レズビアン出会い系スタートアップの「Lesdo(楽Do)」、中国の新たな同性愛検閲には楽観的

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LesDo(楽Do)サイト

中国当局が、テレビ番組で描写してよい表現についての新たな取り締まりを行ってから数週間になる。今回標的になっているのは、「下品、不道徳、不健全なコンテンツ」であり、「近親相姦、同性愛、性的倒錯、強姦、性的虐待、性的暴行などの性的にアブノーマルな関係や行動」を描写したドラマなどを含んでいる。

この規制により、中国の4人の高校生の同性愛ロマンスを描いた15話構成の人気オンラインドラマ「Addicted(中毒)」が配信禁止となった。

この件は、Cathy Yang(楊曉)氏のスタートアップを厳しい立場に追い込むことになるだろう。彼女は中国のレズビアン女性をターゲットにしたSNS、Lesdo(楽Do)の共同設立者である。Lesdoは単なるデートアプリではない。同社は自社でウェブドラマまで作成している。

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‘Miss You Always’(楽Do)が制作したミニムービーの一コマ.

Cathy氏によれは、最近の中国では性的マイノリティに対する許容度が高まっており、今月の当局の動きによってこの流れが帳消しになってしまうことはないと、「きわめて楽観的」であると述べている。

「当局がこのような通達を出すのは初めてではありません」。ウェブでの同性愛や交際の描写をブロックした事例を挙げながら彼女はいう。「当局は毎年このようなことをしています。そして毎年同じことになります。当局の通達をよく検証すると、この取り締まりの達成は不可能であることがわかります」。

自分たちを守る

Lesdoのチームははこれまでに2本のウェブ映画を作成しており、どちらもレズビアンの関係にある女性を題材にしている。どちらもまだオンラインで閲覧可能だ。

Cathy氏は、配信禁止されたシリーズ「Addicted」がブロックされたのは、若い男性同士が恋に落ちて関係を持つ描写をしたことが原因ではないと考えている。

「多くの人が、この件を、当局が同性愛を題材にした作品を禁止している表れだと考えていますが、実際には違います。ストーリーをよく吟味してみると、同性愛の男性についてだけのストーリーではありません。合わせて題材になっているのは、ご存知ですよね。主要キャラクターの一人の父親が共産党所属の政府職員で、多くの汚職が行われているようなのです。なので、彼とその家族は裕福なんです」。

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LesDo(楽Do)の共同創業者たち。Cathyは写真右下

その上でこのように彼女は力説する。

「ですので、この問題はあまりに政治色が強まってしまったのでしょう」。

そして、中国ではこのような問題がうまく収束することはまれである。

「Addicted」には、もう一つ問題を含む余談がある。ブランジェリーナ(ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー夫妻を表す造語)のように二人の主要キャラクターの名前をつなげると、「heroin(ヘロイン)」になってしまう。したがって、このカップルのニックネームがドラッグを表してしまう。このニックネームが、ドラマそのものとは別に大流行になってしまった。これが、このドラマが当局に叩かれた理由だと彼女はいう。二人の童顔の俳優がキスをするからではないと。

「私が言いたいのは、もし私たちの行動を守りたいのであれば、やり方はたくさんあるということです」。Cathy氏はそう付け加える。そして、同社はウェブドラマで女性を主役にしている。

Lesdo自らによる製作のミニ映画「Miss You Always」は35分の作品であり、中国トップ検索エンジンBaiduのスピンオフ動画サイトiQiyi(愛奇芸)で39万4,000回視聴されている。

ありのままの姿

Cathy氏はLesdoでマーケティングを担当しており、それに似合って話好きだが、同社のドラマは収益源としてもコミュニティの構築にとっても重要なものであるという。同アプリはまた、近隣ユーザとのチャットを主な機能にしている。

中国国内で、レズビアンやその他同性愛コミュニティ向けのターゲット広告などの従来のやり方では新規ユーザを呼び込むことはできないので、同社はコンテンツを作成することにしたという。

「人々はこのような作品を待ち望んでいました。なぜなら皆、自分自身のストーリーを見たいからです。ありのままの姿を描写してほしいのです」。

これは中国メディアがあまり得意ではないことである。

ユーザ数の増加に伴い、同社はコンテンツの制作または共同制作、そしていくつかの実験的な試みが、アプリ制作者が新規サインアップを獲得するその他の方法に比べて、はるかに安価な手段であることを理解している。Cathy氏は、新規ユーザの獲得にLesdoが費やしているのはたった10セントだという。対して、中国の業界平均は50セントだ。

自分たちのために

Lesdoは2012年に、当初はウェブサイト内でのソーシャルネットワークとしてローンチした。その後、中国の20代の若者多数がスマートフォン中毒であり、モバイルアプリのみに集中するのが得策であることを認識し、2013年にはアプリがリリースされた。

1年後、チームはGSR Ventures(金沙江創業投資)からのエンジェルファンドを獲得し、2015年にはIVP(Infinity Venture Partners)、SOSVentures、Linear(線性資本)から額面非公開のプレシリーズAラウンドで資金を調達した。SOSVenturesはChinaccelerator(中国加速)を運営するVCである。

「私たちが事業を開始した時は、インターネットビジネスで働く地元の同性愛女性のチームでした」とCathy氏は説明する。コアとなる設立者は3名おり、一人は元Google、もう一人は中国版TwitterであるWeibo(微博)を作った中国のウェブ大手Sina(新浪)出身である。その後、Cathy氏を含む4人の共同設立者が加わった。

「私が設立者の一人と知り合ったのは(中略)およそ5年前のことです。その頃私たちは地元のレズビアンコミュニティのメンバーでした」。

彼女によれば、北京に本拠を置く同社は「まるで中国のローカルな性的マイノリティコミュニティが発展してきた歴史の目撃者のようなもの」だという。

彼女たちはアメリカ発の男性ゲイ出会い系アプリであるJackdが2010年頃に中国で広まったことに感銘を受けた。そして、レズビアン向けにも似たようなアプリが欲しいと思ったのである。

「レズビアン向けのアプリがなかった一つの理由は、そのようなアプリの開発にはコミュニティだけでなく、技術やノウハウを理解するチームが必要だからだと思います」と彼女は語る。しかし、インターネット業界はほとんどが男性というのが実情だ。

「この業界は今でも『ボーイズクラブ』なんです」。

Bluedのローンチにより、中国にも国産のゲイ向けアプリが登場することになった。2014年に同社はシリーズBラウンドで3,000万米ドルを獲得している。最新の数字では、1,500万人の登録ユーザを誇るそうだ。LesdoにはThe L(別名 Rela)という直接の競合アプリがあり、The Lを運営するスタートアップはLesdo同様、ユーザを増やすためにコンテンツを制作している。

LesdoとThe Lはいずれも、中国にはレズビアン女性が3,500万人、全世界で2億人いると推定している。Cathy氏によると、Lesdoには150万人の登録ユーザがおり、22万5,000人がデイリーアクティブユーザだという。ほとんどすべてのユーザが30歳未満であり、56%が18~24歳、そして25%が25~29歳である。

本日(記事掲載日:3月14日)Lesdoのメンバーはあることに注目している。ホワイトデーだ。これは中国、韓国、台湾、日本で大変人気のあるイベントであり、バレンタインデーつまり女性がパートナーに贈り物をする日の裏返しのイベントである。同社はダブルリングを販売するブランドとタイアップしている。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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