
起業家の失敗関連についてはたまに経験が共有されることがあるのですが、投資家のミスというのはちょっと珍しいタイプかもしれません。
VentureBeatに寄稿したのはJosh Burwick氏で、Sand Hill East Venturesというベンチャーキャピタルのマネジングパートナーを務めており、過去にも幾つかのベンチャーキャピタルや証券会社でリサーチなどの業務に携わった人物です。いわゆる起業家上がりではなく、純粋なベンチャーキャピタリストですね。
そんなJoshさんが振り返る「こんな起業家には投資をしてはいけない」というまとめは、 VCルーキーの方はもちろん、起業家にとってもこういう場合には投資を受けてはいけない、という気づきに繋がりそうな内容になっております。
彼がやっちゃった4つのミスはこんな感じ。
- 創業者に赤旗が立ってる場合は投資しちゃダメ
- プロダクトが「ほぼできてる」ぐらいの状況に投資しちゃダメ
- 外注使ってるスタートアップに投資しちゃダメ
- 注力分野以外に手を出しちゃダメ
詳しくは原文を読んでもらったら雰囲気出てるので、より理解しやすいとは思います。
まず「創業者に赤旗」ですが、これはもう直感ですね。私もこれまで多くの投資家/起業家の方とお会いして、自分自身も資金調達を体験しましたが、資金云々の前に人間的に伴走できるかどうか、という点はシード、アーリーのステージでは必須といっていい項目です。
担当者が辞めて変わる可能性のある後ろのステージの投資事業者と違い、初期ステージは独立系ベンチャーキャピタルの方にお世話になることが多く、付き合う相手がコロコロ変わることはあまりありません。(逆にそういう相手は初期ステージには向かないかも)
仲が良いということと、事業の伴走者として付き合えるかというのは紙一重ですが、この判断誤るとなかなか厳しい時間が待ってることになります。
プロダクトについてはもう当然ですね。文中にあるウォーレン・バフェット氏の引用が全てです。
Warren Buffet said, “I’ve never swung at a ball while it’s still in the pitcher’s glove.” And that’s good advice to follow.
「ピッチャーのグローブにまだボールがあるのにバットは振らねえよ」
外注使ってるスタートアップへの投資ですがこれは大変難しい問題です。概ね同意なのですが、特にスタートアップの場合、立ち上がりのタイミングから全員を雇用することが難しい場合があります。この課題は「いきなり小さな船に全員乗ったら沈む」という課題とトレードオフですので、バーンレートには十分な注意が必要になります。この件については投資家目線と起業家目線は違いますからアドバイスを鵜呑みにしないように。
注力分野外への投資ですが、これはインキュベイトファンドの本間真彦氏のインタビューに全く正反対のことが書いてありました。ちょっと引用します。
2つ目の学びは、「その道のエキスパートを気取るな」です。
時々、投資家はそのスタートアップのビジネス領域を完全に知ったかのように勘違いしてしまう。私のケースではそれがラクスルでした。一番最初にラクスルの創業者に会った時、間違いなく彼らは優秀だと感じました。私もまた、彼らのビジネス領域に対して豊富な知識を持っていたからです。
しかし、私は結果的に投資しませんでした。それは当時、彼らがあまりにも多くの「解くことのできない課題」を抱えてると感じたからです。これが愚かでした。シードステージの駆け出しスタートアップにとって、解決できない課題が積もっていることは当たり前なんです。普段はこういうスタートアップに投資することを許容していたのですが、ラクスルのケースでは(知識が邪魔をして)できませんでした。
大変示唆に富んだ二つの意見です。Josh氏は自分が全く門外漢の音楽関連ビジネスで魅力的なプロダクトを持ち込んだスタートアップに一目惚れしてしまい、投資をした結果、音楽関連ビジネスの課題にひっかかって失敗した、という話でした。
一方で本間氏は、よく知りすぎている印刷ビジネスの知識が邪魔をして投資を「しなかった」ことが悔やまれる、という体験談です。大変味わい深い二つのエピソードですね。
私自身の体験も含めてですが、やはりこの投資の世界に一つとして同じものはなく、全員がユニークな体験をすることになります。おすすめは、小さな、回復可能な失敗を重ねて一歩ずつじりじりと前にコマを進めることですが、そのためにも情報収集や先輩起業家などの体験談は役立ちますので積極的に耳を傾けるとよいのではと思います。
via VentureBeat
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