起業する時の第一のルールとは…デザインで事業を失いかけた起業家のお話

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<Pick Up> How to prevent design from killing your company

現在、デザイン会社「frog」でVenture Design部門の責任者を勤めるデザイナーで起業家のEthan Imbodenさん。2002年から10年間にわたって、アダルトグッズを手がける会社「Jimmyjane」を経営していました。そこで彼が学んだ最大の教訓は、「デザイナー、そしてデザインが会社を殺してしまえること」でした。

とあるアダルトグッズのカンファレンスに参加したことをきかっけに、製品をより美しく作ることができるはずだと考えて世に出したフラッグシップ製品「FORM 6」。コードレスで使えるバイブレーターで、NordstromやW Hotelsなどでも販売され、Kate Mossなどトップモデルが使用し、それがVogueにも掲載されるほどの人気に。FORM 6 は、社会におけるアダルトグッズというジャンルのコンテキストそのものを変えることに挑戦していました。

ところが、その裏側で、FORM6の資金面またオペレーション面はボロボロ。予算は400%オーバーし、マージンもほぼゼロに等しい状態。Ethanさんの預金残高はゼロ円に。そんな頃、とある賢い起業家に出会いました。その起業家は彼に、「会社を始める時の第一のルールが何かわかるかい?」と訪ねたそう。

“don’t die.”(死なないこと)

多くのスタートアップは、このルールを守ることができず、いきなり死んでしまう。Ethanさんは、これを「design suicide」(デザインによる自殺)と呼んでいます。デザインによる自殺に陥らないために、何ができるのか。デザイナーとしてできることの一つが、「プラスチックをもっと嗅ぐこと」です。起業する前、プラスチックを使う製品デザインを手がけていた頃に上司に指摘されたことだそう。

紙に書くスケッチと、工場で必要となるプロセスは必ず紐付いている。一本の線を加えて描くだけで、製造ラインを再編成する必要がある。また違う一本線を加えれば、ネジを一つ追加する必要がある。これを理解してしなかったため、FORM 6は、紙の上で美しいけれど、いざ製造するとなるとコスト高で時間を要する製品に。デザインがユーザーの手元に届くまでに必要なプロセスを理解した上でデザインすること。これが、死なないためには必須だと。

また、Ethanさんは、新しいからといって優れていることにはならないと言います。イノベーションのバイアスによって、起業家やデザイナーは「ユーザーがまだ目にしたのことないものを提供しなければ価値がない」と思ってしまいがち。でも、新しい市場をつくること、新しい製品をつくることが全てではない。時には、現存のものをより良くすることで得られる成功もある。新しいこととビジネスインパクトは必ずしも連動しませんが、新しいこととリスクは常に連動します。

デザインについて学んだ様々な教訓を、一つのシンプルなアイディアに落とし込むことができると語るEthanさん。それは、「スタートアップ、そしてエンドユーザーに最大の価値をもたらすには、ビジネスインパクトのためにデザインする必要があること」。これができて初めて、エクスペリエンスやプロダクトなどに幅を広げていくことができるのです。

via. Design Mind

 

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