デザインとは経営者の仕事ーー高宮氏が語るデザイン・シンキングとスタートアップ #IVS

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shinichi_takamiya

招待制カンファレンス、Infinity Venture Summitの取材にやってきた。ネット系を中心とした企業の経営者クラスが京都に集まり、3日間で多くの投資や提携話が交わされることになるだろう。興味深いセッションもさることながら、会場には多くの投資家や起業家たちと顔を会わせることができるのも、取材する側にとっては魅力的な機会だ。

高宮慎一氏は国内投資会社で有数の実績を誇るグロービス・キャピタル・パートナーズのパートナーを務める。

実は、私たちもメディア協賛でお手伝いしているHeart Catchという、スタートアップのデザインとマーケティングを考えるカンファレンスではキーノートを担当することになっているそうだ。

彼は投資家としてのキャリアをスタートさせる前、米国のデザインファームにてIDEOの提唱する「デザインシンキング」に触れており、彼の投資活動にも影響を与えている。

短い時間だがインタビューする機会を頂いたので彼の「デザイン」についての考え方をお伝えしたい。

「コンサルタントをやめて米国留学してる時、デザインに興味あったのでデザイン会社に一時期いたんです。2000年頃ってIDEOの「発想する会社」のようなデザインドリブンな考え方が話題になってた時期でした。ただ日本語のデザインとアメリカで言うところのデザイン、あるいはデザイン・シンキングってちょっと違うんですよね。日本ではどちらかというと外観、例えばUIとかUXのようなユーザーとの接点のことを指して「デザイン」を考えている場合が多いと思うんです」。

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IDEOサイトより

高宮氏が触れるデザイン・シンキングの考え方はIDEOをはじめとするデザインファームの提唱により10年来受け継がれる思考法のことで、マーケットやプロダクトではなく、人間の根源的な欲求や思考を中心にした思考設計に特徴がある。MVP(Minimum Viable Product)やラピッドプロトタイピングといった、スタートアップにとって身近になったアイデアもここが源流になる。

「スティーブ・ジョブズの例が分かりやすいですが、iPodを「デザイン」した時、彼は同時にiTunesなどのソフトウェアや、音楽業界との連携など、幅広い分野をトータルにまとめ上げました。ここにカラフルな色と影でコントラストしたCMなどのマーケティングをセットにして提供したんです」。

デザインをユーザー接点だけでなく、機能や体験、製品とマーケティング、その他のアライアンスまで含めてトータルの「ユーザー価値」として考える。アップルはそれを極限にまで融合させて成功した事例とも言える。

「ラピッドプロトタイピングやMVPといった考え方がデザイン・シンキングを源流にスタートアップにも流れてきてるのが今です。ただ、やはりやり方が足りてない印象があって、例えばあるアイデアを「面白くない?」って社内の人に聞いてみるぐらいはするんですが、本当はもっと細かく本当に対象となるユーザーに「当ててみる」ってことが必要なんですよね」。

高宮氏の考え方は非常に俯瞰的だ。一方でここまでトータルにモノを考えられる人材というのは数少ない。

「お話した内容は確かにデザインの話題ですが、これこそ「THE・経営者」の仕事なんですね。会社のあり方そのもののデザインなんです。ただ、1人で全てをこなせない場合もあるでしょう。各部門にチーフがいたり、経営者が全てを統括することなど、様々なパターンがあるわけです。マーケティングから考える場合とプロダクトから眺める場合も違いが出るでしょうし。

ただ、そもそもものづくりってエゴイスティックなものだと思うんです。

責任と権限がある人が決めればいい。私はこういうバックグラウンドを持っていたので、そういう人材がいなければ採用した方がいいとかアドバイス的なことは言いますが、最終的に決めるのはやはり起業家です」。

高宮氏の企業におけるデザインという俯瞰的な考え方に触れたい方は、イベント会場を訪れてみてはいかがだろうか。

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