台湾AppWorks(之初創投)が第11期デモデイを開催——世界3大陸から起業家が参加、女性が3割を占める

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台湾最大のスタートアップアクセラレーターである AppWorks(之初創投)の第11回デモデイが、11月11日に開催された。AppWorks 創業者の林之晨(英語名:Jamie Lin)氏は、このイベントが、台湾インターネット産業の発展と今後のソフトウェア人材に対する憂慮したものであるとし、次のように話した。

インターネット強国とならなければ、給与も人材も増加せず、台湾に未来はない。

世界と競争しつつ、台湾ではインターネット産業への関心を呼び起こせ

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林氏の憂慮は、無を有に見せているわけではない。台湾経済部(日本の経済産業省に相当)が選んだ「2015年の台湾クリエイティブ企業トップ20社」の中にインターネット関連産業が完全にゼロだったことから、政府の未来産業の競争に対する考え方がわかる。時代の流れに追いついていないだけでなく、台湾のインターネット事業者たちに「世界と戦うだけでなく、自分の国の政府とも戦わなければならない!」と叫ばせているのだ。このようなトップの元で、役に立たないチームメイトまで必要だろうか?

さらに、林氏は「デジタル移民」という潜在的な危機が、ゆっくりと台湾人にも忍び寄っていると語る。

LINE や Facebook が台湾のインターネット文化や経済産業、世論を掌握した戦略的な位置にいるのに、我々が相応の影響力があるインターネット企業を生み出せなければ、台湾かなり高い確率でデジタル時代の第三世界、植民地となってしまうだろう。

第11期には、世界の3大陸から起業家が参加

このような多くの憂慮に臨んで、AppWorks が編み出した解決策は、常にインターネット人材を育成し続けること、インターネット産業のエコシステムを作ること、産業サプライチェーンを作ることだ。AppWorks の第11期のチームには、かなり多様な人材を見ることができる。世界には5大陸あるが、この日舞台にあがった23チームの中には、香港、オーストラリア、マレーシア、アメリカを含む3大陸の創業者が網羅されている。

そのうち、多くの創業者が古くからのメーカー出身である。第11期の参加チームは、全体の2割の創業者が HTC、Intel、AMD または有名なインターネット会社からの独立組である。さらに注目すべきは、今回は女性創業者の割合が高まり31%にも達し、27名もの女性創業者が集まったことで開催史上、男女比が最も近接したバッチとなった。

AppWorks のこれまでの統計を見てみると、総勢256チームがプログラムを卒業し、それらチームの合計年商は236億ニュー台湾ドル(約870億円)に上り、2928件ものソフトウェア/IT関連の雇用を生み出したことががわかった。多くのテクノロジーメーカーが無給休暇や財務衰退を余儀なくされる状況にある中、それとは全く対照的な光景である。

今回のハイライトは「O2O」と「バーティカル領域の精緻なサービス」

第11期に参加した23チームのうち、EC系のチームが主流で9組、そのほかは IoT 、メディア、SaaS 等だった。ECの振興がインターネット時代を代表しているが、サービスはさらに細分化されていかなければならない。インターネットからインフォメーション、サービスへとつながることで、オフラインの本当の潜在顧客を狙い打つことができる。以前の総合的なECサイトにおいてもユーザ人口は増えているが、それらのサイトは消費者が今求めているものではない。以下、バーティカル領域のサービス開発した創業チームの紹介である。

塊掏/CrazyBuy

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PTT(批踢踢實業坊、台湾のテキスト掲示板サイト)の共同購入スレッドで、トップのネットショッピング族に挑戦する CrazyBuy(塊掏)は、大学卒業後すぐに起業したチーム。「台湾女性が最も愛用しているタオバオ共同購入プラットフォーム」サービスを提供し、阿里百川(Alibaba が提供する創業プラットフォーム。詳細は本稿参照)の創業コンペのトップを獲得。主にアプリによる現在の共同購入市場の物流、会計、ショッピング等の煩雑なステップを解決する。

Hii Red

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14万人の女性たちに、従来の生理用ナプキンを捨てさせ、新しい生理用品を使いさせ始めた「棉條教主(「タンポンの神様」の意)」と呼ばれる創業者 Vanessa(凡妮莎)が、台湾の女性用品を推進させてすでに十数年。今年、新しいECプラットフォーム「Hii Red」のローンチが決定した。成人女性、初潮を迎えた女子のために様々な商品を推薦し、毎月訪れる時間をステキな時間へと変える。

土女時代/A Fashion Way To Turkey

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トルコへの旅行、文化に関係する知識をシェアする情報プラットフォーム。土女時代は今年の6月にECサイトをローンチし、特産品や雑貨を販売し、珍しい商品で華人市場へ参入し、ユニークな商品ニーズに対応。

台湾営養/Taiwan Nutrition

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パナマから台湾へ来訪、台湾営養を創業した創業者 Juan は、運動栄養食品を専門に販売し、共同購入、企業提携により業務を拡大。現在は提携パートナーにジムがあり、1年間で100万元(約370万円)の売上を達成。

ソフトウェアとハードウェアの融合が重要

また、チームの趨勢からみると、ソフトウェアとハードウェアの統合が依然重要だということがわかる。ポイントは、プロダクトが明確かつピンポイントの解決策を提供することだ。そうすればクチコミ評価にのウェイトが高い市場において、安定して歩んでいけるかもしれない。

無線顯示/Ezcast

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Ezcast はハードウェア製品を提供。モバイルやラップトップの小さな画面を大画面に投影することができ、アプリと接続すれば、ソフトウェアOSをブロードキャストすることができる。創業者の「我々は設立8年になる会社だが、AppWorks への参加を通じ、インターネット的な考えができる会社に転換したいと思っている」という発言は見事だった。旧態依然のハードウェアは如何にして生き残るべきか、それは脳味噌をそっくり入れ替えることだ。

Skyrec

Skyrec(ウェブサイトは執筆段階でメンテナンス中の模様)は、実店舗向けの Google Analytics を提供する。マレーシア出身の創業者が作った、実店舗のために売上の増加と商品陳列の最適化を行うプラットフォーム。映像を利用して顧客行動を分析し、ビックデータ演算により、顧客の流れ、滞留時間、動線のホットスポットを解析する。Sasa(化粧品)やiRoo(ファッション)などと業務提携している。

海外から来訪し台湾で法人を設立したチームは、台湾人の潜在能力に期待

Tripalife

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香港からやってきた創業者は、かつて中国最大の旅行サイトで働いた経験を持つ。現在は独立して起業し、ライブ放送アプリでトラベルインフォメーションをシェアし、オンライントラベルソーシャルネットワークとリンクさせた Tripalife を運営。創業する場に台湾を選んだ理由は、香港の金融系の専門知識を持つ人材と、台湾の技術・マーケティング人材をつなげることで、多様性をチームの勝利のためのキーポイントにするためである。

Lingochat

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Lingochat は、オンラインで多言語学習ができるアプリ。興味のあるトピックをもとに、言語を学習できる。教えるチームの品質を維持し、アジアの中国語学習に参入し、中国語学習の市場を大きく発展させる。台湾を選んだ理由は、地理的に戦略的な位置にあることと、中国語エリアとしてのユニークさからだ。しかし、台湾の中国語と中国大陸の中国語の間には違いがあるが、チームは一体どのように解決するのだろうか?

【原文】

【via TechOrange】 @TechOrange

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