ビットコインの将来はきっと明るいと考える理由

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Jacob Donnelly氏は、ビットコインやブロックチェーン関係をカバーしているフルタイム勤務のプロダクトマネージャー兼フリーランスジャーナリスト。Crypto Briefという最も重要なビットコインニュースをまとめたニュースレターを毎週発行している。

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via Flickr by “Zach Copley“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

ビットコインは死んだと89回も宣告された。ポンジ・スキーム、実験失敗いうレッテルを貼られた。もう忘れ去られてしまったと書かれたり、デベロッパーはもっと有望なものに目を向けるようにと言われたりした。しかしこのレトリックにとどまらず、ビットコインの発展を別のテクノロジー、すなわちワールドワイドウェブのそれと比較するのはそれほど無理があるわけではない。

ウェブに関しては、初期の頃は興奮、熱狂、バブルのような動きが見られた。これはハイプ・サイクルと呼ばれる現象だ。1994年10月13日、Mosaic Netscape 0.9ブラウザがローンチされた。その6年後、世界は2000年のITバブル崩壊に見舞われた。これにより多くの企業が泡沫と消えた。

ウェブに熱狂したベンチャーキャピタリストは、会社名が「.com」で終わるところならどこでも資金を投じた。その会社が利益をあげられるかどうかは関係なかった。彼らの唯一の関心事は成長。ベンチャーキャピタリストは貪欲になっていたのだ。

しかしその貪欲さ自体は悪いものではない。Union Square VenturesのベンチャーキャピタリストFred Wilson氏はその著書、『Boom & Bust: A Look at Economic Bubbles』の中でITバブルについて次のように述べている。

「私の友人は優れた考えを持っています。彼が言うには、『非合理な熱意というものがなかったら重要なものは何も生まれません』。これはつまり、投資家が財布の紐を緩め、鉄道、自動車、航空など業界を問わず何かを造る資金を出してもらうにはある種のマニアが必要なのです。 今回の(ITの)ケースでは投資資金の大半は失われましたが、一方で多くの資金がインタネット向けの高度なバックボーンのほか、たくさんのソフトウェア、データベース、サーバストラクチャーに投資されました。これら全て、私たちがいま手にしているものです。私たちの生活を変えたものです…これこそ、投機的なマニアが作り上げたものです。」

同じような投機的マニアがいたことで企業価値はうなぎのぼりとなった。そしてバブルが弾けた。Amazon.comは107米ドルだった株価が7米ドルまで暴落し、多くの企業が経営破たんした。テック株の値上がりで大金を手にした投資家が今度は何兆ドルではないにせよ何十億ドルもの損失を被った。バブルをもたらしたのは貪欲さであり無知だったのだ。

しかし別の一面として、この時期に信じられないほどの数の企業が生まれたという側面もある。

例えば、2004年2月4日に創設されたFacebookがある。バブル発生から崩壊までの時期にインフラが整備されていなかったらFacebookは生まれることができただろうか? Uberはどうだろうか? Googleで得られる世界のあらゆる情報はどうだろうか?

後知恵ではあるが、ウェブがともかくも現実にあるものになろうとしていたことを疑う人はいない。しかし当時、あまりにも多くのPets.comやiWon.comなどのIT企業に賭けすぎたとして投資家が手仕舞いした時、多くの人はウェブが存続し得るか疑問に感じていた。

そしていま、私たちはウェブを当然のように利用している。

ビットコインはまだ初期段階だ

ビットコインは生まれて7年、初期段階にあるテクノロジーが経験する多くの問題があるのは事実だ。7年経った現在でも、これは多くの点でまだ1994年10月13日のテクノロジーであるといえる。

それにも関わらず、投資家は信じられないほどの資金、あまりにも多額の資金をこの通貨に投資してきた。もしあなたがウォレットサービスのプロバイダー、送金企業、決済処理事業者であったなら投資家は喜んで投資するだろう。2014年から2015年初めにかけての時期、資金を獲得する手っ取り早い方法はビットコイン関係の企業を設立することだった。

そこには合理的でない熱意があった。実を言うと、ビットコインは合理的に考えたとき資金を回収できる保証はなかった。それでもなお、貪欲さのために投資家は資金を投資したのだった。

