日本の町工場を活用した新しいあり方と、リアルテックへの長期的な視野と投資が世界にイノベーションを起こす #tbfes

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左から、モデレーターの加賀谷友典氏、鎌田富久氏、丸幸弘氏。

「Tech and Life」をテーマに開催された「THE BRIDGE Fes」。100社のスタートアップブースが会場にひしめく中、中央のステージではトークセッションが開催された。Fesの様子はこちらで一覧できる。ここでは「世界を目指す日本テクノロジー」と題したプログラムセッションの内容をまとめる。登壇者はTommy K 代表、エンジェル投資家でACCESS共同創業者の鎌田富久氏、リバネス代表取締役CEOの丸幸弘氏、モデレーターに事業開発プランナーでnecomimi開発者の加賀谷友典氏が登壇した。

誰も取り組んでいない課題を解決するための技術をいかにつくりだすか

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Tommy K 代表、エンジェル投資家でACCESS共同創業者の鎌田富久氏

「技術の内容が地球的課題を解決しようとし、インパクトが大きいか。もしくはその可能性を秘めているかどうか。そしてチームが人の魅力があるかどうか。目的のために10年計画で取り組もうとする気概を持っているかが投資の基準」

ACCESS共同創業者として長年ソフトウェア開発に取り組んできた鎌田氏。同氏は、現在はGoogleに買収されたロボット開発のSCHAFTやプリンテッド・エレクトロニックのAgIC、パーソナルモビリティのWHILLなどのハードウェアベンチャーら対してエンジェル投資を実施。社会課題や新しいテクノロジーベンチャーを生み出すために短期ではなく長期的な視野をもって積極的にハードウェアベンチャー支援している。

大学の研究をもとに世の中にある課題解決のための事業推進に取り組んでいるリバネス。これまでにミドリムシの研究開発のユーグレナの立ちあげから関わりながら事業の成長をサポートしてきた。最近では、中東向けの太陽光パネル清掃ロボットの未来機械や次世代型風力発電機のチャレナジーなど、次世代に向けたテクノロジーベンチャー支援に力をいれている。

誰も取り組んでいない課題を解決するための技術を世界にいかに発信していくか−−両氏が常に抱いている考えでもある。鎌田氏も最後は「人」が起業家を決める要素である。「かわいがる力があるかどうか。創業者のパーソナリティによって色んな人の協力を得られるような姿勢でいれることは大切。ユーグレナもいろんな人たちにかわいがられて多数の人たちが技術を持ち寄ってくれた。熱量をもった振る舞いがあれば技術は後からついてくる。それが世界を変える」と丸氏も話す。

その巻き込むパートナーとして、町工場こそが日本が長年培ってきたノウハウが集積している場所であり、その技術と叡智こそが日本が世界に発信するテクノロジーを生み出す源泉だという。

日本が持つ強みを活かすためにするべきこと

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リバネス代表取締役CEOの丸幸弘氏

テクノロジーベンチャーを作り上げるためには、プロトタイプづくりは欠かせない。「海外の工場では精密な設計図をわたさなければ動くものはでてこない。しかし、日本の工場は動くように設計アドバイスもしてくれる。ただテクノロジーあるだけでなく経験や人がもつノウハウやナレッジによって生み出される見えない価値」なのだ。

「新しい製品はときに輸出規制が起きることもある」と指摘する鎌田氏。技術力の高さとコミュニケーション、ものづくりに対する姿勢やノウハウをもとに国内でプロトタイプや製品のブラッシュアップをすることの価値と向き合うべきだと話す。もちろん、量産は海外で行うほうが効率的かもしれないが、その前段階の製品を磨く段階こそ国内で行うことに意味があるという。

当たり前かもしれないが、町工場の情報はウェブにも載っていないことが多い。いかに足で稼ぎながら地道なネットワークをつくっていくかだ。リバネスはこれまでに墨田区を中心に3000もの町工場を訪問し、小ロット多品種の製造にも対応可能な町工場のネットワークを構築している。これらをもとに、テクノロジーベンチャー支援に最適な工場をマネジメントすることこそ、リバネスの強みでもある。

「世界中のすべてのプロトタイプを日本でやるくらいの気概を持つべきだし、日本の町工場をもとに日本はもっと世界にアピールすることができる」と話す丸氏。鎌田氏も「ものづくりの新しいあり方ができる」と指摘する。

「アメリカで起きたITをただ輸入するのではなく、ものづくりの形からいかにイノベーションの種を掘り起こすか。そのために日本が持っている土壌や文化のプラットフォームづくりが必要になってくる」(丸氏)

「IT系はグローバルに勝つ難しい。言語の問題やシリコンバレーなどに代表されるようにお金の集まり具合が違う。最終的には人とお金の瞬発がソフトウェアに求められる。しかし、ものづくりは時間はかかるが日本の強さが生きる。自分たちがもつ基盤をベースに、そこにサービスやデザインなどを載せることで世界に通用する価値を生み出すことができる」(鎌田氏)

ものづくりに投資をするには圧倒的に時間がかかるのは間違いない。「長期的な視野と粘り強く取り組む姿勢が日本らしさでもある」と鎌田氏が指摘するように、日本の精神性や土壌の強みを日本人が再認識することが今後求められるものといえるだろう。

テクノロジーを軸に地球規模な技術を生み出す起業を「リアルテック」と名づけている丸氏。その根底にある大学の研究は、国の膨大な予算が投入されているものでもある。その大学の技術を活かし、世界を変えるテクノロジー、ゼロから新しい産業を生み出そうとする姿勢とマインドセットが、日本から世界に通用する新たなテクノロジーを作る文化となる、と両氏は話した。

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