D2CファッションテックのBrandit、シリーズAで2.35億円を調達——大広、SMBC VC、DIMENSIONから

D2C ファッションテックスタートアップの Brandit は12日、シリーズ A ラウンドで2.35億円を調達したことを明らかにした。このラウンドのリードインベスターは大広で、SMBC ベンチャーキャピタルとドリームインキュベータ(東証:4310)傘下の DIMENSION が参加した。本ラウンドは Brandit にとっては昨年8月に実施したプレシリーズ A ラウンドに続くもの。DIMENSI…

D2C ファッションテックスタートアップの Brandit は12日、シリーズ A ラウンドで2.35億円を調達したことを明らかにした。このラウンドのリードインベスターは大広で、SMBC ベンチャーキャピタルとドリームインキュベータ(東証:4310)傘下の DIMENSION が参加した。本ラウンドは Brandit にとっては昨年8月に実施したプレシリーズ A ラウンドに続くもの。DIMENSION はシードラウンド、プレシリーズ A ラウンドに続く参加。
Brandit は、モバイル動画によるメディア事業やライブコマース事業を営む Candee からスピンアウトする形で昨年11月に設立。有名インスタグラマー佐野真依子氏がディレクターを務める D2C ブランド「TRUNC 88」の運営のほか、D2C ブランド製品の開発・生産・販売・物流を一気通貫で可能なシステムや、アパレル向け EC プラットフォーム「BRANDIT system」を提供している。BRANDIT system を使えば受注だけでなく、原価管理や販売チャネル別手数料も一元管理でき利益の最大化を狙えるという。
今回の調達に際し、出資者の大広とは業務提携を伴う。Brandit では大広とソリューション提供における連携を図り、サービス提供先の D2C ブランドに対してコミュニティ形成や販売支援などのファンマーケティングに基づく設計から EC 構築までのサポート体制を確立するとしている。また、経営体制と組織体制の強化を目的に、CxO を含む人材採用を積極化する。
この分野では、ファッション D2C プラットフォームの「picki(ピッキー)」が昨年シリーズ A ラウンドを発表。日本や東南アジアで事業展開する AnyMind Group は、D2C 商品開発・生産プラットフォーム「AnyFactory」をローンチしている。先週には、インフルエンサーマーケティングの BitStar がファッション D2C への参入を発表した。
via PR TIMES
マイクロLED市場調査分析レポート -マイクロLED、ミニLEDの市場トレンドおよび将来展望について市場調査を行いました。-

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国内最大規模のタワーマンションがアプリを活用した国内初の完全キャッシュレスキッチンカーのテスト導入を開始!

国内最大規模のタワーマンションで完全キャッシュレスキッチンカーのテスト導入を開始します。ClickDishes Japan株式会社(本社:東京都品川区 代表取締役:塚本信仁)は、テイクアウトアプリを通じて、飲食店やキッチンカーを支援するテイクアウトサービスの事業者です。 この度、THE TOKYO TOWERS管理組合(以下管理組合)ではコロナ禍における居住者のライフタイムバリュー向上に向け、テイ…
<海外調査:タイ編>2021年アジアの最新ネット通販情報レポートを公開

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【九州大学 文系限定プログラミングスクール】文系でもエンジニアになれる!プログラミングスクール「Qpro for 文系」を九大発ITベンチャー 株式会社UnReactがリリース

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動態管理サービス MOVO Fleet、トラックドライバーの生産性を向上する「ドライバーステーション」機能を追加

「運ぶを最適化する」をミッションとして、企業間物流の最適化を目指す株式会社Hacobu(ハコブ、本社:東京都港区、代表取締役社長CEO 佐々木太郎、以下「Hacobu」)は動態管理サービス MOVO Fleet(ムーボ・フリート)に、ドライバーが事務所や物流拠点で出庫・帰庫時間等を簡単に記録し、運転日報記載の手間を軽減できる「ドライバーステーション」機能を追加しました。 動態管理サービス MOVO…
毎月10万ずつ拡大中。現在累計130万フォロワー。ハピラフ経済圏をリリース。

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イーグルアイネットワークス、「Interop Tokyo 2021」でクラウド映像監視システムの最新技術を紹介

法人向けクラウド映像監視システム「Eagle Eye Cloud VMS」を提供するイーグルアイネットワークス株式会社(東京都渋谷区、代表取締役:ディーン・ドレイコ)は、幕張メッセで4月14日(水)から16日(金)まで3日間に渡って開催されるインターネットテクノロジーのイベント、Interop Tokyo 2021にブースを出展いたします。2021年4月12日 東京発- クラウド映像監視のグローバ…
清明節の旅行支出が増加、食料品配達「Dingdong Maicai(叮咚買菜)」が7億米ドル調達など——中国テックシーン・アップデート

先週末の3連休には、国内旅行やエンターテインメントへの支出が増加した。オンライン食料品配送プラットフォーム「Dingdong Maicai(叮咚買菜)」は、7億米ドルを資金調達した。中古リサイクルプラットフォーム「Zhuanzhuan(転転)」は3億9,000万米ドルを資金調達し、競合の「Xianyu(閑魚)」は2021年の総取扱高が前年比70%増になると予想している。モバイルバッテリレンタルの …

