RealEstateTechスタートアップのターミナル、不動産データをクレンジングする「data terminal」をローンチ

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Image Credit: Benjamin James Real Estate’s Blog

東京を拠点とする RealEstateTech(不動産+情報技術)のスタートアップであるターミナルは今日、不動産情報のコンテンツ・フィルタリング・ソリューション「data terminal」のサービスを開始した。サービスは主として、不動産情報ポータル事業者を対象に提供され、不動産会社が出稿した不動産情報の適正化、不足情報の補正、名寄せが実施される。

提供者と消費者間の「情報の不均衡」を是正するのは IT やスタートアップが得意とするテーマの一つであり、不動産業界にビジネスチャンスを見出しているのは iettyマンションノートなどのスタートアップの例にも見られる。不動産広告については出稿内容が細かく法律で制限されているものの、消費者に誤解を与えるような表現が後を絶たない。その背景には、消費者はインターネットで不動産情報を得る習慣が一般化する一方で、提供者である不動産事業者は、激しい競争を強いられている現実があるのだろう。

なかには、客寄せのために、空室でもない物件の情報を載せたりする不動産事業者もいます。(ターミナル 代表取締役 中道康徳氏)

ターミナルでは、マンション管理会社などが業務効率化のために利用するデータサービスプロバイダー8社(近日さらに2社が追加予定)と提携することで、市中の賃貸物件の空室や管理状況のアクチュアル・データを毎日集めて更新。機械学習を活用した名寄せにより、〝生きた〟不動産情報のデータベースを構築している。ターミナルの顧客となる不動産情報ポータル事業者からは、API 経由で data terminal のデータベースに照会することで、不動産情報のデータクレンジングや名寄せが行える仕組みだ。

不動産情報ポータルがサイトのバリューを高めるためには、ユーザからの資料請求の数が増えるだけでは出稿した不動産業者は納得してくれなくなっていて、歩留まり(成約率)を上げなければならない。消費者にいかに適正な情報を提供するか、というのが課題になっています。data terminal と連携することで、ポータルは人手をかけずに不適切な情報表示を排除し、表記の異なる同物件についてのダブった出稿なども排除できるわけです。(中道氏)

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興味深いことに、data terminal が適用できるのは不動産分野だけではない。空き家を利用し、Eコマースで注文した商品を、あたかも家主であるかのような顔をして受け取る詐欺が横行する中、大手Eコマース事業者は Falcon のような決済系の不正検知システムと併用して、このような詐欺を未然に防ぐための住所データベースを構築している。data terminal では、空き家や空室の情報が日単位で更新されるため、配送先住所を data terminal のデータベースにぶつけることにより、詐欺被害の防止にも役立てることができるのだ。

アメリカには ZillowMLS のような不動産情報専業事業者がいて、XML 形式で〝生きた〟不動産情報を取り出せることから、国内外の不動産投資家などにも利用されている。一方、日本の不動産情報システムの多くは、バッチ処理やファイル転送、CSV ファイル形式など旧態依然としていて、応用範囲の広いユースケースには耐えられない。

ターミナルはこのあたりにビジネスチャンスを見出しているようだ。ゆくゆくは、地域の相場から乖離した家賃を是正するべく、不動産事業者に家主と家賃交渉する際のエビデンスとして利用してもらい、空室の借主を募集してから成約に至るまでの期間を短縮するなど、不動産情報ポータルや消費者のみならず、不動産事業者も恩恵を得られるしくみを目指すのだという。

2016年、日本の RealEstateTech セクターは、にぎやかになりそうである。

<参考文献>

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