明日施行の改正航空法がドローン飛行に及ぼす影響と、5年先の未来について、解説します【ウェビナー】

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image via. Flickr
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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。今回は、本日施行された航空法の改正の内容と、それによるドローン運航への影響についてお伝えします。解説してくださるのは、青山学院大学教授で、世界初の災害救援隊「DRONE BIRD(ドローンバード)」の発起人である古橋大地さんです。別途、古橋さんとドローンバードに関するロングインタビューをお届けする予定なので、お楽しみに。

聞き手の三橋
では、まずは、古橋さんの自己紹介からお願いいたします。
古橋大地さん
こんにちは。クライシスマッパーズ・ジャパン(NPO法人申請中)の古橋大地です。青山学院大学の教授として、市民参加型のオープンストリートマップについての研究と実践を進めています。
聞き手の三橋
あと、今回のウェビナーの中にも登場するので、現在、クラウドファンディングで支援者を募っている「ドローンバード」についても概要をお願いします。
古橋大地さん
被災地で撮影された写真を元に、世界中のボランティアやマッパーと共に「現地の被災状況マップ」を作ってきました。しかし現実的には、発災前の情報を使うことのほうが多かったのが現状です。ドローンバードは、ドローンを使って空撮することで、一刻も早く発災後の状況地図を作成し、現地の救援活動に役立てるものです。
聞き手の三橋
なるほど。さて、早速本題に入りたいと思います。2015年12月10日本日、国土交通省が一部改正した航空法が施行されました。これによって、普及をみせる無人飛行機(ドローン)の飛行についてルールが定められたわけですが、当然「ドローンバード」も影響を受けますね。
古橋大地さん
はい、すでにドローンバードとして、国土交通省航空局とはやり取りをしています。決してドローンを完全に取り締まるということではなく、ただ、誰が、どこで、どんなドローンを飛ばしているのかを把握したいというのが、今回の航空法改正の狙いだと思います。
聞き手の三橋
具体的に、今後、ドローンを飛ばすためにはどんなルールに従う必要があるんでしょうか?
古橋大地さん
まず、規制のエリアですが、これまでは飛行機が通らないところは、高度250メートルまで無許可で飛ばすことができましたが、今回から、飛行機が飛んでいてもいなくても、一律150メートルに変わりました。ドローンを飛ばしたければ、飛行開始の10営業日前までに申請書の提出が必要です。
無人航空機の飛行ルール(国土交通大臣サイトより)
無人航空機の飛行ルール(国土交通大臣サイトより)
聞き手の三橋
その他にはどんな規定が?
古橋大地さん
東京首都圏など、人口密集地を飛ばす場合も、同様に事前申請が必要です。また、ルールに違反した場合は、50万円以下の罰金が科せられます。これらが規制の基本的な方向ですが、一方で航空法の対象外というのが明確に示されました。重量200g未満のドローンに関しては、航空法の対象外になります。
聞き手の三橋
では、ある意味、199gのドローンを作ることができれば、航空法の縛りはなくなるということ?
古橋大地さん
その通りです。例えば、私が持っている「Parrot Bebop Drone」というドローンは、バッテリーなどを搭載した状態で400〜500gです。つまり、この半分までにする必要があります。既存のドローンでは、小さいもので100gくらい。ただ、これだと風にすぐ流されて、ちゃんと飛ばないんです。
image via. Parrot
Parrot Bebop Drone:バッテリーなどを搭載した状態で400〜500gほど
聞き手の三橋
ちょっと日本を離れて、世界的にみてドローンを飛ばすことに対して寛容な国や地域ってあるんですか?ドローンバードの活動を考えると、災害は世界どこでも起こり得ますよね。
古橋大地さん
今までは逆に言うと、野放しに近い状態でした。例えば、ネパールでは今年4月に地震が起きて、その際にカトマンズなどで空撮ドローンが飛ばされました。推測の範囲ですが、おそらく何機かが墜落して誰かが怪我をしたのかもしれない。ドローンを飛ばすとだいたい何度かは墜落させてしまうので。
聞き手の三橋
結局、ネパール政府は規制を厳しくしたんですか?
古橋大地さん
はい。事前申請をして許可がないとドローンを飛ばせなくなりました。たしか、タイやフィリピンでもドローンのパイロット登録が事前に必要など国によってルールはまちまちですが、基本的にはドローンを勝手には飛ばせないという規制する方向で動いています。
聞き手の三橋
ドローンバードの活動内容を考えると、いちいち事前申請をしなくても、災害が起きたらすぐにドローンを飛ばせる状態が望ましいですよね。この200g未満のドローンの開発って、どれくらい現実的ですか?
古橋大地さん
すぐには無理ですね。やっぱり、ちゃんと空撮できるものに仕上げていくには少し時間がかかります。199g未満の空撮専用ドローンを作ることがドローンバードの長期的な目標です。ですので、ドローンバードという組織として、包括申請をする予定です。メンバーリストと使う機体のリスト、飛ばす地域などをまとめて航空局に提出します。
聞き手の三橋
じゃあ、実際にドローンを飛ばしたり、改良したドローンを開発したりするより、裏側の管理作業が大変そうですね…。
古橋大地さん
隊員の名簿、使用する機材、機体に機体番号を記載するなどいろいろな規定があるので…。かなり細くて根をあげそうになりますが、必要なことなので、きちんと航空局とやりとりしながら進めていきます。いずれにしても、政府が「完全にドローンを排除する」という方向ではなかったことはちょっと安心しています。
聞き手の三橋
最後に。米国大手企業などもドローンを使った物流を実験しています。今後、ドローンは、私たちの生活をどんな風に変えていくと思いますか?
古橋大地さん
日本という国にとって、ドローンはすごく重要になると思います。どんどん高齢化が進んでいる。人が足りなくなって労働人口が減れば、いわゆるロボットに頼らざるおえない世の中になっていくはずです。その時に、ペッパーみたいなロボットもいいですが、空を使えるロボットみたいな形でのドローンの進化が期待されると思っています。
聞き手の三橋
ドローンが、社会の利便性を空から高めていく役割を担うと。
古橋大地さん
それこそ、物流や情報を届けること、情報のインフラになるなど、いろんな形でドローンを使わざるおえなくなっていくんじゃないでしょうか。逆に使わないという選択肢はもうないので、いかに安全に運用するかという話を前提に議論を進めていく必要があると思います。
聞き手の三橋
その未来、古橋さんはいつ頃叶うと思いますか?
古橋大地さん
僕が2010年からドローンを使い始めて5年が経ちました。当時使っていた機体は、600万円くらいするものだったんですよ。今は、業務用で十分に使えるものが数十万円で出てきています。作業効率を考えて、今でも主には300万円ほどの機体を使ってはいますが、コストは劇的に下がっていきます。
聞き手の三橋
じゃあ、5年後の2020年の東京オリンピックの頃には、ドローンがもう少し生活に浸透しているかもしれませんね。
古橋大地さん
だと思います。離島をつなげるような性能を持ったドローンが、その頃にはもう10分の1くらいのコストになっているんじゃないでしょうか。
聞き手の三橋
空を見上げたらドローンが飛び交っている、なんてSF映画に出てきそうなシーンが現実のものになるかも。古橋さん、解説どうもありがとうございました。

 

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