Image credit: Timmy Shen/TechNode
先週末の3連休には、国内旅行やエンターテインメントへの支出が増加した。オンライン食料品配送プラットフォーム「Dingdong Maicai(叮咚買菜)」は、7億米ドルを資金調達した。中古リサイクルプラットフォーム「Zhuanzhuan(転転)」は3億9,000万米ドルを資金調達し、競合の「Xianyu(閑魚)」は2021年の総取扱高が前年比70%増になると予想している。モバイルバッテリレンタルの Jiedian(街電)と Soudian(捜電)が合併すれば、この分野で最大のプレーヤーが誕生することになる。
3連休の経済
- 中国文化観光部のデータによると、4月5日に終了した「清明節(墓参りの日)」の3連休には、観光地に1億200万人の国内旅行者が訪れた。これは前年同期比144.6%増、パンデミック前の2019年の同時期と比較すると94.5%の回復を示している。期間中の国内観光収入は前年同期比228.9%増の272億人民元(約4,550億円)、2019年同期比56.7%増となった。(21世紀経済報道)
- オンライン旅行プラットフォーム「Trip.com(携程)」を通じて行われた旅行の注文は、3連休中に前年比300%以上の急増となり、2019年の同時期と同程度となった。(界面)
- 中国の興行収入は、連休中に8億2,100万人民元(約137.5億円)を突破した。(新華社)
地域集団型食料品配達事業が活況
- 中国のオンライン食料品配送プラットフォーム「Dingdong Maicai(叮咚買菜)」は、事業拡大、サプライチェーン、チームへの投資のため、DST Global と Cootueがリードしたシリーズ D ラウンドで7億米ドルを調達した。このラウンドには、Tiger Global Management、General Atlantic、CMC Capital Partners、Sequoia Capitalなどが参加した。(国際金融報)
- Alibaba Group(阿里巴巴集団)の創業者の一人でパートナーである Dai Shan(戴珊)氏は、Alibaba の「MMC」部門のコアミッションは、中国に600万軒以上個人商店のデジタルアップグレードをサポートすることであると、社内文書で述べている。新設されたこの部門は、EC プラットフォームが、注目を集めている地域集団型購入モデルに対応するものだと広く考えられている。同社は、MMC が何を意味するのかは明らかにしていない。人気のある地域集団型購入は、「グループ責任者」に依存している。グループ責任者は、主にオフライン店舗のオーナーや主婦、副業をしているホワイトカラーの労働者などで、近隣の人々に商品を宣伝することを目的としているが、Dai 氏によると、MMC は小規模店舗のオーナーへの商品供給とサプライチェーン管理を提供することに重点を置いているという。(Donews)
- 中国の生鮮食品チェーンを運営する Qiandama(銭大媽)は、早ければ年内にも香港での新規株式公開を目指していると、ブルームバーグが関係者の話として報じた。関係者の一人によると、同社は約20億人民元(約335億円)のプレ IPO ラウンドの計画に加えて、この上場で4億〜5億ドルを調達する可能性があるという。(ブルームバーグ)
競合アプリへの乗り込みを加勢
Alibaba は、バーゲンアプリ「Taobao Deals(淘宝特化版)」を競合の WeChat(微信)にミニプログラム小程序)として組み込んだばかりだ。その後、中古リサイクルサービス「Xianyu(閑魚)」を WeChat ミニプログラムに組み込むことを計画している。(界面)
中古リサイクルプラットフォームの動き
- クラシファイドサイト大手 58.com(58同城)傘下の中古リサイクルプラットフォーム「Zhuanzhuan(転転)」は、Greater Bay Area Homeland Development Fund(大湾区共同家園投資)と Qingyue Fund(青樾基金)からあわせて3億9000万米ドルを資金調達した。これは、昨年4月に電子機器リサイクルプラットフォーム「Zhaoliangji(找靚機)」と合併して以来、同社が受けた初めての資金調達となる。同社によると、2020年の収益は前年比で200%以上増加しており、3年連続で収益が倍増している。(新聞晨報)
- Alibaba が支援する中古リサイクルプラットフォームプラットフォーム「Xianyu(閑魚)」は今年、総取引額が5,000億人民元(約8.4兆円)を記録する見込みであると、地元メディアが報じた。これは、Alibaba の年次収益報告書で明らかにした昨年の総取引額2,000億人民元(約3.3兆円)から約70%増となる。(藍鯨)
モバイルバッテリレンタル会社が合併へ
モバイルバッテリレンタル会社 Jiedian(街電)と Soudian(捜電)は、競合の Energy Monster(怪獣充電)が NASDAQ に上場した1日(中国時間)に合併を発表した。新会社のユーザ数は3億6,000万人となり、Energy Monster の2億1,900万人を上回るとしている。(億邦動力)
物流
Alibaba の物流部門 Cainiao(菜鳥)は、アメリカの航空貨物会社 Atlas Air と、中国の香港とコロンビアのボゴタ、ペルーのリマを結び、チリのサンティアゴまたはブラジルのサンパウロを接続点とするフライト運航プログラムを開始するとを発表した。(菜鳥)
中国の規制当局、独禁法違反でAlibaba(阿里巴巴)に3,000億円超の罰金

中国の独占禁止法規制当局は、EC 大手の Alibaba(阿里巴巴)に対し、「強制的な独占」を含む独禁法違反行為で182億人民元(約3,056億円)の罰金を科した。この罰金は、中国で言い渡された独禁法の罰金としては最大のものだ。 重要視すべき理由:中国のテック業界の中心的存在である Alibaba に対する記録的な罰金は、テック大手の反競争的行為を抑制するための、中国政府の継続的な取り組みを浮き彫…