あらゆるテクノロジーにつきものであるが、痛みは増している。初期のビットコインは非効率な企業で管理もお粗末だった。Mt. Goxでは個人投資家が総額で何億ドルもの損失を被った。Silk Roadなどは、ビットコインの唯一の用途は麻薬だと人々に信じさせた。

それでもビットコインは成長を続け、こうしたネガティブな見方は変化している。古い取引はなくなっているか、なくなりつつある。Coinbaseなど、新しい段階にある取引方法ではセキュリティと規制を重視している。何百万ドルもの資金がセキュリティ分析や規制マネジメントの人材に投資されている。多くのケースでは、自社でセキュリティの高いプラットフォームを構築できない企業はBitGoという、ビットコイン業界におけるセキュリティソフトウェアの大手プロバイダーを頼りにする。この企業はビットコインテクノロジーでの取引に10億米ドルもの金額を上乗せしたが、1セントたりとも盗まれることはなかった。

それに加えて、ネットワークの参加者数や取引数は拡大を続けている。Purse、ChangeTipやZapChainといった企業はこのテクノロジーで実際のユースケースを提供している。Purseを使えばAmazonで商品を購入できるほか、ChangeTipでは少額決済、ZapChainではレベルの高いディスカッションを促すことが可能となる。

ビットコイン、存在の危機

ニューヨークタイムズやMike Hearn氏がこれまで取り上げてきたように、ビットコインは存在の危機に直面しようとしている。彼らのメッセージには正しくないところがあるとはいえ、このネットワークには別の痛みが広がっている。

ビットコインのコミュニティでは多くの人がブロックのサイズを増やすべきと主張しているところだが、Coreの開発チームはビットコインをスケールする方法に関する自社のロードマップを策定した。これにはソフトフォークによるSegregated Witnessの実行が含まれる。スケールが必要という考え方は否定しない。現在のところビットコインは1秒あたり約3件(TPS)しか取引を処理できない。インターネット上の決済プロトコルになるには、もっと多くの取引をサポートしなくてはならないだろう。

Core開発チームによる提案に満足しない一部のデベロッパーは、代替的なビットコインのプロトコルであるBitcoin Classicを顧客に提示した。この提案は現在のブロック数の倍にあたる2メガバイトにハードフォークするものである。さらに、Bitmain、Bitfury、BW.com といったマイニング企業の多くはこのハードフォークに合意した。Coinbase、Xapo、さらにはBlockchain.infoといったウォレット・通貨交換大手も賛同している。

ビットコインで明白なのは現実的な危機に直面しているということだ。ビットコインとは何だろうか?これはVisa、MasterCard、さらにはPayPalに競合するものだろうか、それとも二番目のレイヤーで処理されるあらゆる取引を備えた決済レイヤーなのだろうか? ビットコインはスケールした時にも分散型、検閲なしの状態を継続できるのだろうか?

危機が発生しているのは確かだとしても、それでビットコインが終わってしまうわけではない。別の言葉で言えば、ビットコインをリードしているのは現実問題というよりは感情やマイナスイメージだ。

ビットコインの将来

ますますあり得そうなシナリオとして、ビットコインの将来は明るいというものがある。このネットワークが開発されて7年経った。プロトコルを確立するには何年もかかるが、それがビットコインのいまの姿だ。Joel Spolsky氏が言うように、「質の良いソフトウェアには10年の時が必要。それに慣れよう。」

「ビットコインは、ウェブブラウザが生まれる前、1992年時代のインターネットに例えられます。今はまだビットコイン生命の初期段階です。ベースとなるレイヤープロトコルは安定的な (TCP/IP)。現在、エンジニアは二番目のレイヤー(HTTP)を構築していますが、そうなれば一般の人やマシーンがビットコインを使えるようになれます」と、Bloqの設立者でビットコインCoreのデベロッパーであるJeff Garzik氏は私に語ってくれた。

まだ何年もかかるが、一度インフラができてしまえばBloq、BitGo、21.co、さらにはCoinbaseといった企業が音頭をとることでアプリケーションレイヤーに構築されるプログラムが着実に増加していくだろう。

しかしながら、インフラ構築を待っている間にもビットコインが進化しているのは明らかだ。

例えばマイニングを例にとると、ビットコインのマイニングがかなりの程度集権化されているのは疑いようがない事実だ。特に中国はハッシュレートが50%を超える。しかし、21.co. などの企業による取り組みの結果、この状況は変わりつつある。

