自転車ユーザの安全を願うデバイスを作るのは、ロンドンで一念発起したイタリア人起業家(ビデオ)

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春の交通安全運動は今日で終わりを迎えるが、今年も随所で警察官に呼び止められている自転車を見かけた。日本では、自転車のマナーの悪さが目立つことは少なくないが、道路の狭さゆえ、一部地域を除いて専用通行帯のようなものが設けられていないことも、その背景にあるのかもしれない。

ヨーロッパでは、都市部に行けば必ずといってよいほど、好きなサイクルポートで貸出・返却ができるレンタサイクルが設置されており、歴史的な背景だけでなく、近年の健康ブームやエコロジーブームも手伝って自転車が日常生活に浸透していることを象徴している。そのようなこともあってか、ヨーロッパには自転車の安全運転を助ける技術を開発するスタートアップが多い。2015 年の HackOsaka にも、夜間の安全運転を助ける Blaze がイギリスから来日していた。そして先日、やはりイギリスで、興味深いスタートアップに出会ったので紹介しておきたい。

ロンドンに拠点を置くスタートアップ Cycl は、約1年半ほど前に自転車用の方向指示器 WingLights のコンセプトを Kickstarter 上で紹介。2015年7月には完成版の出荷を開始し、同年9月には自転車にマグネット装着ができる、より簡易的なバージョンの出荷を始めた。いずれのタイプでも動作にはコイン型リチウム電池 CR-2032 が2つ必要で、通常の使い方であれば5〜6ヶ月は電池がもつとのこと。

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WingLights Fixed
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WingLights Mag

共同創業者で CEO の Luca Amaduzzi 氏によれば、WingLights はイギリスを皮切りに、現在、オーストラリア、カナダ、アメリカ、そして日本などで販売しているそうだ。既にビジネスは黒字化しているため資金調達は行っておらず、専ら販路の拡大と廉価版の商品開発に注力している。

Amaduzzi 氏の名前や、インタビューでの英語の訛りからもわかるとおり、彼は生粋のイタリア人である。実家はホテルを経営するファミリーで、スタートアップをする前は、そのホテル事業のマーケティングを担当していたということだが、なぜイギリスにやってきたのかを尋ねてみた。

スタートアップをやりたくて、City University London のビジネススクールに進み、イノベーションを学んだんだ。イタリアは税金が高く、スタートアップをするのは不可能だ。

統計を取ったわけではないが、実際、ロンドンにはイギリス人のみならず、世界中から人々がやってきてスタートアップを立ち上げているケースは多い。多様性に富んだ街だからこそ生まれるアイデアというのもあるだろう。このインタビューを撮ったのは、私が滞在していたロンドン・ハイドパーク脇のホテルだったが、インタビューが終わるや否や、彼はホテルに友人の起業家を呼び出し、ロンドンの街の利便性を向上させる別のビジネスの構想を練っていた。

Cycl は現在、流通パートナーやビジネスパートナーを募集中だ。日本の自転車性能の良さと市場の可能性には Cycl のチームも畏敬と魅力を感じており、彼らとの事業に興味のある読者は、ぜひ一度連絡をとってみてほしい

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