Image credit: TechNode/Shi Jiayi
中国の独占禁止法規制当局は、EC 大手の Alibaba(阿里巴巴)に対し、「強制的な独占」を含む独禁法違反行為で182億人民元(約3,056億円)の罰金を科した。この罰金は、中国で言い渡された独禁法の罰金としては最大のものだ。
重要視すべき理由:中国のテック業界の中心的存在である Alibaba に対する記録的な罰金は、テック大手の反競争的行為を抑制するための、中国政府の継続的な取り組みを浮き彫りにしている。
- Alibaba と金融関連会社 Ant Group(螞蟻集団)を率いる Jack Ma(馬雲)氏のビジネスは、昨年11月に Ant Group の IPO が中止されて以来、厳しい監視下に置かれている。
詳細情報:中国の最高市場監視機関である国家市場監督管理総局(SAMR)は、昨年12月に調査を開始してから約4ヵ月後にあたる今月10日の声明(編注:12日深夜0時現在参照不可)で、Alibaba に対し182億人民元(約3,056億円)の罰金を科したと発表した。
- 規制当局によると、捜査の主目的は「強制的な独占」であり、Alibaba が加盟店に Alibaba 1社のみのプラットフォームやサービスの利用を強要する商慣行によるものだ。
- 今回の罰金は、Alibaba の2019年度のグループ収益の4%に相当する。
- 中国の独禁法第47条では、企業が独占的な行為を行った場合、年間売上高の1%〜10%の罰金を科すことができる。
- また、規制当局は Alibaba に対し、業務を刷新し、3年間にわたり SAMR に自己検査適合報告書を提出するよう命じた。
- Alibaba は10日の回答で、「誠意をもって罰を受け入れ、決意をもってコンプライアンスを確保する」と述べている。
- 同社は、この決定について12日に、公開でカンファレンスコールを開催するとしている。
背景:Alibaba は、Pinduoduo(拼多多)、JD(京東)、Meituan(美団)などの競合企業との間で、「強制的な独占」をめぐって何年にもわたる論争を繰り広げてきた。これらの企業は、Alibaba がその規模を利用して、自分たちのプラットフォームから事業者を追い出したとしている。
- 今回の捜査結果が発表される直前、中国最大の EC プラットフォームとなった Pinduoduo に Alibaba はユーザ数で抜かれた。Pinduoduoは、Alibaba の強制的な独占的慣行の大きな犠牲者であると説明している。
- Alibaba だけではなく、Tencent(騰訊)、 Didi(滴滴出行)、Baidu(百度)などのインターネット大手は最近、規制当局への M&A 取引の報告を怠ったことで独禁法違反の罰金を科せられている。
「瓢箪から駒」ならぬ、マスクスプレーからVTuberの香り——コロナ禍で成功した、CODE Meee×ホロライブ×電通の取り組み

コロナ禍における人々の行動変容は、スタートアップの事業計画にもさまざまな影響を及ぼしている。ピボットを余儀なくされることもあれば、既存事業の追い風となるケースもある。今日紹介するのは、そのどちらでもないかもしれないが、パンデミックを端緒にしたアイデアが期せずして新たなプロダクトを生み出し、異業種のスタートアップとの協業で大きな商機に結びついた事例だ。 香りのスタートアップ CODE Meee につ…

Image credit: Dentsu
コロナ禍における人々の行動変容は、スタートアップの事業計画にもさまざまな影響を及ぼしている。ピボットを余儀なくされることもあれば、既存事業の追い風となるケースもある。今日紹介するのは、そのどちらでもないかもしれないが、パンデミックを端緒にしたアイデアが期せずして新たなプロダクトを生み出し、異業種のスタートアップとの協業で大きな商機に結びついた事例だ。
香りのスタートアップ CODE Meee については、BRIDGE でも何度か伝えてきた。ここ数年、彼らは C 向けのアロマサービスだけでなく、香りをエンターテイメントビジネスや環境改善に役立てる B 向けのサービスにも注力してきた。気分を変えるという香り本来の効能に加え、香りで課題や問題を解決する「ソリューション・フレグランス」というコンセプトに言及したのも興味深かった。
パンデミックの第一波が到来し最初の緊急事態宣言が発令された昨年4月、CODE Meee はマスク専用のプレミアムアロマスプレーを発売した。外出時にマスクの常態的な装着が求められるようになる中で、このスプレーをマスクに吹き付けると、ウイルス予防、抗菌、消臭の効能が認められるというものだ。
CODE Meee は自社サイトでこのスプレーを販売しつつ、同社の創業者で代表取締役の太田賢司氏は、さらなる事業拡大を目指し、以前採択された「GRASSHOPPER」での繋がりを頼りに、電通にこの商品の展開について相談した。当初は電通社内や取引先に販売してもらうことを目論んだようだが、電通第3ビジネスプロデュース局の野上賢悟氏は事業にする観点から可能性を模索した。
プロモーションの予算は無いという。広告代理店である電通が、そんなプロジェクトにどう取り組めるか意義を見出すのは正直難しかった。マーケティングの 4P(Product、Place、Pricing、Promotion)から見るといい商品だが、マスク用のスプレーは競合も結構多くレッドオーシャン。1,700円という価格はハイエンドだし、そのまま展開しても難しいかもしれないと感じた。
どう売るべきか、野上氏は電通のチームメンバーや太田氏と検討を重ねる中で、あるスタートアップと組むことでアロマスプレーの価値を最大化できないか、との仮説にたどりつく。VTuber プロダクション「ホロライブ」の成長が著しいカバーとの協業だ。CODE Meee が VTuber 5人の香りをカスタマイズして制作、マスクスプレー「HOLO AROMA!」として発売する企画だった。
香りという商品で差別化を図るには、熱狂度の高いコアなファンに楽しんでもらう必要があると考えた。実在しない2.5次元のキャラクタにちなんで、香りというリアルな要素を届けることができれば、ユーザにはリモート環境では難しいキャラクタの存在感を身近に感じてもらえるのではないか。(野上氏)
このアイデアは見事に的中し、昨年6月に公開された HOLO AROMA! の発売事前告知動画は再生数30万回を超え、公開日には「ホロアロマ」が Twitter のトレンドワードで4位にランクインした。同製品の購入予約を受け付ける CodeMee の Web サイトには開設以来最大人数が訪問し、初回ロットの受付では1時間に2,000個以上の HOLO AROMA! が完売したという。

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科学に裏打ちされたプロダクトを持つスタートアップ(CodeMeee)と、没入感や熱狂度の高い IP を持つスタートアップ(カバー)、そして、彼らを引き合わせたのが普段はナショナルクライアントを相手にしているが多い電通だった、という点で面白い事案ではないだろうか。実験的な要素が大きかったこともまた、プロジェクトを成功に導いた大きな要因の一つと言える。
当初のマスク用アロマスプレーは、電通サイエンスジャムとの連携でプレ実証していた、脳波による感性把握技術にもとづく「ソリューション・フレグランス」の知見を活用して開発したもの。もともとは機能に寄せていたものだったが、思いっきりブランディング、つまり情緒側に振った。ブランディングに寄せたことで、商品の何を誰に売りたいかが明確になり刺さりやすくなったと思う。(太田氏)
電通としては VTuber の新しいグッズを作り出すという立場だった。タレントを起用して、その方の香りを作るといった企画だったとしたら、条件的に実現することは難しかったかもしれない。今回は VTuber というのが非常に親和性があった。彼らは必然的に画面の向こう側にいて、一方、香りは画面を越えていける。カバーもまた、面白い企画だと快諾し楽しんでやってくれたのは大きい。(野上氏)
起業家はアイデアの事業化に力を注ぐあまり、視野が狭くなってしまうこともある。それゆえ、事業に深くコミットしていないステイクホルダー以外の話に耳を傾けたり、異文化・異業種の企業やスタートアップとからんだりすることが肝要だ。コロナ禍でセレンディピティがもたらす化学反応は生じにくくなっている。電通のみならず、さまざまな大企業が触媒の機能を果たすことに期待したい。
注目を集める「信託型ストックオプション」、その使い方や長所短所を資本政策のプロ・石割由紀人氏に聞いた【ゲスト寄稿】