同社の企業概要ページによると、「シリコンからソフトウェアに至るまで、フルスタックのインフラを必要としている人がいます… それが当社です。」11月、この会社は21 Bitcoin Computerという最初の製品をリリースした。これはデベロッパーにビットコインを導入してもらうための開発キットだった。

しかしこれはまだ始まりにすぎない。21.co がチップのデザインを向上させていくにつれて、あなたのために永遠にマイニングしてくれるルータを展開できるようになるかもしれない。小さなマイナーを携帯電話につなげることもあり得る。しかしこうしたマイニングは個人がブロックの報酬で裕福になることを意味するものではない。むしろ、ビットコインにとっての目標はインターネットへの参画を促すことだ。

現在、Googleで何かを検索したい時、ウェブサイト周りであなたに付きまとう広告や追跡クッキーに対処しなくてはいけないだろう。デベロッパーは21 Bitcoin Computer上で検索エンジンを構築することができるが、ここでユーザは検索をするためにわずかばかりのビットコインを支払わなくてはならないだろう。

あるユーザのウォレットにあるビットコインを調達するという考え方に囚われなければ、インターネットとは何か、その機能は何かについての考え方も変わってくる。企業が個人情報を取得するのではなく、消費者にデータの代金を支払わなくてはならないようになる。私はニューヨークに住む27歳の男性であることを知りたいですか? それなら5,000satoshiですね(satoshiはビットコインの最小分割単位)。将来はこうした取引が自動化されるかもしれない。

話題となっているキラーアプリケーションはどうだろうか? 何千とは言わずとも何百という製品が作られているという事実を抜きにしても、いまキラーアプリケーションになれる可能性のあるものは複数ある。先に紹介したFred Wilson氏は、2016年に「ビットコインはついに取得率ゼロのマーケットプレイスで動くOpen Bazaarプロトコルを備えたキラーアプリケーションを目にする」と信じている

いずれにしても、ビットコインはまだサービスの行き届いていない地域の手助けをする可能性にすら入りこめていない。送金問題はまだ解決されていないものの、複数の企業が状況を改善させようとしている。幸いにして、サービスが十分でなく、銀行の数も十分でない地域は携帯電話の普及が進んでいる。このようなところでは、ユーザがビットコインのことを知るにつれて送金が簡単にできるようになるだろう。

最後に、ビットコインの最初で基礎的なユースケースについて改めて考えてみたい。それはデジタルゴールドだ。ビットコインのボラティリティは今でも高いが、世界でボラティリティのある資産は他にあるのは確かである。新しい資産の価格が10%下がったと嘆く前に、同じ時期に株式相場が10%下落したことを考えてみよう。原油価格はどうだろうか? 金の価格は? 石炭価格は? 成熟化している資産でさえ、価格変動はつきものだ。

デジタルゴールドからたくさんのメリットが得られる多くの国々では取引量が増えているという事実を考えてみてほしい。アルゼンチンでの取引量は過去最高になっている。債務問題を抱えているブラジルでも過去最高だ。インドではビットコインを使う人の数が急増している。ビットコインを非合法化しようと検討しているロシアでさえ取引量の急増が見られるのだ。

ビットコインの現実

ビットコインは完全無欠ではない。克服されなくてはならない多くの課題がある。しかしもう使えないというレッテルを貼ったり何か新しい別の手段で置き換えるべきという考え方をしたりするのは、ナイーブで近視眼的すぎる。内戦状態はまもなく終わる。おそらくBitcoin Classicでは多くの人の同意を得てハードフォークが実施されるだろう。新たなアプリケーションは、色々なオーディエンス向けに多くのユースケースを提供するようになるだろう。そして最終的には、インターネットが最初で本当の意味での決済プロトコルを確立するだろう。

しかしビットコインは7年目。インフラが整備されてこうしたアプリケーションがクリティカルマスに到達するには何年もかかるだろう。Facebookはブラウザがリリースされて10億ユーザに達するのに20年かかった。ビットコインの真の潜在力から想像すると、一か月単位、一年単位ではなく10年単位で考えなくてはならない。幸いにして今は順調に推移している。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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