さらなる映画体験を作りだすために−−映画レビューサービス「Filmarks」が見据える新しいエンターテインメントの可能性

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Filmarks

映画のソーシャルレビューサービスの「Filmarks」。Filmarksは、ウェブサイトとスマホ用アプリのそれぞれに最新の映画情報が一覧で閲覧でき、ユーザは映画のレビューやコメント、評価をすることができる。ユーザは自身が見た映画の記録としても使ったり、新しい映画を見る指標としてレビューコメントを参考にしたりしながら映画を楽しむことができる。2012年8月にリリースした同サービスは、映画のレビューコメント数がもうすぐ1000万に届くほど成長しているという。

Filmarksを運営するつみきは、3年前につみきの代表取締役社長である鈴木貴幸氏が「見たい映画のメモ帳や、SNSのような機能がついてて友達がオススメするものがレンタルできるようなサービスがあれば」と考えて思いついたのがきっかけだったという。

各映画情報に対して見たい映画リストへの追加や、感想やコメント、レビューを書き込むだけでなく、監督や脚本、キャストなどがそれぞれタグ付けされているのが特徴だ。タグ付けされた監督や俳優毎にタグ付けされた映画情報だけを一覧で見ることができる。特定の俳優名や監督名をクリックすれば、その俳優や監督が関わった作品の一覧が見れる。特定の俳優や監督名をフォローする機能があり、その俳優が出演する映画情報などの最新の情報が通知される仕組みだ。

現在上映中やこれまで上映された映画だけでなく、これから公開される映画情報も掲載されているのも面白い。2016年公開といったものだけでなく、公開日程はまだ決まっていないが現在製作中などオフィシャルに情報が開示されている情報も掲載されており、公開前から作品にコメントを掲載することができる。「見たい映画をフォローしておくことで、公開日が決定したときや映画の最新情報が掲載されたときにすぐにチェックできるようになる」と鈴木氏は話す。上映中や何月何日公開というラベルなども画像に貼り付けることでユーザへのアテンションを促すなど、細かなUIの改善を日々繰り返しながらユーザのアクティブ率向上を図っていった。

CCCとの連携、そして新しい映画体験の提供に向けて

つみき代表取締役社長の鈴木 貴幸氏
つみき代表取締役社長の鈴木 貴幸氏

2014年1月には朝日新聞とKDDIから総額1億円の資金調達を行いながらサービスを成長させてきたFilmarks。映画のクチコミ数も映画業界でもヤフーなどの他社の映画レビューサイトよりも多くのコメントやレビューが集まる規模になった。鈴木氏は、さらなる成長を促すために見つけたパートナーがCCCだ。2014年に開催されたT-Venture Programの第一期に参加したFilmarksはTSUTAYA 賞を獲得。その後CCC本体と8月に業務提携を締結、金額は非公開ながらCCCから資本もつみきに対して出資が行われており、パートナーシップを結び強固な連携を組み始めた。

「もともとサービスのアイデアはTSUTAYAでDVDを探しているときに思いついたこともあり、TSUTAYAと連携できるようになったことはとても嬉しい。国内の多くのコンテンツホルダーとの取引があるCCCと組むことで、サービスの成長の幅が大きく広がった」(鈴木氏)

CCCとの連携でFilmarksがまず始めたのは、ウェブサイトとスマホアプリの検索メニューに『新作レンタル情報』の追加だ。これによりFilmarks上で現在DVDで借りられる映画情報を探しやすくなる。TSUTAYAのネット宅配レンタルサービスの『TSUTAYA DISCAS』とも連携。他にも、新作レンタル映画作品にレンタル開始日を表示したり、見たい映画をチェックしているユーザにはレンタル開始日にプッシュ通知を送るなどの機能を実装。また、現在地近くのTSUTAYAの店舗と作品検索で観たい映画の借り出し状況を検索できる。

「TSUTAYA店舗でも、Filmarksで人気な映画情報をポップで表示したり、映画のレビューやコメントなどをもとに店舗でのDVDの仕入れの参考にするなど、Filmarksがもつ膨大なビックデータを活用したサービスやキャンペーンの展開を考えている」(鈴木氏)

HuluやNetflixなどVODが注目されるなか、膨大な映画のレビューがあることによって、レンタル事業やネット宅配など映画をより楽しむためのユーザ体験を提供できるだけのデータがある。そのデータを今後どのように活用するかが鍵だと鈴木氏は話す。

「いまは、現在上映中などで話題になっていたり、過去に評価された作品を掘り起こして映画ファンを増やす取り組みが多いが、今後やこれから映画を楽しみたい人に向けた映画体験を向上させる施策を考えたい」と鈴木氏は話す。例えば、映画を観る前からFilmarksで映画の情報収集をし、実際に映画館に映画を観て楽しむ。そのあとに、同作品の続編情報が公開されたらFilmarksで観たいをチェックし随時映画情報をチェックする。さらに、同映画をより楽しむための同作品の監督作品の過去映画や関連している映画の情報を収集するなど、映画に関するさまざまなプラットフォームとなることができる。最近では映画を楽しむためのウェブマガジンを立ち上げるなど、さまざまな情報発信に力をいれている。

「期待を高める、観る、楽しむ、次へとつなげる、という映画の満足度を途絶えさせずにユーザを楽しませるためのUXデザインを意識した取り組みを実施していきたい」(鈴木氏)

どういったユーザ層がどの映画に興味をもっているかといったデータや、コメントや期待度から新作映画の上映日程を参考にするなど、配給会社や映画館にとっても有益な情報といえる。例えば、コメントなどから興行収益を予測し、さらなるマーケティングとして活用できる。また、映画館で映画を楽しむ以外にも映画を体験できるさまざまなコンテンツがあるかもしれない。他にも、映画の前売り情報や映画館それぞれへの予約機能がFilmarksに実装されると映画館へ足を運ぶ人も増えるだろう。

余談だが、筆者は先日に立川シネマシティで『マッド・マックス 怒りのデスロード』を体験したが、3Dや4DXとは違った爆音上映による映画の没入感に興奮を覚えた。音に注目した映画館の設計をもとに映画を楽しんだり、なんども足を運びたくなるような映画館づくりの可能性もまだまだある。

「ニッチな映画であってもきちんと評価され、多くの人に観てもらったり、独自の音響環境づくりなどもっと映画館そのものがオリジナリティをもった場になれば良い。映画を真に楽しむために必要なことはなにか。配給会社や映画館などさまざまなステークホルダーと連携していきながらエンターテインメントそのものに新しい価値を生み出していきたい」(鈴木氏)

映画という業態に対してITやソーシャルを軸に新たな価値を提案しようと模索するFilmarks。映画という映像を観るだけでなく、「映画館で映画を観る」という、ウェブやアプリだけではないその場でしか体験できない価値をいかに向上させるかを見据えている。

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