本稿は、Gemstone 税理士法人のパートナーで公認会計士・税理士の石割由紀人氏と、StartPoint 代表取締役で 「StartPass」プロデューサーの小原聖誉氏による寄稿である。小原氏が質問し、石割氏が回答する形で進められた対談を BRIDGE 向けに再構成してもらった。 <解説:石割由紀人氏> スタートアップ支援専門の会計事務所 Gemstone 税理士法人パートナー。 監査法人・税理…
本稿は、Gemstone 税理士法人のパートナーで公認会計士・税理士の石割由紀人氏と、StartPoint 代表取締役で 「StartPass」プロデューサーの小原聖誉氏による寄稿である。小原氏が質問し、石割氏が回答する形で進められた対談を BRIDGE 向けに再構成してもらった。
<解説:石割由紀人氏>

スタートアップ支援専門の会計事務所 Gemstone 税理士法人パートナー。
監査法人・税理士法人、外資系通信ベンチャー企業管理部長、ベンチャーキャピタルを経てスタートアップ支援専門会計事務所を運営。株価算定(優先株式、PPA等)、ストックオプション評価等についても業界屈指の実績を有する。Gemstone 税理士法人の2020年度関与先新規上場実績は8社。
著書に「ベンチャーキャピタルからの資金調達術」(ぱる出版)、「資本政策立案マニュアル」(中央経済社)、「資本政策立案マニュアル第2版」(中央経済社)など。
<聞き手:小原聖誉氏>

2013年 AppBroadCast 創業。400万⼈にサービスが利⽤されたのち、2016年に KDDI グループの mediba へバイアウト。
その後エンジェル投資家として25社に投資・⽀援し3社がイグジット(うち1社東証マザーズ上場)。 「若⼿起業家が選ぶすごい投資家」第1位選出(2019年・週刊東洋経済)。現在はスタートアップを⽀援する会社 StartPoint を創業し、起業プラットフォーム「StartPass」などを通じスタートアップ250社に経営リソースを提供。
著書に「凡人起業 35歳で会社創業、3年後にイグジットしたぼくの方法。」(CCC メディアハウス)など。
最近スタートアップ界隈で耳にすることも多くなった「信託型ストックオプション」という言葉、正しく理解していますか?
「信託ストックオプションを発行したことが理由で上場できなかった」などという誤った噂が流れることもあるなど、なんとなく難しそうな印象を抱いている人も多いかもしれませんが、実際には、設計や運用に注意が必要なものの、信託ストックオプションスキームそのものが上場審査でNGになるわけではありません。
今回は、そんな「信託型ストックオプション」について、会計の側面からスタートアップ支援を多数手がけるGemstone 税理士法人の石割先生に、スタートアップの社員インセンティブとして欠かせないストックオプションの基礎を踏まえつつ解説して頂きました。(小原)

「信託型ストックオプション」は、ストックオプションの新しい種類なのでしょうか?
種類ではなく、信託型という「箱」に入れる、という認識が近いかもしれません。
ストックオプションの種類としては、従来から知られるように、税制適格ストックオプション、税制非適格ストックオプション、有償時価発行ストックオプション等があり、無償か有償か? 行使時の課税があるか否か? 課税時の扱いが譲渡所得か給与所得か? の違いがあります。

