大企業とスタートアップがより融合できる形を目指して−−元ピムコジャパン社長高野真氏がGenuine Startupsの共同代表に就任

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左から伊藤健吾氏、高野真氏

これまでMOVIDA JAPANと共同でシードアクセラレーションプログラムなどを実施し、多くの起業家を支援してきた伊藤健吾氏。その後設立したシードステージに特化したベンチャーキャピタルのGenuine Startupsが、新しいパートナーを迎え本格的なスタートアップエコシステム構築のために動き出した。

本日、Genuine Startupsは雑誌『Forbes Japan』発行人兼編集長であり、運営母体であるアトミックメディア代表取締役CEOの高野真氏を共同代表とする新しい運営体制となったと発表した。高野氏は元ピムコジャパンリミテッド社長など金融畑に27年以上在籍していた人物。その後Origamiやエニタイムスなど複数のスタートアップに対し個人投資家として出資をするなど金融だけでなくテック業界などにも明るい。

今回Genuine Startupsに高野氏が参画するきっかけとなったのは、伊藤氏がこれまで掲げていた「スタートアップのためのエコシステム」構築のためだという。シードに特化したVCとしてシードアクセラレーションをもとにスタートアップの入り口を広げるだけでなく、成功事例を増やすことが今後の大きな課題だ。大企業がスタートアップに目を向ける機会も多くなったが、いまだ本格的な連携は起きていない。同時に、この数年のスタートアップの動きに振り返ったなかで、これまでのスマホアプリを軸にしたスタートアップだけではない、新たな展開を考える必要があると考えた。

「モバイルの発達や通信速度の進化、クラウドによる仮想化やセンサーを通じたビックデータ解析など、あらゆることができる環境になってきた。同時に、こうした技術をもとにいかにして新しい価値を提供するかを考えたとき、コンシューマ向けだけでなくインダストリーに寄ったものが求められる。若さだけで突破する時代から、若手と上の世代がきちんと手を組み経済を牽引できる形を見出さないといけない。つまり、スタートアップだけが頑張るのではなく、既存のインダストリーのプレイヤーと組むことがこれからの大きなトレンドになる」(伊藤氏)

伊藤氏は、スタートアップと大企業とのより強固な連携や、大企業によるM&Aを意識した積極的なVCとしての形があると考えた。大企業によっても、変化の早い時代においてニーズに応えられるスタートアップがもつ技術力や開発力を欲している。その大企業とスタートアップとのマッチングを推進していくという。

「具体的には、これまでのコンシューマ寄りの生活必需やエンターテインメントだけでなく、食や農業、金融、教育、環境、スマートホームなどのエネルギー関連、物流、エンタープライズなど、ITを活用してこれまで非効率だったものを効率化するサービスやプロダクトを開発するスタートアップへの支援を促していきたい。同時に、大企業との密なやりとりやマッチングの場を作り出していく」(伊藤氏)

そうした大企業とのネットワークを構築する上で、高野氏の存在は欠かせない。金融業界の経験の長い高野氏も、エスタブリッシュメントとスタートアップの交流がなく、日本においてよりイノベーションが起きる環境づくりや経済をけん引するプレイヤーが少ないことを課題と捉えていた。多くの大企業とスタートアップとのマッチングイベントも結局は名刺交換程度で終わり、その後の協業や買収といった連携は生まれていない現状を変えたいという思いがあった。

「Forbes Japanを創刊したのも、メディアとしての新しい形を模索するだけでなく、これまで以上に大企業とスタートアップとの融合を図るためのその姿勢を示すためにある」と話す。大企業や政界など幅広いネットワークをもつ高野氏が、個人投資家としてこれまで活動してのも自らが新しい起業家を応援し、エスタブリッシュメントとのつなぎ役を担おうと考えたからだ。

そうした折、6月頃に伊藤氏と高野氏が出会い、そこから互いの考えを共有し共感したことからGenuine Startupsの株式を保有し今回の共同代表の就任へと至った。共同代表ではあるものの、Genuine Startups自体の経営権は伊藤氏が株式を6割保有している。

「大企業はクレディビリティ、つまり信頼性を重視する。真の意味で大企業とスタートアップとの橋渡しができる人物がいなければ起業のエコシステムも経済成長もできない。大企業のプロトタイプを理解し、そこにうまくスタートアップと融合できるための場作りをしていく。そのために、伊藤氏と組むことで互いの良さと足りないところを補うことができる」(高野氏)

Genuine Startupsは1号ファンドとして50社以上に投資をしてきており、今回の高野氏の参画によって2号ファンドを現在組成中だ。ファンド規模は20億円程度を目処とし、シード投資として2000万から3000万円規模の投資を中心に、3年から5年で50社程度の出資を検討する。3分の1程度がなんらかの形でイグジットを成功させ、そのうちの3分の2程度はM&Aによる形を目指したい、という。「ネット系企業が非IT系の企業に買収するだけでなく、買収した先の評価を高めるためのM&A戦略もきちんと練っていき、よいマッチングを促していきたい」(伊藤氏)

では、どのようにして出資先のスタートアップを選定するか。シードアクセラレーションプログラムや公募型での形よりも、投資領域に対するリサーチをもとに情報を発信したインバウンドや、個人LPを含む起業家ネットワークからの紹介、他にも大企業の課題を掘り起こし、それに対してスタートアップが手をあげるようなオープンイノベーション型な形もあるかもしれない。短期間でのイグジットなどではなく、より長期的な視野をもって取り組むスタートアップを見出し、うまく大企業とのマッチングを図るようにしていく」(伊藤氏)

丁寧にシード期からスタートアップを育て、かつ日本国内のエコシステムを構築するためにも、海外よりもまずは日本国内の大企業を中心にネットワークを構築し、課題の掘り起こしや投資領域のリサーチをすすめるという。「日本をもっと良くしたいという思いがスタート。まだまだ日本ではやれていないことも多い。M&Aでミスマッチが起こっては意味が無い。社会的に意義のある出会いを作り出すためにも、ゆくゆくは海外の企業とのマッチングもあるがまずは国内を足がかりに」と伊藤氏は話す。

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