医療カンファレンス「Health 2.0」スタートアップピッチの優勝者は、トイレに装着する小型デバイス「SYMAX」

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Health 2.0 Asiaのピッチコンペティションで優勝した「 SYMAX」
Health 2.0 Asiaのピッチコンペティションで優勝した「 SYMAX」

2007年にその初イベントが米国カリフォルニア州で開催された「Health 2.0」。医療・ヘルスケア分野における最新テクノロジーとそれを活用した先進事例を紹介するグローバルカンファレンスです。そんなHealth 2.0が、11月4日と5日の2日間にわたって日本で初めて開催されています。

初日に行われたAfternoon Pitch Competitionでは、それぞれの形でヘルスケア領域に挑戦する5社のスタートアップが登場。モデレーターと兼審査員を勤めたのは、ドレイパーネクサスベンチャーズマネージングディレクターである倉林陽さん。審査員は、ドコモ・ヘルスケアの取締役である佐近康隆さん、アーキタイプのプリンシパル 福井俊平さん、そしてグロービス・キャピタル・パートナーズのシニア・アソシエイト 福島智史さんの3名です。

厳選な審査の結果、見事優勝したのは「SYMAX(サイマックス)」。トイレに小型デバイスを装着するだけで、利用者の健康状態を分析するもの。以降、スタートアップ5社によるピッチ内容の概要をお届けします。

名医の検索および提案サービス「クリンタル」

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本日、本媒体で取材記事をお届けした「Clintal(クリンタル)」からは、医師で代表取締役である杉田玲夢さんが登壇。100万人を超える日本の病院難民の数。医師の説明や治療方針に不満や不安を抱える患者が多く存在します。クリンタルは、そうした患者に対してその疾患や病状に応じて最適な名医を探せるサイト。患者は、診療科と疾患を選択するだけで、名医のリストを見ることができます。

病院単位で探すのではなく医師単位で探せること、名医の選定に定性と定量データの両方を用いていること、また医師のアクセシビリティも評価している点が特徴です。名医の提案サービスにおいてはWebフォームから情報を入力することで、名医を1週間ほどで提案。日本の社会問題になりつつある医療費の増加や医療の質向上といった課題に貢献し、今後はアジア展開も視野に入れています。

審査員からは、医師による実績開示に対する抵抗を懸念する質問がありましたが、これまでのところ医師からは高評価で、むしろ積極的に情報の精度向上に協力する姿勢が多いとのこと。クリンタルでには現時点で500人の名医が掲載されていますが、1年以内に、日本全国25万人の医師トップ3〜4%の掲載を目指します。

普段通り生活するだけで健康状態がわかる「SYMAX(サイマックス)」

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サイマックスからは、代表取締役の鶴岡マリアさんが登場。サイマックスは、洋式トイレの便器の中に取り付けることで尿を分析し、健康状態を分析してくれるもの。まだ自覚症状がないような状態から、糖尿病や痛風など生活習慣病などを早期発見することができます。独自アルゴリズムによる解析の正確性は99%だと言います。

従来の類似サービスには数千万円を下らないものも。それらに比べて、サイマックスは発見できる疾患数、また安価で継続して使える点が優れています。同社によると、生活習慣病の86%を発見できるとのこと。

個人の利用者も月額980円で使うことができますが、企業などがビルや施設などに導入することで、社員の健康や医療費の適正化などに活用することが可能に。すでに高級志向の介護施設や大手デベロッパーなどが関心を示しており、最初の設備投資は数百万円規模になる見込み。また、収集したバイタルデータを用いて、健保や企業に対するデータマーケティング事業の提供も考えています。

3Dプリンターとオープンソースで障害を個性にする節電義手「handiii(ハンディ)」

handiii

exiiiからは、代表取締役の近藤玄大さんが登場。同社は、3Dプリンティングの技術とオープンソースの公開によって、新しい節電義手の形を模索しています。手のない人が、残された筋肉を直感的に操作することができる節電義手ですが、半世紀以上、その機能には変化が見られません。数千人という市場規模の少なさ、また義手をはめる手の大きさや形などに応じたカスタマイズの必要性がハードルになってきました。

こうした理由から、これまでの義手の価格は一本150万円ほど。あまりにも高額なため、義手の普及率は0.7%に留まります。これを、3Dプリンティングとオープンソースという2つのテクノロジーによって、価格とデザインともに義手を気軽な選択肢にする試みがhandiiiです。義手一本の制作費は約3万円で、障害を隠さずに個性として表現できる世界が近づいています。また、節電義手の周辺でコミュニティが形成されており、世界中でさまざまなカスタマイズが実現しています。

カスタマイズした栄養ドリンクを調合する「healthServer」

healthServer

健康であり続けるためのサプリメントドリンクを調合する「healthServer」を開発するドリコス。ステージに上がったのは、CEOである竹 康宏さん。healthServerは、忙しい現代人が健康であるために取り入れられる究極に簡単なソリューションです。

各種ウェアラブルデバイスと連携することで、利用者の身体に必要なサプリメントを分析。すると、サーバーがその内容に応じて必要なドリンクを調合してくれます。ウェアラブルを使っていなくても、サーバのマシン本体に触れることで生体信号が読み取られ、個々人に合った栄養ドリンクが抽出されるとのこと。

現在、日本人の38%が何かしらのサプリを摂取しており、市場は1.5兆円規模に及びます。初期段階では、健康意識の高いスポーツジムに通っている人をターゲットに見据え、すでに来年春のスポーツジムへの設置に向けて動いています。healthServerのサプリはカートリッジ交換によって補充する仕組みであるため、継続的な売り上げが見込めます。

スマホに指をかざすだけでストレスレベルをチェックできる「COCOLOLO」

WINfrotiern

WINフロンティアの代表取締役である板生研一さんがピッチしたストレスチェックアプリ「COCOLOLO」。リリースから7ヶ月が経った現在のダウンロード数は30万を突破しています。

日本には、その事業所の70%以上にメンタルに悩む人がいます。ウェアラブルを用いることなく、COCOLOLOなら身近なスマホだけで心の状態を可視化することが可能。スマホのカメラ部分に指をあてると、血液の脈拍を測定し、ストレスやリラックス数値を導きます。結果は、8タイプの気持ちとなって表れ、測定精度の信頼性は80%ほど。

自分のストレスレベルを知った後は、そのストレスの状態に応じて音楽やスパクーポンなどをレコメンドする機能も。また、今年12月から企業へのストレスチェックが義務化されることを受けて、法人向けソリューションも提供していくとのことです。
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今回ピッチした5社を見てもわかるように、医療やヘルスケアと一言で言っても、その形やアプローチ、ターゲットなどはさまざまです。今後、テクノロジーやデバイスの進化などによって嫌でもデータは収集されていきます。肝心なのは、それを人々の課題を解決するソリューションにどう活かすのか。今後も、ますます注目が集まるヘルスケア領域の国内外のサービスを追いかけていきたいと思います。

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