世界展開を標榜する中小企業・町工場の最新テクノロジー(危機管理産業展2015から)

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら


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危機管理産業展(RISCON)で登壇する、チャレンジの佐々木和男氏

10月に入って、多くの日本の中小企業、特に、セキュリティのニーズや安全を掲げるベンチャーが、国内の展示会やシンポジウムで積極的に製品を紹介している。

10月12日から、東京都に支援を受けた多くの中小企業が、自動車の安全性から自然災害対策まで、あらゆるセキュリティと安全を網羅するアジア最大の展示会「危機管理産業展(RISCON)」に集結した。このイベントの隣りでは、荷物のチェックと ID やパスポートの提示が必要なイベント「テロ対策特殊装備展(SEECAT)」も併催され、より特化した領域のビジネスを紹介していた。

RISCON の東京都中小企業振興公社のコーナーには注目のベンチャーが複数集結、NTT出身のエンジニアが設立した緊急地震速報システムの開発会社チャレンジ、建物の内部構造をチェックできるデバイスを開発する電子機器メーカーのポート電子、水に浮く車庫を公開したスターライト、津波シェルターを提供するシー・エンタープライズ、その他にも、災害情報を知らせるアプリやデバイスを多くの企業が紹介していた。

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チャレンジ

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チャレンジは、元NTTのエンジニアである佐々木和男氏が始めたベンチャーだ。公職が好まれ、雇用リスクを嫌うこの国において、NTT を辞めて事業を始める人は極めて稀だ。RISCON のステージ上で、佐々木氏は当初、学内通信ネットワーク経由のテロリスト攻撃警報システムを手掛けていたが、緊急地震速報の方がより多くの命を救えることがわかったと説明した。

東京都中小企業振興公社の公共事業からの支援により、チャレンジはインドネシアで EQ-Guard II ネットワークの設置を開始した。技術チーフの Yamaimaiti Nizhamudong 氏によれば、EQ-Guard II はシステムの音声発出が約12ヶ国語に対応しており、将来の市場として、ユーラシア地域の地震国をターゲットにしている。

ポート電子

ポート電子は日比野克彦氏が代表を務めており、同社の製品が音によって建物の内部構造の把握に使えるとわかる最近まで、電子製品の生産に注力していた。ポート電子の開発した検出システムでは、金属製のバチでコンクリートの表面を叩くことで、コンクリートの劣化の問題箇所を探し出すことができる。建物構造の深層部を計測するシュミットハンマーとは違うやり方だ。

今日の日本では、戦後に建設された建物の劣化が顕著で、都市インフラの周辺で多くの問題が見受けられる。工事会社の技術にも低下が見られ、これはおそらく、近年の建設ラッシュに伴う人材不足に起因していると考えられる。東京ビッグサイトの RISCON が開催された会場隣りでは、東京エアロスペースシンポジウムが開催され、建設から長年経過した成田・羽田や、地盤沈下の続く関空など、定期的な検査が必要な空港建設物について議論がなされた。

スターライト

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東京中小企業振興公社のブースエリアの隣りには、頑丈で新しいタイプのガレージを提供する、大阪のスターライトのブースがあった。洪水や水没を招く近年の豪雨のことを念頭に、この車部品供給会社は、保護外装のついたガレージのまわりにドラム缶をつけることにした。そうすることで、水位が引くまでガレージを水の上に浮かせることが可能になる。

東京に住む者にとっては水害は記憶に新しく、最近でも東京北部の海岸に津波が達することがあった。このような災害から身を守るスキームに、複数の企業が特化していた。その中の一つ、シー・エンタープライズは、水害に対応できる津波シェルターを普及させようとしていた。


自動車の災害対策については、東京モーターショーで多くのソリューションを見ることができたので、近々書きたいと思う。いずれにせよ、大きな災害は数が少ないに越したことはないのだが、常に準備万端にしておく必要があるだろう。

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