapira氏はいう。
デバイスのなりすまし
「手に負えない」とはここでは正しい表現である。もし広告がコンテンツと一体化して消えてしまったならどうなるだろう。その場合、ユーザはオンライン上で行うことやそこで目にする情報を信頼できるのだろうか?
有用であることは大切である。だが利己心から、有用そうに偽装することはまったく別ものだ。1つの広告がブロックされると、業界がブロッキングを避けるように適応させるためなりすましが増えてしまう。広告を有用なものに判別し、それ自体をさらに自分の興味に合ったものへと変える必要がある。
Shapira氏は、こうした広告が将来新たな種類の自己規制的産業に求められると認識している。しかし大部分で広告ブロッキングの人気は高まっており、広告主と出版側も自主規制が足りない。おそらく、連邦取引委員会に正確な広告について再定義するよう求めている。
しかし、違った種類のなりすましがモバイル広告主において起こり得る。ビデオ広告プラットフォームClearstreamの設立者兼CEOであるBrian Mandelbaum氏は、最近「あまり話題にされることがない」種類のなりすましについて説明してくれた。
「ここ数ヶ月で新しく現れたのはデバイス詐欺の普及です」と語った。
それは、詐欺師がモバイル広告に異なる料金を指定する方法だと、彼は言う。というのも、iPhoneユーザに対する広告の有用性がWindowsフォンユーザに対するものよりも高いと考えられることがあるからだ。
こうした詐欺は「有力な出版社が多いところ」でさえも存在し、この種類のデバイスなりすましの割合は1桁台の中盤から後半のパーセンテージだろうと予想されているという。
解決策の1つとして、デバイスの指紋のようなものを作り出し、画面サイズの解像度、デバイスID、バッファーレート、その他詐欺師がうまいこと真似できない項目の情報を返すというリモート計装がある。
しかし、このアプローチは「複雑であり、確実な方法ではない」とMandelbaum氏は述べた。それは驚くに値しない。なりすましは、悪人だろうが善人であろうが、一度当事者の一部となってしまえば取り除くのは容易くないからだ。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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