
ここしばらくVR・AR(仮想・拡張現実)関連の話題を追いかけている。この技術トレンドには個人的にも高揚感を感じていて、具体的な情報量も増えている。
例えば私たちの提携しているVentureBeatではほぼ毎日のようにVR・AR関連の話題を提供しているし、Oculus RiftやHTC VIVEなどの「本格的」筐体の出荷に合わせて具体的なレビューも増えていて楽しい。
その他にも専門情報サイトとなる「Upload VR」には以前お伝えした通り、伝説的なブロガーであり、強烈なインフルエンサーでもあるロバート・スコーブル氏が参加するなど、アーリーアダプターより「敏感な」人種が集いつつあるのだ。
では、私たちはこのトレンドとどう向き合うべきなのだろうか?
私もまだこの分野を追いかけ始めて日が浅く、残念ながらまだSamsung Gear VR(以下、Gear)やGoogle Cardboard(以下、Cardboard)で利用できるスマホコンテンツぐらいしか試せていない。(先日ほんの少しだけOculus開発版をいじれたが)
そんな中、とある場所で國光宏尚氏と少し意見交換する時間を持たせてもらった。これまた以前にもお伝えしている通り、彼は今、シリコンバレーで活躍するVRのエキスパートと共にVenture Reality Fund(略してVR)というファンドを運営したり、国内でもインキュベーション活動をしていることもあって情報量は豊富だ。
※ちなみに先日、取材で同席したフジテレビの番組はここでアーカイブが見れる。
そんなこんなで彼の知見も含め、私は今、このような視点でこのトレンドを眺めている。
- ヘッドセットを理解する
- MRという未来像、Magic Leapの秘密を考える
- ビジネスはどこから立ち上がるか
- 攻めるにはどのようなチーム・技術が必要なのか
- 国内外で注目したいプレーヤーリスト
これらについてひとつずつ書いてみたい。
ヘッドセットという障壁を理解する
VR・ARについて会話するとき、まず出てくるのがこのヘッドマウントディスプレイ(HMD)についてだ。これには大きく分けて2つ種類があり、1つは前述したGear VRやCardboardのようなスマートフォンをデバイスとするタイプ、もう1つにOculusやVIVE、PlayStation VRのような高性能PCやコンソールを必要とするタイプがある。
多くの人にとっては、これがある一定の用途、例えばビデオ・ゲームのようなものには広がるが、極めて限定的になるのではと考える理由の1つになっている。
これは私もそう思っている。
例えばこの記事のレビューはくだらないようで、実際に使うと本当に発生するタイプのものだ。さらに言えば、長時間つけ続けると酔った感覚になるし、Riftなどのタイプではケーブルや各種センサーが必要になる場合もある。そうなると身動きもままならない。
ポイントは2つある。
- 没入感を損なわずに外風景が見える「オープンタイプ」が実現するか、という点
- モバイル、つまり移動しながら利用できるようになるか、という点
それならGoogle Glassがあったじゃないかという人もいるかもしれないが、既にGoogleはGlassを諦めている。見たことある人なら理解できると思うが、早い話、体験性が悪すぎるのだ。わざわざ「Okay Google」などと言わずともちゃっとスマホを取り出して検索した方が早いし何よりよく見える。
あくまでも密閉式のHMDで得られる没入体験とオープンな視野を両立しなければ次に進めない。
そういう端末があったとして、そこにはバッテリー、処理デバイスをどうするか、重さ、ワイヤレス・ストリーミングする際のデータ量の課題が出てくる。因みにイメージ的にはMicrosoftが発表しているHoloLensが現時点での最適解に近いのではなかろうかと言われている(但しこれも視野角が狭いという問題があるそうだ)。
この未来像についてより理解を深めるために考えたいのが、Magic Leapというお化けスタートアップの話題だ。
MRという未来像、Magic Leapの秘密を考える
Magic Leapについてはこれまでも伝えている通り、創業2011年のスタートアップながら既に45億ドルの評価を付け、約14億ドル(110円換算で約1540億円)を調達しており、その投資家たちもアンドリーセンホロウィッツやQualcomm Venturesの他にKPCB、Obvious Venturesnなど、これ以上ないメンツを揃えている。これがベイパーウェアと言われない所以だ。
そしてその全貌は秘密に包まれている。
彼らが証拠として出しているのはこの特許提出資料と「実現に成功した」と言われる動画、たったこれだけだ。國光氏をはじめ、何人か私はこのMagic Leapについての予想を聞いたのだが、凡そこのようなものだった。
- 特許の通りの眼鏡タイプの外観
- 透過ではなくアウトサイドカメラを使い、現実と仮想の情報を組み合わせる
- ミラーボールタイプの発光体で空間から直接網膜に仮想情報を表示させる
- 処理端末はスマートフォンレベルで別持ちのワイヤレス接続
- 常に情報はクラウドからストリーミングされる
現実世界を拡張させるのであればHoloLensと同じものでは?と思われた方は正しい。このARのイメージに限りなく近い。しかしMRにはそこにVRで得られる「没入感」が必要なのだ。
これは私も実際にHoloLensを装着したことがないのでなんとも言えないところなのだが、各種レビューをみるとやはりその視野角が狭いという指摘が多く、その没入感を得るまでには至っていないのかもしれない。
一方でMagic Leapは表現している動画にその狭さは感じさせない。もちろん、この動画が単なるサンプルであれば話は別だが、もしこのぐらいの没入感をHoloLensのような筐体で実現させていたとしたら、である。逆に言えば、それぐらいのインパクトがあったからこの巨額が集まったのではなかろうかと考えるのも自然だ。(もちろんMicrosoftのHoloLensレベルでも十分すごいが)
これを理解するにあたってアウトサイドカメラのアイデアは私が個人的に理解しやすいものだった。例えばこのアプリはアウトサイドカメラを使って現実世界にフィルターをかける。(このアプリ自体はなんのことない、ただのフィルタカメラなのだが)このようにHoloLensやGoogle Glassのように現実世界を透過させるのではなく、実際には「見せない」という方法もあるのだ。
私の稚拙なアイデアはさておき、この没入感と現実世界の融合が本当に実現すればどういうことができるだろうか?
そう、あのモニター類が不要になるのだ。全ては現実世界と重ね合わせて操作すればいい。
目の前にいる人の情報を知りたいなら顔を見ればそこに情報が浮かび上がる。空間に広がるメニューから路線案内図を取り出せば行き先までの時間と運賃が表示される。目の前のショーケースに欲しい時計があれば価格が提示されオンラインで購入もできる。
國光氏はこれをPCやスマートフォンに変わる、第3のインターフェース、つまり「サードウェーブ」の到来と表現していたが、実現すれば決して大げさな物言いではないだろう。
これまでPCやスマートフォンで提供されてきたオンライン・サービスはそのほとんどが空間インターフェースに移行するかもしれない。実際、VR世界のデスクトップについても提供が始まっている。オフィスワークでモニターがなくなる時代もそう遠くないのだ。
どうだろうか、少しは未来像が思い浮かんだだろうか。
さて、少し長くなったので、ビジネスの立ち上がりについては後半の記事に委ねることにしたい。
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