まずは3種類の従来型ストックオプションについて、使い分けやメリットデメリットなど、基本をおさらいしたいです。
従来型ストックオプションとして一般的なのは税制適格ストックオプションです。ストックオプションで一番課題になるのは、利益を受け取るストックオプション権者の課税の点ですので、税制適格にすることで、
- 課税されるタイミングが行使時ではなく株式譲渡時
- 所得の種類として譲渡所得であり申告分離課税なので、キャピタルゲイン課税が20%である(給与所得だと総合課税で累進課税となり、最大55%)
…という、税制上有利な取り扱いを受けることができます。
一方、税制適格ストックオプションは課税上優遇されますが、スタートアップファイナンスにおいては、弱点もあります。
まず、付与対象者は取締役・従業員に限定され、大株主(発行済株式数の1/3超)や社外協力者には付与できません。イコール、オーナーの持株比率希薄化防止には使えないこととなります。
さらに、M&A で EXITする場合、税制上の優遇措置を維持してストックオプションを譲渡することができません(ストックオプションを譲渡すると、税制非適格ストックオプションになってしまいます)。また、行使価格に上限があったり、行使期限も比較的短く設定されています。
税制適格ストックオプションに必要な要件は以下の6点です。
- 権利行使が付与決議の日から2年超10年以内であること。
- 譲渡禁止が定められていること。
- 付与対象者が会社又は子会社の取締役、執行役または使用人等であること。但し、大株主(未上場会社の場合は発行済株式数の1/3を超えて保有する株主、上場会社の場合は発行済株式数の1/10を超えて保有する株主)と大株主の特別利害関係者は除く。
- 新株予約権の行使価格の年間合計額が、1,200万円以下であること。
- 権利行使価額が契約締結時の時価以上であること。
- 証券会社等に信託を通じて売委託または譲渡により売却すること。
この弱点を補うのが有償ストックオプション(ストックオプションを時価発行するという仕組み)です。有償ストックオプションは、大株主の創業オーナーや社外協力者に対しても有償発行(時価発行)することで、行使時点での課税を免れるスキームを構築することができます。有償ストックオプションは無償とは異なり、ストックオプションの公正価値(時価)を払い込んでいるので、発行時には経済的利益が生じず課税されません。
権利行使時点でも(税制適格と同様に)ストックオプション権者は課税されないとされます。権利行使時点の株式時価とストックオプション発行価額と行使価額合計額の差額がストックオプション権者の得た利益となりますが、取得した株式の譲渡時点までは投資が継続しているので、未実現利益として課税されないと考えられるためです。
では、従来型ストックオプションの種類としては、有償ストックオプションが一番優れた発行形態となるのでしょうか?
それがそうとも言えません。理由は、有償ストックオプションではオプション価値の評価が難しく、ここがしばしば問題となることがあるためです。
有償ストックオプションは公正な評価額で時価発行されなければなりませんが、ストックオプションは株式(現物)ではなく、あくまで権利なので、株価から単純計算するのではなく、「ブラックショールズモデル」や「モンテカルロシミュレーション」と呼ばれる、デリバティブの特殊な手法を用いて価値を算定しなければなりません。
将来ダウンラウンドになった場合に失効させる条件の付与等、細かい設計も必要で、専門的な公認会計士に依頼するのが一般的です(この時価評価の妥当性が後に監査法人の監査で問題になったりすることもあります)。
その点、税制適格ストックオプションは一定の制約もありますが、設計がシンプルなので、一般従業員向けの少額ストックオプションとしては使い勝手のよさがあります。大株主(オーナー)、CXO など高額の割当をしたい人材、社外協力者など、税制適格が使えない場合には有償発行を選択する、というイメージでしょうか。
それではいよいよ本題で、「信託型ストックオプション」とは、何のために生まれたスキームなのでしょうか?
税制適格ストックオプションや有償ストックオプションといった従来型ストックオプションにはまだ解決できない弱点があるためです。大きく分けると以下の3点です。
- 今在籍している役員・従業員にしか付与できない。
→ 将来入社する優秀な人材に割安な行使価額でのストックオプションを付与することができない。 - 既発行ストックオプションと同様のインセンティブ効果を確保しようとするとストックオプションの発行規模が大きくなり希薄化してしまう。
→ 後から入社するほど条件が悪くなる。 - 実際の貢献度に応じてストックオプションを付与することができない。
→ 付与時点で分配比率が決まってしまうので、付与後の貢献度が期待より低く、権利行使時に評価が乖離していた場合など、フェアでなくなる可能性がある
では、「信託型ストックオプション」の具体的なスキームと、それによってどんな課題がどのように解決されるのかを教えてください。
スキームの概要については下記の図をご覧ください。
- オーナーと受託者の間で信託契約を締結し、オーナーが受託者に金銭を信託します。
- 受託者は、信託財産を受託者の固有財産と分別管理しなければなりません。発行会社は新株予約権を発行し、受託者は信託された資金を払い込みます。
- 信託期間中、一定の条件(プラン)に基づき、従業員等にポイントを付与します。
- 信託期間満了後、付与されたポイントに基づき、受託者が引き受けた新株予約権を従業員等に交付します。
このスキームの要点は、「受益者が存在しない信託である」という点です。信託税制の原則は「受益者課税」ですが、信託型ストックオプションではオーナーが金銭を信託設定した時点において、受益者が存在しない(最終的にストックオプションを付与される役員・従業員等が決まっていない)ので、受益者ではなく受託者に課税するという法人課税信託が適用されます。
この法人課税信託という特例によって行使価格を据え置くことが可能となり、将来の採用者に対して既存役職員と同条件で付与することができるようになります。
※法人課税信託
法人課税信託とは、受託者が個人であっても法人と見做して法人税法の規定を受けるという仕組です。(本来の課税対象は信託財産自体ですが、信託財産自体が納税手続を行うことが不可能なので、その事務を行っている受託者が代理納税していると捉えられ、受託者が個人でも法人税が課税されるということになります)
受託者は受託した段階で、信託財産について受贈益課税を受け、毎年法人税申告を行うこととなります。(この課税分はオーナーが最初に用意した金銭から差し引かれるため、信託設定する金額に+課税分を見込んだ金額を用意する必要があります)
