本稿は、イスラエル・テルアビブの Samurai House を拠点に事業展開している、Aniwo 共同創業者兼 COO 植野力氏による寄稿である。Aniwo は2014年8月の創業、2015年1月にサムライインキュベートからシードラウンドで10万ドルを資金調達していることを明らかにしている。
Aniwo は現在、イスラエルのスタートアップと投資家のマッチングプラットフォーム「MillionTimes」を運営している。
イスラエルにおける、2016年第一四半期の資金調達額
イスラエルのスタートアップの勢いが止まらない。
2016年に入り、米国ではスタートアップ投資が縮小傾向にあることがささやかれているが、イスラエルでは2016年の第一四半期で173社、合計10.9億ドル(1社あたり平均は630万ドル)と、既に日本の年間の資金調達額の1,000億円を超える勢いで推移、第一四半期としては過去5年で最高額をマークしている。

イスラエルに注目する、日本の投資家と大企業の動き
高い発想力と技術力、行動力で、Warren Buffett 氏や Sequoia Capital など世界中の投資家、そして Google や Apple などのグローバルカンパニーを魅了する「スタートアップ大国」イスラエル。
2014年の安倍首相のイスラエル訪問を契機に日本からもYJキャピタル、ドコモ・ベンチャーズといった投資家による投資、企業の間でもソニーによる Altair Semiconductor の買収やソフトバンクによる Cybereason への投資など、イスラエルの技術力に注目が集まり、両国間での連携が活発化している。
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ちなみに毎月異なるテーマでイスラエルのスタートアップエコシステム、起業家のピッチ動画を東京でご覧いただける PitchTokyo にもぜひ足を運んでいただきたい。

「なぜイスラエルなのか?」という問いに対しては、軍事技術の転用支援や、政府の支援、暗号技術やコンピューターサイエンス、ライフサイエンス領域におけるハイレベルな研究機関の存在などが挙げられているが、今回はイスラエル人の国民性「フツパー」について紹介しようと思う。
スタートアップ大国の起源? イスラエル人の国民性「フツパー」とは…
「フツパー(חוצפה)」。日本にいると聞きなれない言葉である。実際に私も、イスラエルにわたってからイスラエル人との議論の中で初めて聞いた言葉で、正確にはフツパーのフは「フ」ではなく、喉と舌を擦り合わせた、痰を吐き出すような「フ」である。それに相応する日本語は存在しないといわれているが、ニュアンスとしては「人がためらうようなことを平気でやってしまう」ような失礼さと勇敢さを掛け合わせたような意味の言葉である。
それは、自分が行動を起こさなければ命すら危うかったイスラエル人、もといユダヤ人の迫害の歴史の中で育まれてきたとも、聖書でさえ疑うような宗教教育の中で育まれてきたとも言われているが、兵役中やスタートアップシーンにおいて大いに発揮されている。
聞くから断られる

最近、ビッグデータ処理と画像処理技術を用いて、読者が(オンラインのファッションマガジンなどの)ウェブ上に掲載された写真をクリックするだけで、該当する洋服を購入可能にし、メディア企業の収益化をサポートする Trendi Guru というスタートアップにインタビューする機会があった。
Trendi Guru 代表の Kyle Giddens 氏に創業の背景を尋ねると、彼のガールフレンドが、ウェブ上で著名人が着ている服を購入しようと調べたものの、どう調べてもヒットせず、Giddens 氏自身もあの手この手を使って調べたものの該当する服が見つからなかったことから、そこに商機を見出し、創業を決意したという。
彼と話をしていたときに、「日本人はすぐに許可をとろうとするだろ? 聞くから断られるんだ、先にやってしまえば問題ないことはたくさんあると思うんだ」と言われ、イスラエル人に見習わなければならない点もあると感じた。
普通あきらめてしまいそうな課題に対して、独自の技術を生み出し、その技術を用いた解決方法をすぐに実行に移してしまうイスラエル人。今後も「失礼で勇敢な」イスラエル人の技術、発想が生み出すスタートアップから目が離せない。

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