東京モーターショー2015: 国別の〝栄枯盛衰〟がくっきり、パーソナル・モビリティはスタートアップが牽引

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら


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本稿は、東京モーターショー2015の取材の一部である。

第60回東京モーターショーは10月下旬から11月上旬にかけて開催されたが、アメリカ勢のみならず、姿を消した企業が少なくなかった(前回の 2013年開催時には GM が撤退)。

ジープは復活したものの、クライスラーは今やフィアットの傘下だ。一方、ボルボはトラックのみを展示していた。多くの自動車メーカーや部品メーカーが参加していた今年のモーターショーだったが、アメリカ勢からは、2011年に電気自動車 BOLT を展示していた GM や、以前はマツダとの協業という形で参加していた フォードのみならず、テスラやハーレーダビッドソンも、会場となったビッグサイトには見当たらなかった(ハーレーダビッドソンは、電動バイクのコンセプトモデルを10月初めの CEATEC で展示していた。今年の CEATEC はモーターショーとコラボしている)。

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イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど、ヨーロッパ勢がアクティブだったのは事実で、一方韓国系のメーカーは姿を消した。九州の興和テムザックのコンセプトカー「KOBOT」さえ、どこかへ居なくなってしまい、2013年に登場したブリヂストンの自転車も姿を見せなかった。その点、今年はカナダやインドから参加した企業のみが国際色を醸し出していた。

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イベント名の入った「ドライゼロ」が参加者に配られていた。

さらに言えば、自動車業界では、これまで知的所有権について論じられる機会がさほど多くはなかった。皮肉にもモーターショーの会場では、サントリーに製法特許問題で勝訴したことで話題のノンアルコールビールをアサヒビールが参加者に宣伝配布していたが、添加物の製造特許やデザイン権に関する活動については、イベントに参加していたプロフェッショナルらの明晰な議論から理解することができた。

2017年に開催される次回のモーターショーは、よりテクノロジーや知的所有権問題に特化したものになるだろう。そして、スポーツにつながる活動に向けて、目だったトレンドが増えることも言うまでもない。写真好きとしては、見逃しているかもしれない重要なことを、次回はさらにお伝えしたい。

2020年のパラリンピックを見据えて

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WHILL

東京モーターショー2015では、多くの車椅子やパーソナル・モビリティが展示されていたが、その多くはベンチャー企業から生まれたものだ。特に関心を惹いたのは、あらゆる地形を走行可能な電動車椅子を開発する WHILL だ。彼らはこの会場で、2011年にはまだコンセプトモデルしか展示していなかった。2012年に会社を設立し、資金調達と装置の改良を行った。東京モーターショーで、会社として WHILL がプロダクトを展示するのは、今年が初めてとなる。

WHILL は、遠隔地からユーザの状態を把握できるようにするよう、SORACOM の SIM を採用している点でも興味深い。これにより、WHILL に乗っているユーザと連絡がとれず、どこへ行ったかわからない状態でも、WHILL の上に乗っていさえすれば、他者がその情報をモニターすることができる。SORACOM に関して言えば、スケーラブルな SIM プラットフォームを公開したのに加え、WHILL のユーザ向けに他のアイテムをパーソナライズしやすくする、カスタム DNS サービスの提供を始めた。

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WHILL

他の車椅子、あるいは、ハイブリッド自転車やハイブリッド車椅子としては、乗客が前に乗り、運転者が後ろに乗るタイプの車椅子 ZieD が近くで展示されていた。2013年のモーターショーで初めてコンセプトモデルを出展した ZieD は、前席と後席のコミュニケーションがしやすいように改良され、試運転できる準備が整った。

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ZieD C1

車椅子について言えば、ホンダは Smart City のエリアに UNI-CUB(ユニカブ) をデモするコーナーを設置していた。UNI-CUB は、セグウェイやトヨタの Winglet よりもポータブルなパーソナル・モビリティだ。フットレストになるフラップを備えた、オバール形の椅子のようでもある。一方、Ninebot は、2つの個人向け移動ロボットを展示していた。一つは UNI-CUB に似た Ninebot One、もう一つは重量の軽い Winglet という感じだ。

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ホンダ UNI-CUB

これら以外には、ヤマハは、パワーアシスト機能のついたレース・マウンテンマイクをコンセプトモデルとして公開していた。これらは一応、パラリンピックの一部でアスリートたちが使えるよう改良され、ルールにも反映されるだろう。将来の競技に使えるという点では、車椅子にも同じことが言えるだろう。

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ヤマハ YPJ-MTB

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