ドメイン失効に立ち上げ時の失敗ーー国内の次世代を担うスタートアップ経営者が語る「失敗と課題」1/2 #bdash

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写真提供:B Dash Ventures

先月に開催された招待制カンファレンスB Dash Campの壇上で次世代を担う経営者たちがそのスタートアップに関わる経験を共有したセッションがあった。

10月に入って新たにスタートアップする人たち(反対に休息に入る人も)いるなかで、ひとつ、彼らの言葉は何かの参考になるかもしれない。個人的に興味深かった内容をピックアップしてそれぞれのお話をご紹介したい。(前後編でお送りします)

まずはインスタントコマースを運営するBASE代表取締役、鶴岡裕太氏の失敗談からだ。なお、このセッションのモデレーターはグリー代表取締役の田中良和氏が務めた。

ドメイン失効事件

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BASE代表取締役、鶴岡裕太氏/写真提供:B Dash Ventures

鶴岡氏にとって思い出深い失敗談は、なかなかお目にかかれないドメイン失効に関するものだ。彼らはインドドメイン (.in)を使っており、レジストリの関係で2013年に一度ドメインが使えないという事件に遭遇している。

「サービスドメインが使えなくなった時があったんです。2日間ぐらい。さらにその時に丁度、他社の偉い方との会食が重なったんですね。内藤さん(ドリコムの内藤裕紀氏)にセッティングしてもらったんですけど、(会食中)時間を見ながらずっとドメイン管理会社に連絡してました。

それに珍しく太河さん(East Venturesの松山太河氏)がその時オフィスに来てて、すごく焦ってたんです。太河さんが焦るってよっぽどのことじゃないですか。これはヤバいなって(笑」」。

鶴岡氏は学生起業ながら、元々あまり物事には動じない性格だと思う。なので、当時、勢いを増しつつあるBASEという可能性にもまだあまり気がついてなかったのかもしれない。当時の太河氏の心中を察するに余りあるエピソードだ。

ちなみにこの体験から学んだことについて聞かれた鶴岡氏は「いいドメインを使うべき」と答えて会場の穏やかな笑いを誘っていた。

本当にドメインが失効してなくてよかった。

プロダクトができるまでは自己資金で

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Retty代表取締役 武田和也氏/写真提供:B Dash Ventures

次はRetty代表取締役の武田和也氏の失敗談だ。彼は失敗か成功かというのは判断が難しいとしつつ、事業のはじめ方についての体験を共有してくれた。

「一番最初が危なかったかな。会社を作ってサービスをやると決めたんですが、日本に帰ってきたばかりで、エンジニアもデザイナーもいませんでした。そういう状態で始めたのが失敗。元々資本金400万円で始めたんですが、サービスをリリースできなかったら会社を潰そうと考えてたんですね。

それでエンジニアを探しながらサービスを作るんですが、もし見つからなかった時のことを考えて、本を買って、自分たちで開発できるようにって始めたのがそもそも危なっかしい話でした。

結果的にはイベントとかでエンジニアの方に出会ったりしてギリギリ立ち上げたわけなんですが、その入り口のところはもっとしっかりしてた方がよかったなと思います」。

最近では最初から資金調達を大量に決めて、一気に作ろうというスタートアップも目立つようになったが、Rettyが立ち上がった2011年頃というのはまだまだ大型調達は難しい時期だった。

この点について、田中氏から最初から大型調達をするのがよいか、それとも小さく始めるのが適しているか、どちらかと聞かれた武田氏は自身の経験からこう回答していた。

「最初からお金を入れてやるのもいいですが、サービスを出すとか、体制がしっかり揃うまでは自己資金でやった方がいいんじゃないかなって思います。その後の評価額も上げられるし、そういった調達もできるので、最近ではそういう方法がよいかと考えてます」。

日本と米国のスタートアップを比較してよく思うのはKPIの設定の難しさだ。例えばMAUひとつとっても、最初からグローバルが対象になるサービスでは狙うKPIの天井が一桁、二桁違う。そもそも日本国内だけで1億MAUは人口的に無理なわけで、結果的にKPIの設定が複雑になりがちになる。もしくは同等の設定ではその分、最終的な評価は割引されてしまう。

逆にグローバルではアイデアさえよければ無尽蔵なMAUを掘ることで金脈を見つける場合もある。ベンチャー投資する側が市場サイズと成長率のことをいうのは無理もない。

そういう意味で日本という市場を選んだ以上、このやや設定が難しいKPIが決まるまでは自己資金、もしくは見つけてからスタートアップするべし、というアドバイスは多くの起業家にとって的を射たものになるのではないだろうか。

後編につづく。

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