CES2016 は「世界最大の安全性の低いデバイスの展示会」だった

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Alan Grau氏は、IoTや埋め込み型デバイスのセキュリティソフトウェアを提供するIcon Labsの社長兼共同設立者である。同氏は、Icon LabのFloodgate Firewall設計者であり、埋め込み型ソフトウェアで20年の経験がある。Icon Labs起業前はAT&T Bell LabsやMotorolaに勤務していた。同氏への連絡は[email protected]まで。

Above: CES 2016 show floor Image Credit: CESWeb.org
上:CES 2016の展示会場
Image Credit: CESWeb.org

ラスベガスで毎年開催されるコンシュ―マーエレクトロニクスショー2016(CES 2016)が幕を閉じた。参加者16万人、展示者3800人、展示スペース約250万平方フィートを誇る世界最大のエレクトロニクスショーである。Good Morning AmericaからConanまで、あらゆるマスコミが勢ぞろいし、新製品やテクノロジーを報道した。

自動運転車やドローン、ビデオゲーム、仮想現実、スマート家電など、展示品の分野は多岐にわたる。エクササイズや幼児・高齢者ケア、食事準備にスマートゴミ箱、トイレ製品などもあった。現代の最先端テクノロジーを見るのはとても興奮する。

だが、2つの重要なテーマが私の注意を引いた。

まず、全てのものがつながっているということだ。全てというのは、本当に全てのものを意味する。必要であろうとなかろうと、展示品のほとんどがある種のワイアレスインターフェースを使っている。

次に、全てのものが安全性が低いということ。ここでもまた全てというのは全てだ。これはハッカーが喜ぶだろう。セキュリティの専門家は、十分な「防ハッカー」システムを構築することは事実上不可能であり、システムがより複雑になるにつれてこの難問が劇的に難しくなると長年認識していた。安全性の低いシステムが溢れていることは驚くことでもない。驚くのは、このシステムを守るためにほとんど手が打たれていないということである。

自社製品にセキュリティを組み込み始めている企業もあるし、特にセキュリティや安全性が極めて重要な意味をもつ分野では、進展も見られてきた。だが、セキュリティを優先事項にしている販売業者はほとんどいない。

私が本当に懸念にしているのは、大半の新製品が最も基本的なセキュリティ必須条件すら十分に処理されていないことである。ドローンから自動車、スマート家電に至るまで、確固としたセキュリティを搭載した製品はほとんどない。開発側の多くは製品を市場に出そうと急いでおり、またクラウドやスマートフォンにつなげようとしているので、セキュリティの必要性はないがしろにされているのだ。

そろそろセキュリティを優先事項にする時である。企業は新製品の開発・展開にかなり強気で積極的なスケジュールを組んでいる。専門家によっては今から12ヶ月もすれば(多く見積もっても4、5年)市場に出回る自動運転車を予測している。企業はこれらの製品にセキュリティを構築することに、同じくらい積極的にならなければいけない。

これまでと同様の事業運営をしていても、セキュリティ対策はなかなか追いつかないだろう。昨年、JuniperやJeep、Ciscoといった大手企業は皆重大なセキュリティ被害を受けた。新しいアプローチや新しいビジネスモデル、また新たな企業が新製品の開発や採用に励むのと同様に、私たちにはシステムを守るための新しいアプローチが必要である。企業はセキュリティに同じレベルのイノベーションを適用しなければならない。

それを実現するテクノロジーは既に存在する。シリコン製造業者は安全性の高いMCU(メモリコントロールユニット)やセキュリティコプロセッサを提供している。IoTセキュリティ企業は、製造業者が安全性の高いデバイスを構築できるようソフトウェアスタックや管理ソフトウェアを提供している。

技術屋の自分にっって、CESは楽しいものだ。新しいガジェットやデバイスをチェックするのは面白い。自動運転車や、乳幼児突然死症候群(SIDS)による死亡数を削減できるインテリジェント赤ちゃんモニターにもワクワクする。

しかし、セキュリティ専門家として見ると、CESは少し恐ろしい。世界最大の安全性の低いデバイスの展示会だからである。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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