NY発のアジア人特化型マッチングサービス「EastMeetEast」が資金調達、CEOの時岡まりこさんにインタビュー

SHARE:

広大なアメリカのなかでも最大の都市、ニューヨーク。IT系スタートアップのメッカでもあり、メディアやファッション領域のサービスが豊富。もう一つニューヨークに多いのが、デートのマッチングサービスです。2016年2月にBadooに買収された、女性が主導権を握る「Lulu」、友達の友達を紹介するコンセプトの「Coffee Meets Bagel」など、オンラインデーティングが盛んです。

より飛躍的に成長するための2度目の資金調達

EastMeetEast

同じくそんなニューヨークで誕生したのが、アジア人に特化したマッチングサービス「EastMeetEast」です。2013年12月にサービスを開始したEastMeetEastが、2014年8月以降2度目となる資金調達を実施しました。金額は非公開。今回出資したのは、メルカリの山田さん、East Ventures、500 Startups、iSGS、そして前回から継続のDeNAです。

2015年の登録ユーザー数は、前年比で7倍に成長。売り上げも、毎月30〜40%の伸びを見せています。EastMeetEastがMatch.comなどの大手と直接競合せずに成長できるのは、利用対象をアジア人に絞っているから。一般的なサービスではインド人や中東も「アジア系」に含まれるのに対して、EastMeetEastでは中国・韓国・フィリピン・ベトナムなど東アジアと東南アジア人に特化しています。

主なユーザー層は、25歳〜35歳の男女。一番多いのは25歳〜30歳で、結婚相手を探すほどシリアスではないものの、「お付き合いをしてみて、いい人なら結婚したい」という感覚で参加していると言います。アジア人にとって、同じバックグラウンドや文化を共有できる相手と出会える場所として認知が広まっており、一度相手を見つけてサービスを離れても、平均3ヶ月もすると再度戻ってくる傾向があります。

アジア人ならではのお相手探し

サービスのリリース前からユーザーへのフォーカスインタビューを重ねた結果、アジア人のユーザーが出会いに求める要素が、白人のそれとは異なることがわかっていました。

「Tinder」など、主に写真が判断基準となるアプリが人気を博していることからもわかるように、白人には、相手の目の色や体の鍛えられ方など外見的なことを重視する傾向が見られます。一方、アジア人は日本人に近い感覚で、出身校や話す言語、職業など、バックグラウンドやカルチャー全体を見る傾向があるとのこと。

EastMeetEastで、ユーザーは検索することで相手を探す仕組み。検索が便利である一方で、結果が多すぎて選べなかったり、最初から絞り込みすぎてしまっていい人を見逃してしまうといった課題も。ここで一役買っているのが、運営側がユーザーに対して配信するメールです。

「ユーザーには、お見合いおばさんをイメージしたメールを週に一回配信しています。その中で、相性の良い方を1人だけ提案するんです。このメールを送った日は、ユーザー間のメッセージの送信数が通常より4割ほど上がります。」(ファウンダーでCEOの時岡まりこさん)

メールでは、相手の写真(ルックス)だけではなく、クオリティーを強調。「今週のお相手」などと無機質な件名で送るのではなく、相手の年齢や出身校、職業などにも触れ、相性の良さをアピールすることで高い開封率を誇りっています。

功を奏した動画マーケティング

(FungBrothers: Dating Asians in the City!?)

もともとPCサイトとして始まったEastMeetEastですが、2014年7月にはiOSアプリをリリース。高まるモバイルニーズに応えるため、今後はいっそうモバイルファーストに舵を切っていきます。

今回の資金調達で評価されたのは、積極的なマーケティングだと話す同社ファウンダーでCEOの時岡まりこさん。海外のスタートアップには、外注するのではなく、PRやマーケティングを内製してノウハウを蓄積するのが一般的。実際、この一年間でさまざまな取り組みに挑戦しました。

最初に広告を出した当時のユーザー一人当たりの獲得コストは、14ドルでした。今ではそれが85%も低下。さまざまな施策の中で最も効果的だったのが、動画マーケティングです。100万人ほども購読者がいる著名なYouTuberと連携することで、EastMeetEast オリジナルの数分間の動画を製作しています。

「例えば、YouTuberがストリートインタビュー行って、「このアプリをどう思う?」「異性に一番求めることは?」など面白おかしいQ&A風の動画をつくっています。動画を見てから登録してくれるユーザーは写真の投稿率が高く、動画がサービス利用のチュートリアルとしても機能していて、手応えを感じています。」

自ら感じたニーズをきっかけに共同創業

EastMeetEast ファウンダーでCEOの時岡まりこさん
EastMeetEast ファウンダーでCEOの時岡まりこさん

時岡さんは、日本オラクルで働いた後、オクスフォード大学院のMBAを取得するためにイギリスへ渡りました。会社員として働いていた頃から、自分の仕事の社会へのインパクトがより直接的に感じられる起業に関心が。その中でも、社会貢献したいという思いが強く、大学院ではソーシャルアントレプレナーシップを専攻しました。

MBAを卒業した後は、COOとして、世界の教育を変えようと立ち上げられたロンドン拠点の「Quipper」に参画。Quipperは、2015年7月に約48億円でリクルートに買収されています。その後、時岡さんが次なるチャレンジとして選んだのが EastMeetEastでした。

というのも、ロンドンに在住している間、結婚を見据えたパートナー探しのために大手のマッチングサービスを使ってみた時岡さん。結婚するなら日本人男性が良いと考えていましたが、既存のサービスではアジア人の定義が幅広く、スリランカ人やインド人とマッチングされてしまうことも一度は二度ではありませんでした。

「ユダヤ系やに特化した「JDate」などはあるのに、アジア人に特化したサービスがないことを実感しました。EastMeetEastは、私自身が体験した、相手がなかなか見つからないというペインポイントから誕生した部分が大きかったですね。晩婚化が社会的な課題になっていますが、皆さんの人生のパートナー探しのお手伝いをしたいと思っています。」

やるなら最初からグローバル

初めての起業の舞台にイギリスを選び、続く舞台に選んだのはニューヨーク。Quipperの時点ですでに海外に出ていたため、次のベンチャーを選ぶ際もグローバルマーケットで挑戦することは自然な選択肢だったと振り返ります。

日本でも大変なのに、海の向こうでの起業はもっと困難であることが想像されますが、その分、利点も多いと話す時岡さん。すでに経験や実績がある彼女に対して、「海外で頑張っている」ことに共感し、出資を決意してくれる投資家がいたり、業界の仲間や経営者にも応援してもらえています。

また、アメリカに住む日本人ネットワークも心強い味方です。EastMeetEastが新たに採用したのは、日本人エンジニア。サンフランシスコの有名企業から、同社で働くためにニューヨークに引っ越してきてくれました。サービスが掲げるビジョンへの共感はもちろん、創業チームが日本人であることも決め手になりました。

「グローバルでやるなら、日本でまず立ち上げて海外に行く方法より、最初から海外で挑戦しようと思いました。グローバルなデート市場の半分をアメリカが占めていますし、マッチングサービスで出会って結婚することが恥ずかしくないというカルチャーが出来上がっていると感じます。」

新たな資金調達を経て、今後 EastMeetEastがどんな成長を見せてくれるのか。時岡さんとチームの今後の挑戦を追い続けたいと思います。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する