欧州でもトラック業界のディスラプトが始まるか? トラックドライバー向けアプリを開発する「TruckIn」

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長距離トラックのドライバーと貨物運送の依頼主をマッチングする、ニューヨークに拠点を置くスタートアップ Transfix は、つい先日シリーズAラウンドで1200万ドルを調達した。米国のトラック市場は7000億ドル規模であると言われ、これまでTransfix以外にもCargoMaticやTrucker Pathといったスタートアップが資金調達を行っている。ローカルな運送にフォーカスしているCargoMaticは1060万ドル、長距離運送にフォーカスするTrucker Pathは2150万ドルをこれまで調達している。

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資金を引き付け、スタートアップによるトラック市場のディスラプトが期待されるアメリカだが、一方欧州はどうだろうか?

「欧州と米国のトラック業界には大きな違いが存在します」と、ハンガリーでトラックドライバーの採用事業に長年携わったあと、TruckInというスタートアップを立ち上げたBela Dobos氏はいう。

その違いの一つがトラックドライバーの雇用形態であると彼は言う。米国は個人事業主としてのドライバーが多いのに対して、欧州全体で300万人いるというトラックドライバーの85パーセントは、会社員であるとのこと。そのため、個人のドライバーと運送依頼主のマッチングがより難しくなると指摘する。「ドライバーが自分でトラックを持って運送業を始めるために必要なコストが大きいため、個人事業主として独立しにくい状況にあります」という。

また、欧州の長距離トラック輸送は国を超えて行われるため、トラック業者、貨物運送会社などの利害関係者も一つの国の中では収まらない。それがまた、米国と比べるとドライバーと貨物のマッチングを難しくしているという。

それでも、貨物スペースが余っているトラックが走行していることによって、ドライバーやトラックのリソースに「無駄」が発生しているという状況は、米国と変わらない。テクノロジーの力によって、より効率的に貨物とドライバー・トラックのマッチングを促進できる可能性は存在する。

TruckInは、ベルリンの3ヶ月間のアクセラレータプログラム「Startupbootcamp スマートトランスポテーション・エネルギー」を卒業したばかりだが、プログラム中にトラックドライバーの課題をヒアリングしたことを通じて、まずドライバーのコミュニティを築くことが重要な最初のステップになると判断した。

彼らはまずドライバー向けにモバイルアプリをローンチし、ドライバーのコミュニティ構築に注力する。アプリ上では、トラックドライバーが必要とする、駐車、給油、休憩地点などが検索、計画でき、また仕事の検索も可能だ。現在はベータ版としてローンチしているが、近日中の公式ローンチのあと、1年後には20万人ユーザーを目指す。その後は、運送業者などより多くの関係者を巻き込んで、ドライバーと貨物輸送のマーケットプレイスを築くことを目指す。

「欧州の長距離トラックドライバーの多くは、ポーランド、ハンガリー、チェコ、ルーマニアなど東欧出身者です。彼らは、4、5週間の長距離輸送に出たあと、自宅に戻って1週間ほど休みを取るというサイクルで仕事をします。ですが、ドライバーがより柔軟に仕事ができるようなれば、家族と過ごす時間を増やすことなども可能になるでしょう。」

欧州ではこの業界の競争がまだ始まったばかりだ。今後の動向に注目したい。

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