マイクロソフトの HoloLens が 3000ドルもする理由、それがもたらしうるスマホへの良い影響とは?

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Above: This is just like firing an intercontinental ballistic missile. Image Credit: Microsoft
上:これはまさに国境を超えて弾道ミサイルを撃っているようなものなのだ。
Image Credit: Microsoft

Microsoftの拡張現実(AR)開発キットは3,000米ドルもするが、その理由は、通常は宇宙船や誘導ミサイル、ドローンに使われるような部品を使用しているためである。

HoloLensは現実世界にデジタル映像を投影するヘッドマウントディスプレイで、現在予約注文を受け付けている。3月30日から開発者向けに出荷が開始される予定だ。もちろん、購入には何千ドルかを銀行口座から引き出す必要があるが、今回明らかになったスペック(仕様)から、その価格の理由が明らかになった。

HoloLensには、Microsoft独自の「ホログラフィック・プロセッシング・ユニット(HPU)」、4つの周辺認識カメラ、そして慣性計測ユニット(IMU)が装備されている。このようなかなり本格的なハードウェアにより、このウェアラブルコンピュータは、外部のセンサーや有線接続のコンピュータを用いることなく、使用者の3次元空間内の現在地情報を追跡することができる。

最後にあげたIMUは、使用者の現実世界における位置を正確に把握する上で鍵となるパーツである。この技術は、人間が雁や蟻といった動物が持つような現在地把握本能を模倣して開発したものだ。この技術を使うことで、たとえば今では仮想の窓をオフィスのある場所に置き、そこにきちんと配置され続けることを確実にすることができる。

Microsoftは、(使用者の)位置追跡の問題をハードウェアとソフトウェアの両面で解決しようとしている。現在のところHoloLensは3,000米ドルの高価な代物になっているが、同社は、ARデバイスが消費者の手に届くまでには数年かかるとしている。ゴールドマンサックスなどの投資銀行は、VRとARを合わせた市場の規模は2020年には1,100億米ドルに上ると予想しており、つまりMicrosoftには、その問題を解決するための時間と、価格を下げるためのモチベーションがある。ゆくゆくはHoloLensで、Xboxの人気ゲームキャラクターConkerが目の前のテーブルの上で走り回ることが可能になるだろう。

位置追跡はARとVRの最大の難所のひとつである。GamesBeatは先日、チップやセンサーを設計するARMのデベロッパーリレーションマネージャー、Nizar Romdan氏を取材し、何がそこまで難しいのかを探った。

彼の説明によれば、Galaxy S7のようなスマートフォンは大きくて高価なVRやARのためだけに使われるようなセンサーは搭載しない。仮にそれを実現するとしても、取得される(膨大な)追加のデータにより、3~10W しか供給できないバッテリにとって大きな負担になるという。

しかし、MicrosoftはHoloLensをまさにARのために作っており、しかも現時点では開発者のみに販売している。つまり、位置追跡の問題解決のためにハードウェアを追加することができるということだ。

ここではIMUがそれに相当し、「自律航法」または「パスインテグレーション」と呼ばれる現在地追跡手法を用いている。これは、直前の正しい位置情報と、慣性力および加速度を組み合わせることで、現在の位置を推定する位置追跡手法のひとつである。

IMUがあれば、基本的にはデバイスや乗り物の電源を入れたあとはいつでも自分の位置を知ることができる。それはあたかも動物が自分の巣の位置を把握していて、動いているときは常に帰巣の経路を組み立てているのと似ている。

この技術は元来、海上を航行する船舶のために開発されており、多くの場合はGPSとの組み合わせで動作する。今日ではIMUは航空機と宇宙船すべてにおける中心技術となっている。IMU の力によって、無人のドローンに搭載された人工知能(AI)は自分が地球上のどこにいるのかを知ることができる。

IMUはまた、ミサイルが大陸から大陸へと、コースを外れることなく飛行することを可能にするチップのひとつである。

HoloLensにおいて、IMUはGPSとの組み合わせで動作することはまずないであろう(可能ではあるが)。その代わりMicrosoftは、「空間認識カメラ」を装備している。これにより、Xbox One向けの次世代版Kinectカメラのように、周辺状況を即座に把握するものと思われる。HoloLensのソフトウェアはこのデータとIMUを組み合わせることにより、位置情報を正確に把握することが可能になる。

こうした状況がもたらす最大の利点は、Microsoft によるこうしたIMUデバイスへの需要が、IMUの価格低下とサイズ縮小を引き起こす可能性があることだ。遠くない将来に、IMUはGalaxy S8やS9に搭載され、今よりはるかに安価なGear VRヘッドマウントディスプレイとの組み合わせでモバイルVRが実現される可能性があるのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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