患者が自宅で使える精神疾患の非侵襲的医療ソリューションを開発する「Mensia」、日本ではシニア向けも

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WHO(世界保健機関)によると、うつ病に悩まされる人の数は世界に3.5億人いると言われ、双極性障害の患者は6,000万人、精神分裂病の患者数は2,100万人に上ります。日本においても、精神疾患の治療のために医療機関にかかっている患者数は近年大幅に増加。厚生労働省によると、うつ病や認知症などを含む精神疾患の患者数は、平成23年には320万人を記録しています。

こうした精神疾患を抱える患者に対して、「ニューロフィードバック」を用いた医療ソリューションを提供するのが、フランス発のスタートアップ「Mensia Technologies」です。今年10月頭に東京で開催された「フレンチテックデー」の参加企業の一社。ニューロフィードバックとは、1960年代頃に登場した注意欠陥障害の治療などに用いられる脳のトレーニング法です。

患者一人一人に脳のケアを届ける

Mensiaのコア技術は、脳波図(EEG)をリアルタイムに解析することができるフレームワーク。この技術を基盤に、注意欠陥障害(ADHD)や高齢者の認知症などの脳障害のための非侵襲的な医療デバイスを開発しています。リアルタイムに脳波を読み取り、その活動をシリアスゲームのインタフェースを通じて患者にフィードバック。脳機能が低下している際に、それを訓練することができます。

ニューロフィードバックという技術は、1960年代〜1970年代にアメリカで登場したと言われ、もともとは注意欠陥障害などの治療に役立てられていました。最近になって、研究所や医療機関などの枠を越えて、一般家庭に持ち込む流れが見られます。まさにMensiaも、患者の生活に導入できるソリューションの開発を目指しています。

「数年以内に、私たちのソリューションを患者の自宅に設置することを目指しています。Mensiaは、フランスのテクノロジー研究機関からスピンオフした企業であるため、”研究”を重んじる強いDNAがあります。研究機関や医療機関などと連携しながら、最終的には患者一人一人、つまり彼らが生活する家や老人ホーム、オフィスなどにソリューションを届けていきます」

各患者のもとに直接ソリューションを届けることで、長期的に見てより費用対効果の高い形でケアを提供することが可能になります。

研究で終わらせるのはもったいない

Mensiaの共同ファウンダーでCEOのJean-Yves Quentel さん
Mensiaの共同ファウンダーでCEOのJean-Yves Quentel さん

今回、取材に応じてくれたのは、Mensia Technologiesの共同ファウンダーでCEOのJean-Yves Quentel さん。もともとはベンチャーキャピタリストで、金融領域のWeb及びエンタープライズソフトウェアの企業を支援していました。

ある時、訪問した研究所で出会ったのが、脳コンピュータインタフェースのソフトウェアを開発するチーム。その技術を「研究」で終わらせてしまうのはもったいないと直感し、誕生したのがMensiaでした。脳波でコンピューターを操作する技術を応用し、脳の健康をリアルタイムにサポートするソリューションの開発に至りました。

資金調達に苦戦するスタートアップが多い中、Mensia Technologiesは2013年にシード投資を実施。その後、2014年には複数の大規模案件による売り上げと助成金を獲得。先月11月には、欧州委員会による360万ユーロ(12月24日時点の為替レートで4.7億円)の出資を受けて、初のプロダクトの完成にこぎつけました。

Mensia Technogiesにとっての最大のチャレンジは、医療レベルのソリューションを実際に形にすること。Quentelさんの金融のバックグラウンドと、技術開発チームのソフトウェア研究の経験が合わさっても、厳しい規制に対応し、安全性と効率性を両立させた医療デバイスを開発することは壮大なチャレンジです。

「私たちのような脳障害の”デジタル”な治療法は、まだ未開拓に近い分野です。また、自宅で施される医療ソフトウェアの経験者が皆無です。信号処理、ソフトウェア開発、神経科学、規制対応といった様々な専門領域を併せ持つチームで取り組んでいます」

非侵襲的な医療デバイスがもたらす脳の健康

24時間365日休むことなく稼働するプロダクトを運営するIT企業では、長時間労働もやむを得ません。その結果、メンタルをやられてしまう人が多いと言われています。また、高齢化が進む日本では認知症などに悩む高齢患者の数も増していくばかり。Mensia Technologiesは、そんな「脳の健康」という社会問題の解決に挑戦しています。

注意欠陥障害、認知症、うつ病といった精神疾患の多くは慢性。それらに対する標準的な治療法はというと、今は薬が一般的です。治療費は決して安くなく、薬を服用することにはさまざまな副作用や課題がついて回ります。薬を使った治療は、何年もの時間がかかることも珍しくありません。

「私たちは、従来の方法とはまた違う方法があるはずだと信じています。脳そのものがそのアンバランスの修復を習得する。自宅にいながら使える非侵襲的な医療デバイスを開発することで、単体または薬と併用しながら、一人でも多くの人に「脳の健康」を届けていきます」

Mensia Technologiesは、日本市場に向けて、シニアの軽度軽度認知障害と脳卒中後のリハビリレーションを目的としたソリューションを開発しています。精神疾患患者が、少しでも脳の健康を取り戻すことは、介護をする家族や周囲の人間の心の健康にも大きく繋がり、そのインパクトは計り知れません。Mensiaのソリューションが、日本の家庭や老人ホームなどに早く導入されることを期待します。