ストックオプション付与対象者が確定し、「受益者が存在」するようになると、受託者から受益者へその直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、税制上の信託財産の帰属者が受託者から受益者に帳簿価額で移転します。しかも帳簿価額で資産負債を引き継ぎにより生じた収益は所得金額の計算上、総収入金額には算入されません。
以上の結果、ストックオプション権者によってストックオプションが行使され、株式を売却されるまでは所得税の課税は行われないこととなるのです。
また「委託者(オーナー)が受託者に一度信託して、後から配る」という信託の特性によって、誰に・どれだけ付与するかというのを、等級と査定に応じたポイントによる人事評価制度と組み合わせて判定し、実際の貢献度に即して最終的な付与時点の分配を決めることができるようになります。(設定時点にはいなかった人材にも付与することができますし、また例えば、大量に付与した人材が途中で辞めてしまいその時発行したストックオプションが無駄になる、などの事態も防ぐことができます)
つまり、「後から入社した人が不利になる」という課題を総合的に解決するスキームといえるのです。
スタートアップのインセンティブ設計に適した、素晴らしい仕組みのように聞こえますが、信託型ストックオプションならではの課題や注意点もあるのでしょうか?
このスキームではストックオプションを引き受けるための資金をオーナー自らが身銭を拠出するという特徴があり、なるべく資金負担額を小さくするため、オプション価値の評価を引き下げたいというバイアスが働きがちです。
しかし評価額の算定は後々監査や上場審査時に問題となるケースが多く、正確に行っておくことが非常に重要です。そしてその評価業務は専門家に依頼することになりますが、このコストが高額なため(500~1,000万程)、その費用の捻出も課題となります。
そのため、ストックオプションの特性と利点を考えると、できるだけ早い段階で設定をしたほうが望ましいのですが、評価業務にかかるコストを用意する為にはある程度の資金調達が行われるタイミングまで待たなければならないケースもあるでしょう。
また、受託者に誰を設定するのかという点において、前述のスキーム図では、一般的な信託の受託者として信託銀行の名前が入っていますが、非上場会社の信託型ストックオプションの信託においては、コストや規模の観点から信託銀行による商事信託(営利目的をもった反復継続的信託活動)ではなく、民事信託(単発無報酬で受託可能)とするため、多くの場合顧問税理士に依頼することになります。
この際、依頼する顧問税理士は信託の意味や受託者の義務責任を理解し、信託事務を行うことのできる能力を有する方である必要がありますし、また、既に他社の信託型ストックオプションで受託者になっている人は避けるため(複数回受託者をすると信託引き受けを業としているのではないか疑義が生じる可能性があるため)、受託者の選定においても一定の注意が必要です。
最近時折耳にする「信託型ストックオプションを発行したために株式上場できなかった」という噂に関しては、どうでしょうか?
東証、証券会社、監査法人等の統一見解として、信託型スキームそのものを NG としている訳ではないと思います(担当者レベルで批判的な人はいると思いますが)。信託型ストックオプションを認めてもらうためには信託組成が適切に行われていることと、ストックオプションの行使価格やオプション価値が公正に評価されていることが大前提となりますが、この点で個別具体的に問題が発生している事例があるのではないでしょうか?
※ 信託型ストックオプションを発行した後に上場した実際の事例
実際上場事例も増えてきており、特定の監査法人が信託型ストックオプションを無条件で門前払いしているということも無いと思われます(一方で、下記の証券会社や監査法人で信託型ストックオプションについてNGを出した事例も存在はするようです。)。
なお、証券会社や監査法人の担当者によっては信託型ストックオプションについて詳しくないこともあり、単純に「難色を示される」ということはありそうです。
スキームそのものが NG というわけではないけれども、実際審査時に問題となった事例もある、ということで、具体的にはどのような点が問題となるのでしょうか?
まず信託組成時の適切性として、受託者=受益者というような法人課税信託の要件を満たさないような信託組成を行わないことです。受託者自らが受益者になったりしますと、証券取引所や監査法人からNG指摘を受けることになるでしょうし、スキームの肝である法人課税信託という課税上の取り扱いも否定されるでしょう。
また、オプション評価業務を行う公認会計士も、受託者や受益者の立場にならないよう注意が必要です。受託者は専ら受益者のために行動しなければなりませんので、利益相反するような関係を絶対に回避すべきです。
さらに、オプション評価の公正性に関して、会計基準に即した注意点もあります。前項で出てきた「オーナーの資金負担額を減らしたいという動機」の為に、ストックオプションの評価に業績条件のノックアウト条項(一定の場合に権利が消滅する)が付されるケースがありますが、会計基準上、業績条件は公正な評価単価の算定上は考慮しないもの(失効数の見積もりに考慮すべきもの)とされています。
業績条件とは例えば、「〇〇〇〇年〇〇月期及び〇〇〇〇年〇〇月期の営業利益がいずれも〇〇〇百万円を超過した場合、各新株予約権者に割り当てられた新株予約権の数の〇〇%を限度として行使することができる。」といったものですが、このような業績条件は、新株発行による希薄化を懸念する既存株主の不安を払拭する効果がある一方、信頼性のある公正な価値評価であるかどうかという点において会計基準上の議論があり、将来的に規制が行われる可能性もあると思われます。
信託型ストックオプションの利点と注意点について、大まかに理解することができました。
信託型ストックオプションは、従来型ストックオプションの弱点を補うものではあるけれど、設計が複雑で注意点があり、またコストも大きいことから、従来型と上手く組み合わせて活用していくというイメージをもちました。
さらに、実際の貢献度に即した付与割合を後から決めることができるという点は、評価という点でフェアである一方、会社の規模的にまだ人事評価制度が未熟な時点では適用しづらく、また、フェアであるが故に入社スカウト時に特別条件として破格の付与数を約束する、というような恣意的なインセンティブは通用しないことになるのではとも思いました。
日々規制が変わる新しい仕組みでリスクがあることもあり、検討の際にはノウハウのある専門家への相談が必須といえるでしょう。(小原)
Warrantee、米やシンガポールで新ビジネスモデル「無料保険サービス」に参入へ——SPAC経由の米IPOも視野?

