若きキャピタリストの悩み

240105_101666379922895_4508047_o編集部注:本稿はベンチャーユナイテッドのチーフベンチャーキャピタリスト、 丸山聡氏が運営するブログ「No Guts, No Growth.」からの転載記事。国内スタートアップの資金調達環境について考察がなされていたので、同氏に許可を頂きこちらに掲載させてもらった。

image via. Flickr
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こんにちは。VENTURE UNITEDの丸山です。ちょっと前まで若者だと思ってましたが、この業界にいて周囲を見渡すとまだまだ若手だなって安心します。最近フリースタイルダンジョンがぐっときてます。

さて、とあるVCの若手の方とお話する機会があって、ざっくばらんに私がまだ駆け出しというか新卒だったときの話をしていたわけですが、VC業界においては、個人的には、若いキャピタリストには避けて通れない2つの悩みというかジレンマっていうのが存在すると思っているわけです。

その2つのジレンマっていうのは

  • 自身の経験不足から経営者とちゃんと話ができない
  • こうしたほうがいいのにっていうことがあっても、そうした話がとおらない

っていう2つかなと。

私も社会人としてのキャリアのスタートを、ベンチャー投資ではじめたので、それこそ当時はドットコムバブルの終焉の時代だったりしたので、○○ドットコムとつけばなんでもありみたいな時代でしたが、いや、ちょっと待て。いまも○○テックっていろいろいってるけど、そこに既視感があるんじゃないかっていう。。。

まー、それはいいとして、新卒でベンチャー投資をやると、2つの悩みのうち前者についてはとっても思ったわけです。

相手にするのは当時でいえば、30~40代、場合によっては50代の経営者とか役員とかだったので、それは、20代そこそこの若造がたいしたことなんていえないんですよ。間違いなく。

自分で経営をした経験はもちろん、一般の事業会社の経験もないわけですから。話せることがないっていう。。。

まー、それでも金融のスペシャリストっていう逃げ道はあるわけで、そういった観点でのスペシャリティを発揮すればいいわけですが、そこはもう猛烈に勉強しましたけど。まー、いまでも資本政策マニアだったり変なスキーム好きなのはそのときの名残だったりするわけですが。

それはともかく、とにかく本物の経営者と向き合えるほどの実力のなさを痛感するわけですが、当時はたぶんいまよりももっと厳しい時代だったので、「何しに来たの?」っていわれて10分で終了みたいなのを何回も繰り返した記憶が。。。汗

後者に関しては、だいたい2年目以降のちょっと落ち着いてきて、投資なんかも少しやったりすると出てくる悩みというかジレンマだったりするんですよね。

投資先の打ち合わせに出て、いろいろと意見をしたりするんですけど、経営者だって、参考にすることはあっても、全部が全部鵜呑みにするっていうことは絶対にないし、逆に全部が全部鵜呑みにしているんだったら本当に大丈夫?って思ったりもするわけですが。。。

ってなると、やっぱりなんかこう自分が言ったことがいいと思っちゃうんだけど、そうならないところのもどかしさみたいなものはぬぐいきれなくて、なんかこうもやもやしちゃんんですよね(ってすげー平仮名が続く文章って読みにくいですね。。)

こうした2つの悩みって実は解決策はなくって、経験を重ねて折り合いをつけていくっていうことしかないんですが、若いときっていうのは解決してすっきりしたいみたいな話になりがちで、そうなると解決策っていうのが

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ってなるわけですよ。いや、ちくしょう、って感じじゃないですが。

結局、事業会社の実務経験とか経営感覚を身に着けた方がいいっていうのが前者の悩みの解決策になるし、事業会社で業務推進したり、起業するっていうのが後者の悩みの解決策になりがちです。

ってことで、20代前半で前者の悩みを抱えていた私は事業会社(ベンチャー企業)へ転職したわけですが。

私はその後、紆余曲折を経ていろいろな経験を積みながらいまの会社に流れ着いて、でも当初は投資のおシゴトではなかったし、途中もなんかアプリの企画したりしてたけど、まー、でも、気づけばベンチャーキャピタルというお仕事をしていて、30代も後半になって、若いころに抱えていた2つの悩みを解決できたのかっていえば、それはもうなんかアレですね。

前者については、まー、いろいろと激しい経験をさせていただいたので、普通に社会人をおくっていたら出会わないようなこともたくさんしているので、引き出しは増えたっていうのと、やっぱり投資活動の経験が増えればこうした課題は解決するし、いろいろな事例などから話せることも増えるし、自分の得意分野が確立すればそれこそ、話せることや聞かれることが増えるので、悩みとして認識はしなくなるなーっていうことになっています。

後者については、投資をして担当として成長に貢献したいっていう思いは変わらないけど、投資家の立場っていうのもわかってきたので、投資検討時に適切な経営ができそうかどうかみたいなところや、経営をしていくうえでの現状の弱みや課題なんてところを経営陣と話し合っていけるかが大事で、私のこれまでの経験がそうした弱みや課題でいきるのであればいろいろするけど、そうした点も含めて投資検討をしっかりしていって信任することも大事だなって思います。

まー、なので後者については、なんとなく、視点が変わったというか、自分の力では何もできなくて、あくまでも主役は起業家であり、そこで働く方々であって、大事なのはサービスを使ってくれる顧客やユーザーだったりするんだなっていうことで一歩引けるようになったんだろうなーって思います。

もちろん、起業家とは、顧客、経営、投資っていう3つの視点でディスカッションをしていきますが、それでも、なんらか新しい気づきが生まれればそれでいいかなっていう感じになりました。

ベンチャーキャピタルっていまでこそ独立系とかも出てきて、一昔前に比べればなりやすくはなったし、事業会社でベンチャー投資担当になる機会なんてのも若干ですが可能性は出てきたわけですが、それでも圧倒的に数は少ないので(たぶん日本中でも300~500人くらいか、いたとしても1,000人はいない)、なかなかなりずらいわけです。

なので、各VCに所属する若手の方々にいっておきたいのは、たぶん上記の悩みって感じると思うけど、それを意識しなくなったら一人前なので、そこまで研鑽したほうがいいってことと、私は運というかめぐり合わせみたいな感じで再びベンチャー投資をしてますが、基本的には一度VCから出たらおいそれと戻れるチャンスはないっていうことを意識したほうがいいので、ストップ安易な転職って思います。

私がまだ若手に位置するくらいな業界ですが、投資っていう生態系の上では若い人たちの感性もとっても大事だし、そうした若い人たちがVC業界としてどう育っていける土壌を作っていけるのか、それは個社を超えて、業界全体としての課題でもあって、私自身は若手キャピタリストは業界の宝であると思っています。

ってことで、VCの若手(私よりも若い人たち)の方々(うちの人たちと自分のファンドを持ってる人たちは除く)で、悩みがあったらお茶したりランチするのでご連絡くださいませ。

では、また。

【丸山氏のブログはこちら】

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