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから Warrantee のことを BRIDGE で初めてカバーしたのは、今から7年前の2014年2月のことだ。大阪市などが主催するスタートアップイベント「HackOsaka 2014」のファイナリストに選ばれた庄野裕介氏(Warrantee 創業者)は、ひとり暮らしを始めた際に買った家電が片っ端から壊れていたという稀有な体…

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから
Warrantee のことを BRIDGE で初めてカバーしたのは、今から7年前の2014年2月のことだ。大阪市などが主催するスタートアップイベント「HackOsaka 2014」のファイナリストに選ばれた庄野裕介氏(Warrantee 創業者)は、ひとり暮らしを始めた際に買った家電が片っ端から壊れていたという稀有な体験をきっかけに、保証書を電子化するサービス「Warrantee」を立ち上げた。
保証書は往々にして必要な時に出てこない。そんな保証書を電子的に管理できれば便利だろうとサービスを作ったものの、最初はどうやって企業にお金を払ってもらうか、ユーザをどうやって増やすか、まったく将来のことは考えてなかったという。「保証書を登録してくれたら、保証がもう1年無料でつく」というようなことができないか。それが、彼らの考える新しい保険サービスの原点だ。
Warrantee は2014年末にクックパッド(東証:2193)から出資を受け事業シナジーの模索を始める。庄野氏はこの経験から、「(Cookpad が)無料でありながら、これだけユーザを惹きつけられるのはすごい」と、改めて無料サービスの強さというものを痛感させられたという。Warrantee が現在主軸にしようとしているサービスが無料にこだわるのには、そんな背景がある。
家電の保証(≒保険)なら安いので(企業側がユーザの情報を得る対価として)無料にできるけど、自動車とかだと金額が大きくて無料にはできない。でも、例えば、それを1年を365日で割って、ユーザ1人の1日分として200円出してください、ということなら、できるだろうと。そして、そのユーザの情報をあげますよ、ということなら可能だろうと思った。(庄野氏)

Image credit: Warrantee
2017年、それまで「保証書の電子化」を謳っていた Warrantee は突如として「保険」を語り始めた。同社は保険各社との協業や独自運営でオンデマンド保険に参入、この経験を通じて、日本の保険業法をどうなっているか、政府諸官庁とどのような調整が必要か、身を持って学ぶことができたという。そして、このオンデマンド保険の保険料を無料にしたのが Warrantee のいう「フリーインシュアランス」だ。
例えば、エアコンメーカーのダイキンと、不動産フランチャイザーのセンチュリー21・ジャパンと組んだ例。ダイキンはエアコンを多数保有する不動産オーナーと繋がりたいと思っていたが、エアコンは家電量販店や住設会社を通じて販売されるため、エンドユーザであるオーナーの情報は持っていない。
そこでダイキンに協賛してもらうことで、Warrantee が不動産オーナーにエアコンの追加保証を無料提供。その代わりに、ダイキンは不動産オーナーの情報を手に入れることができた。ダイキンにとっても、不動産オーナーにとっても win-win な関係が生まれた。(庄野氏)
最初は家電から着手したフリーインシュアランスだが、現在では例えば、数千万円する医療機器を保有するクリニック向けのメニューも用意している。医薬メーカーや医療機器メーカーの医療機関への営業アプローチと言えば、MR(メディカル・レプリゼンタティブ)による現地訪問や電話攻勢を想像するが、医療従事者は多忙であることも多く効率的ではないらしい。クリニック向け無料保険への協賛対価としてメーカーに営業チャネルを提供すれば、医療従事者も話を聞く時間を快く確保してれる、というわけだ。
メーカーはあらゆるものを、売り切り型からサブスクへと持っていこうとしている。サブスクにすれば、どのユーザが今どの商品を使ってくれているか情報を把握できるし、例えば、商品が時代遅れや壊れる前に、購入後10年経ったら、ニューモデルの新品を追加費用無で送る、という運用だってできる。この時流の中で、フリーインシュアランスは大変相性がいいと思っている。(庄野氏)
この無料保険の考え方は、モノでなくてもヒトにも応用が可能だ。例えば、骨粗鬆症の症状が見られた人には、無料保険でカルシウム補充サプリメントを配布する、クリニックでの検診結果に応じて、無料保険で健康増進ができるサービスにキャンペーン加入できる、といった具合に。自分の情報を渡すことに抵抗を感じる人は一定数いるだろうが、メリットがそれ上回るなら理解は得やすい。
日本は国民皆保険制度があるので、高度な医療が安価で受けられる国。それに比べると、アメリカもシンガポールも皆保険制度が無く、病院やクリニックによって価格もまちまちなので、無料の保険サービスが参入しやすい素地がある。アメリカは健康保険だけでなく自動車保険も高い。シンガポールは新しいことを始めるのに適した地なので支社を置くことにした。(庄野氏)
Warrantee のコアチームは東京や大阪にいるが、コロナ禍で2週間の隔離という不便を強いられながら庄野氏が単身渡星を繰り返していたのは、こういう理由からだったのだ。売上額などは不明だが、このフリーインシュアランスの事業はかなりうまく行っているようで、関係者によると、Warrantee は近い将来、SPAC(特別買収目的会社)を通じたアメリカでの IPO を目指しているようだ。
今年2月には、日本のスタートアップのアメリカでの IPO を支援する SPAC として、Evo Acquisition Corp のスキームが明らかになった。Warrantee のような世界市場に活路を求める日本のスタートアップが、今後アメリカでの IPO を目指す事例は増えてくるだろう。
<参考文献>
- 日本のスタートアップがNASDAQに上場するおそらく最速の近道:日本企業を対象としたSPAC 「Evo Acquisition Corp」とは(ikujidaddy 氏の note)
大手「30代社長」に見る新規事業づくりの可能性ーーデロイトトーマツベンチャーサポート斎藤氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回はデロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)の代表取締役社長、斎藤 祐馬さんに登場いただきます。2010年に同社立ち上げに参画し、2019年から現職に就任されています。 大手企業とスタートアップを「朝につなぐ」Mornin…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載
日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回はデロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)の代表取締役社長、斎藤 祐馬さんに登場いただきます。2010年に同社立ち上げに参画し、2019年から現職に就任されています。
大手企業とスタートアップを「朝につなぐ」Morning Pitchを2013年から開始し、毎週木曜日の朝7時から累計で1,700社以上の企業が登壇、毎回数百人を集める人気企画となりました。2010年代のスタートアップエコシステムはまだ若く、特に大手とスタートアップという枠組みは手探りの状態でした。Morning Pitchが朝7時という早朝に始まったのも、こういった企画への参加に体制を整えている企業は少なく、本気度さえあれば、「業務外」でも参加できる集まりとしたかったからだそうです。
企画開始から約8年、350回以上のステージを経て斎藤さんが掴んだ手応えと見えてきた世界観とはどのようなものだったのでしょうか。(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、文中敬称略)
若手企業内人材の「強み」
斎藤さんとの会話で確認できたのは大手企業の新規事業への取り組み、特に他社との協業による「オープンイノベーション」に対する考え方の変化です。新規事業は大きく分けて社内で作るか、他社を買ってくる(M&A)かのいずれかでした。ここに第三の手法として「協業」をもう少し先に進めたオープンイノベーションの誕生が2010年代のひとつの特徴です。
アクセラレーションプログラムのような短期集中型の企画や、Morning Pitchといったマッチングイベントが多数開催されたことでこの活動が広く認知されることになります。変化は携わる人々に反映されていきます。起業家や大手企業内の新規事業、ジョイントベンチャーなどに関わる人たちの数や質が上がってきたのが2014年頃からです。
やはり大手企業の人材の質は変わりましたよね
斎藤:私もNewsPicks NewSchoolで「大企業30代社長創出」という講座を実施しているのですが、特徴的な技術力を持つ方もいらっしゃるんですよ。伝統的な重工業のような企業の中のエースみたいな方たちがいらっしゃって、実際に起業されたんですが最初から高い評価が付くんですね。
起業なんて一度も考えたことなかったけど、企業の中で社長をやるということについては興味があって講座にやってきて、いざやることを考えたらこれは起業した方がいいなと考えられて起業された方もいます。それ以外にも元々海外で博士号を取っていてグローバルでも戦える研究者とか、そういう方って以前のスタートアップにはいなかったと思います。
2040年に時価総額トップ10を塗り替えられるかってひとつの大きな基準だと思うんです。米国では20年以上前から優秀な方が起業した結果としてGAFAMができたわけですから、日本でもこういったトップオブトップの方が起業し始めているので、10年後・20年後が楽しみですよね。
大手企業出身の人材の強みってどこにあると思いますか
斎藤:成功体験や経験があるのに大金を手にしているわけでもなくハングリー精神が強い、っていう状況が特徴的だと思うんです。大手企業の中で新規事業を経験したことがある人ってここに当てはまることが多く、構造的に経験があった上でハングリーでいられることが成功につながる鍵だと感じています。日本は上場しやすい環境なので創業者利益を得た結果、モチベーションを保ちづらくなることも多い。
起業の成功のポイントは事業と人と資金の三つだと思いますが、これを子会社社長で一定割合経験できるのも大きいですよね。資金面は確かに自分の持ち出しでやるわけではないので、自分で起業した場合、初めてのケースになるかもしれません。しかし、事業と人のところはとても近い。例えば一回100人の組織を作った経験があれば、スタートアップした後にも同じようなことが起こるわけです。確実に挑戦しやすくなると思います。
変化した大手企業のオープンイノベーションへの取り組み
人々の考え方が変化し、大手企業にいることがローリスクでなくなりつつある今、彼らのキャリアに新たな選択肢としての「起業」が生まれ始めています。そういった状況の中で、大手企業でのキャリアを捨ててスタートアップに挑戦する起業家たちが上場していったのはご存知の通りですが、大手企業出身で社内起業を成功させるケースも目立ち始めました。
例えばJR東日本とサインポストの合弁会社「TOUCH TO GO」の阿久津 智紀氏はJR東日本出身の30代社長ですし、三井住友フィナンシャルグループと弁護士ドットコムが出資した「SMBCクラウドサイン」代表の三嶋 英城氏も同じく30代で三井住友フィナンシャルグループ出身です。
ここで課題になるのが制度設計です。オープンイノベーション的な新規事業の作り方で必要なのは子会社の箱ではなく、起業家に匹敵する優秀な社内人材をいかにして発掘し、モチベーション高く打席に立たせ、時として適切に撤退する「ルール」が必要です。斎藤さんは自身の経験を含め、最初の一例目を作ることが大切と振り返ります。
こういった社内起業の場合、最初の制度づくりが大変そうですが何か型のようなものってありそうですか
斎藤:もちろん成功しやすい制度設計はあります。ただ、一番大事なのは最初の事例を創ることです。例えば我々もデロイトトーマツの社内ベンチャーとして一つの形を作ることができた面があり、その経験を基に社内新規事業制度を運用しているのですが、事例が明確だと公募の数も集まりやすく成功事例をインキュベーションしやすい構造になっています。
なので、最初の事例を創り切ることが何より重要だと思います。加えて、エコシステムって言葉があるじゃないですか。エコシステムの本質って『何か自分でもできるかも』って思わせることだと思うんですよ。スタートアップって俺も頑張ればなんとかなるっていう文化があると思うんです。これまで大手企業にはそのベースが薄かったけれど、今は以前より身近に存在するようになっています。
この動きを加速させるコツって何でしょうか
斎藤:ここ近年で事例がやっと出てきた感じで、2回目、3回目は早いですよね。1回目が大変なんですよ。デロイト トーマツの社内起業制度でも今、3つほど事業が立ち上がっていて事例が出てくるとどんどん優秀な人が集まる。一度でも身近な人が事業を作ると連鎖が起こるんですよね。
あと難しいのが資本政策やインセンティブの設計ですよね。100%子会社のままではどうしても一事業部門のような感じで終わってしまう。ストックオプションなどのインセンティブの設計も自由度が少ないですよね
斎藤:そうですね、本当に企業として大きくしていこうとなった時、親会社がリスクマネーを支えきれないケースが多いです。そうなると他の大手企業を巻き込んで資金を入れてもらうとか、提携するなどの動きが必要になる。外部資金が入れば、必然的にその株式の「出口」を必要とすることになりますから上場という選択肢が出てきます。
100%子会社でできるなら本体事業としてやればいいという考えもあり、最近は最初からジョイントベンチャーで始めるケースも多くなっていますよ。あと、先ほどお話した30代社長の集まりでもいろいろな企業の30代社長がやってきてノウハウの交換をしています。ストックオプションを持たせるにはどうしたらいいか、とか、そういうノウハウはこれまでにはあまりなかったんですよね。こういった具体的なノウハウをコミュニティやコンサルティング、政策立案支援など様々な方法で広げていきたいです。
もう少し大きな枠組みで、国の支援制度などもいくつか出てきていますよね。この辺りの制度設計で必要なものって何があるでしょうか
斎藤:国や行政には応援と規制の両側面がありますよね。スタートアップへの応援という視点では機運が高まってこの言葉自体がメディアにも出てくるようになりました。これはこの10年ですごい進捗だったと思います。一方で、規制についてはまだまだ物足りないですよね。スタートアップって規制が緩和されたその瞬間にどんどん生まれてくるという側面がありますが、そこがなかなか進んでいない。
これはスタートアップが輩出する政治家がもっと増えないと変わらない面もあります。フィリピンやインドネシアといった国ではユニコーン企業を作った起業家が大臣になり政治の世界へ転身するケースがありますが、国内でも実業家の方々が政治家になるようなルートがどんどんでき、社会を変えていくような流れを仕掛けていきたいと思います。
ありがとうございました